渡船を乗りこなせ!

釣りのステッカーとTシャツの音海屋
渡船に挑戦!

磯釣りといえば歩いて通える地磯も思い浮かびますが、まずは渡船を利用して釣り場へ渡るのが一般的です。少し費用はかかりますが、波止釣りでは得られない開放感や魚影の濃さが魅力ですね。しかし、いたれりつくせりのサービス業ではない上に、ケースバイケースが多いため、始めての人には戸惑ったり、うまく利用しきれないということも多々あるかと思います。そこら辺のツボを解説してみましょう。

渡船とは?

その名の通り…

磯へ渡してくれる船のことです。関東では磯のことを瀬といいますので、渡船で磯へ渡ることを瀬渡しともいいます。大体は漁師さんがやっています。磯釣りの盛んな釣り場では専業の渡船屋さんが多いのですが、地方によって漁業と兼業のところや、沖釣りや筏釣りと兼業の所、あるいは民宿(船宿)や餌屋さんと兼業の所もあり、色々です。

波止の渡船とは違うの?

沖のポイントに渡るという点では同じなのですが、都市部の波止渡しの渡船がバスの運行のようにサービス化されているのと違って、地方の磯渡しは現役の漁師さんがやっているような所も多く、地方によってルールの違いもあり、決してわかりやすいシステムではありません。馴れない方では戸惑うことも多いと思います。ここらはおいおいこの章で説明していきます。

どんな船なのだろう?

都会の波止で使われている渡船は、採算性からある程度人数が乗り込めるようになっていますが、磯の渡船にはそんなにたくさん乗り込める船はありません。外洋へ乗り出す渡船を除いたら、大体が25人定員ぐらいまでが多いと思います。しかし沖のうねりに負けずに、船を磯付けしなくてはいけませんので、たいていの渡船はとても高出力のエンジンを装備しています。始めての人ならモーターボート並の速さにびっくりするでしょう。

どんな所に付けるの?

磯は前章で説明したように、沖磯と地磯があります。地磯といってもかならずしも道路から歩いて行ける場所ばかりとは限りません。潮通しのよい沖磯に負けない地磯もたくさんありますので、渡船はこういう所にも人を降ろしていきます。波止と違って降ろす場所が一ヶ所と限っていませんので、港を出たら順番に人を降ろしていくのです。回収するとき(磯上がり)は降ろした逆の順番になります。一番遅く下りた人が一番早く上がることが殆どです。

うまく渡れるかな?危険そう…

磯は遠目で見るとごつごつ険しくて、とても危険な感じがします。ですが上がってしまうと案外足がかりがよくて、波止より安全な場所も多いのです。また渡船は、釣り人が安全に渡れる足場のよい所(船着き)を選んで船を付けますから、見た目よりは安全だと思っていてください。しかし中にはベテラン向けという磯もありますから、そこらは判断しましょう。

営業期間は?

磯釣りにはシーズンがあります。瀬戸内や太平洋岸は一年中やれるところが多いようですが、禁漁期間がある釣り場では、その間は休業になります。大部分の魚がのっこむ春先が多いですね。釣り場によって違いますので、事前に知っておく必要があります。日本海側は冬場は季節風が吹き荒れるので春までオフです。釣り場によっては、風裏になる所では冬場でもやれるところがあります。これも確認が必要です。いぜれにせよ台風など海が荒れる日は休業です。夏場は暑くて釣りにならないので、半夜釣りといって夕方から9~12時くらいまで(色々です)釣らせる釣り場もあります。

営業時間は?

大抵の渡船屋さんでは、日の出が一番船(一番初めに出る船)になります。ですから夏場は4時半ぐらい、冬場は6時ぐらいになります。季節によって変わりますが、瀬戸内や若狭では未明(夜が明けきらないうち)から出船するところもあります。磯上がり(納竿)も場所によって異なります。大体は昼頃が多いのですが、2時くらいとか4時とか色々です。延長すると延長料金を取られる釣り場もあります。これも確認が必要です。

予約について

予約する必要があるの?

波止の渡船はバスのように運航日・運行時間が決まっています。ですから釣りたい時に出かければ問題はないのですが、磯の渡船の場合は事情が異なります。人気のある釣り場で常時釣り人が押しかけているような釣り場なら、飛び込みでも乗れる場合があるのですが…

  • 小さい釣り場であまり人が通わない磯ならば、予約を入れておかないと船が出ないときがある(船着きで待っていてくれません)。
  • 人気のある釣り場でも、夏場の平日は客が少ないので、予約が入っていないとやはり船が出ないことがある。予約を入れておくと安心。
  • 7,8月は海水浴客優先で釣りをやらせない磯もあるので、確認する。
  • 一番船に乗り遅れるとだめという渡船屋もある~それを確認しておく。
  • 大体が零細業なので、親父が入院したなどと予想外の休業がある。
  • 天気予報は確実ではない。予約時に確認しておくことで無駄足を防げる。
  • 渡船屋によっては餌を予約しておくこともできる。

どうやって予約すればいいの?

磯釣りをしたい人ならば、雑誌やネットで情報を集めているでしょう。行きたい釣り場の餌屋さんや、直接渡船屋さんに電話を入れてみましょう。餌屋さんは渡船屋さんと提携している場合が多いので、紹介してくれるはずです。電話は1~2日前に入れておけばいいでしょう。始めての釣り場の場合、注意点としては…

  • 行きたい日に出船するかどうかまず確かめる。悪天候が予想される場合は特に!
    「明日は営業していますか~風は大丈夫ですか~」など…
  • 地図がないときは場所を確実に確認する。渡船屋でなく船着きに直接行く場合もあるので注意!駐車場も必ず確認しておく
    「どこに行けばいいですか~車はどこに停めたらいいですか~」
  • 出船時間を確認してから、乗り遅れた場合も確認する。
    「一番船は何時ですか~遅れた場合次は出ますか~」など…
  • 納竿時間・延長時間を確認する。
    「納竿は何時ですか~延長はできますか~」など…
  • 弁当を持っていかない場合は弁当の予約を確認する。
    「お弁当ありますか~お茶は~」など…
  • 餌を予約したいときは餌の予約を確認する。
    「オキアミありますか~あったら2枚解凍して置いて下さい~」など…
  • 禁止事項が予測されるときはルールを確認する
    「集魚材は使えますか」「カゴは禁止ですか」など…

現地での注意

渡船屋さんによっては待合所や仮眠所を設けているところもあります。長距離ドライブで疲れているはずですから、早く現地についたら休息して体力を温存しておきましょう。さて、どんな釣りにもルールやマナーがあります。渡船利用の場合に気をつけたいことは…

  • 駐車するときは気をつけて下さい。渡船屋さん専用の駐車場があればよいのですが、漁協の共同駐車場を利用する場合は、作業の邪魔にならない所へ停めること。
  • 人家が周りにあるところではエンジンを吹かしたり、騒がないこと。
  • 車上荒らしに気をつけること。貴重品を置かないことはもちろん、持ち物を目につくような所に置かないことが肝心です。
  • すぐに乗り込めるよう、船着きに荷物はまとめておくこと。乗船の合図はないので、皆が乗り込み始めたら、もたもたせずに後に続くこと。
  • 船頭さんと目があったら「初めてなのでよろしく~」と一声掛けておきましょう。
  • ライフジャケットは必携です。着用しない場合、乗船を断られることもあります。
  • 金銭(渡し賃)の授受は渡船屋により異なりますので、確認して置いて下さい。大抵は乗船後が多いようですが、前払いの所もあります。船頭さんに直接渡すケースが多いので、おつりの要らないようにしておきましょう。

渡礁の時の注意

船に乗り込んだら、荷物は皆が歩くのに支障がない所にまとめるようにします。早く降りる予定ならホースヘッド(船首)に近いところ、遅い場合なら逆に置きましょう。わからない場合は適当に置きます。渡船はかなりの速度で走りますから、波飛沫がかかったり風で凍えることもあります。トモ(船尾)におれば、操縦室が風よけになりますので大分違います。揺れも少ないので、のんびり行きたいのなら、早めに乗船しトモに陣取ることです。

降りる磯を選択できるかどうかは、その釣り場や渡船屋さんによって異なります。全般的に紀州では早い者勝ちになります。ですからホースヘッドに陣取り、荷物をすぐに下ろせるようにしておくことが要領になりますが、初心者ではまず気押されてしまうでしょう。若狭方面ではのんびりしています。○○を釣りたいと声をかけておけば、適当な所で降ろしてもらえるはずです。瀬戸内では「○○さん、おりよか~」などと声をかけてくれるところもあります。いずれにせよ、こればかりは行ってみないことにはわかりません。

紀州方面で気をつけておきたことは、分からないからといって、いつまでもぐずぐずしておれば、どの磯も満員になって上がれる磯がなくなってしまうことです、これは複数の渡船が入っているような釣り場ではよくあります。総体的に紀州方面では、A級磯から人を降ろしていく傾向がありますので、できるだけ早く降りるようにしましょう。遠慮していては悲惨なことになりますぞ。地方によってはこういうさもしいことにならないように、クジで磯割りをして無用な競争を排除している釣り場もあります。

さていよいよ磯に上がります。気をつけたい点としては…

  • 危険なので絶対にまたいで渡らないこと!またぐようなアクションでは、磯と船首が離れた場合落水します。さっと飛び移るように素早く渡ること。
  • リュックは体のバランスを崩しやすいので、一人の場合はともかく、二人以上の場合は使わない方がいいでしょう。二人以上の場合は、まず身軽にしてささっと渡り、重い荷物は手渡しで渡すようにすると無難です。特に体力のない女性や子供連れの場合は、荷物なしで先に渡して下さい。
  • 船頭さんの指示には必ず従って下さい。船頭さんが渡礁の合図を出す場合は、船が磯付けしたからと行って、すぐに渡ろうとせず指示に従いましょう。船頭さんはうねりを見ながら操船していますからね。フードを深くかぶっていると、指示が聞こえない場合もあります。場合によってはフードを外して下さい。
  • 弁当は大体8時頃に持ってきてくれるはずです。渡してくれる人がいない場合は、船に乗り込んで自分の分の弁当を取って下さい。

離礁の時の注意

楽しい釣りが終わったら、帰る支度ですね。

  • 納竿時刻30分前には竿を仕舞いましょう。足元がコマセで汚れているはずですから、必ずバケツで水を流し清掃して下さい。バッカンを丁寧に洗ったりしていると、思っているより時間は早く経ちます。
  • ゴミは必ず残さず、ちゃんとまとめて下さい。港にゴミ箱があるはずです。船に置いておけば始末してくれる渡船もあります。
  • 10分で片づけられるなどとタカをくくらないこと。早く迎えに来る渡船もありますので、あわてふためくことになります。すぐ乗り込めるように荷物はまとめておきましょう。
  • 天候急変した場合は、渡船が迎えに来るはずです。この場合は、早く撤収することが大事ですので、コマセの処理や片づけは後にして、さっさと乗り込めるように急いで下さい。安全第一です。

その他の注意

たくさん書きましたので、不安になったと思います。バスや電車ほどパターン化していないので、要領を覚えるのは大変です。しかし2、3回利用すれば要領は呑み込めます。楽しい釣りは上手な渡船利用から始まりますからね。その他、気づいた点を書いておきます。

  • 慣れないうちは磯替わりなど、むやみに携帯電話を使わないこと。その釣り場、渡船屋さんをよく知り、常連になってからにしましょう。
  • 餌が切れたら、持ってきてくれるというサービス精神旺盛な渡船屋さんもあります。時間延長する場合や、うねりでコマセをさらわれる場合もありますので、確認しておけばよいでしょう。
  • 外洋に面したうねりの高い釣り場では、見回り船が沖にいて釣り人を見張っていますから、万一なにかあっても安心ですが、うねりの低い瀬戸内海や若狭では、通常見回り船はいないはずです。つまり万一何かあっても連絡が取れないということになりますので、使わなくても携帯電話は携行しておきましょう。
  • 船頭さんも人の子です。愛想のいい人悪い人様々です。しかし通っているうちに、たいてい仲良くなり、色々便宜を図ってくれるようになります。情報だけに振り回されず、自分のお気に入りの釣り場を探し出す目を磨いて下さい。結果として、その釣り場に精通し釣果にも恵まれるはずです。
  • 女性連れや子供連れの場合は、その旨伝えておくと考慮してくれるはずです。

笑魚の好きな釣り場は、まず景色がいいところ、船頭さんの感じがよいところです。釣果はその日の潮次第と割り切っています。皆さんもお気に入りの釣り場を探して下さい。

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