仕掛けに角度がつかないと魚が喰わない?
本章ではウキフカセ必須の理論といわれる仕掛けの角度について考えてみましょう。
流れと角度の関係
磯釣り入門書には、金科玉条のセオリーとして、必ずサシエ先行ということが書かれています。しかし、なぜサシエ先行でなければいけないのかということが、案外説明されていません。サシエ先行の謎を知るためには、仕掛け角度をまず知る必要があります。
さて、潮がゆったり流れているとします。そこへ仕掛けを流すとどうなるのでしょうか。上層下層とも同じ速さの流れならば、下の絵のように、仕掛けは必ず直立して流れます。
しかし実際は、仕掛けには道糸が付いています。この道糸がブレーキになり、仕掛けの流れに待ったをかけることになります。ですから、仕掛けは海中でなびく形になります。いわゆるふかせた形になるのですが、この形は流れが作るのではなく、道糸の抵抗が作っていると云うことを理解しておかなければいけません。つい流れが作っているように勘違いするのですね(笑)仕掛けは軽いほど浮きますし、重いほど直立に近づきます。
上の図は、流れが素直な状態を表しています。しかし磯の流れは複雑ですし、風のない日は珍しいくらいです。上潮と底潮は必ずしも同じ流れではありません。上潮が滑ると、下図のようにウキが先行した仕掛け角度になります。サシエ先行はどんな釣りでもセオリーですから、この角度になると釣果が期待できなくなります。悪い潮といっていいでしょう。
ここでは重い仕掛けにご注意下さい。ウキに引きずられているのが少しマシですね。仕掛けの浮き上がりを押さえています。オモリ=深いタナと考えがちですが、風の強い時や2枚潮の時は、仕掛けをしっかり押さえつけるという大事な役割もあります。ぜひ覚えておいて下さい。
何故角度が必要か?
さて、ウキフカセでは仕掛けの角度がウキの前方45度に近づくほど喰いがよいと云われています。名手名人が長年の経験で編み出した理論ですから、まず間違いないと考えていいでしょう。しかし何故か?といわれれば諸説色々あります。魚から仕掛けを見たとき、仕掛けが一点に見えるため喰いがよいという苦しい?理論もあります。実際には必ずしも45度でなくても、魚は喰ってくるのですが、ここでは私なりに考えた角度をつけると喰いがよい理由を挙げてみましょう。
- こませと同調しやすい。
- たるんだ仕掛けでは小さなアタリをとることはできない。角度を人為的につけようとすると、自然と張りを多用することになる。結果、仕掛けが伸びた状態となり、アタリが明確に出やすくなる。
- 魚が喰った時の違和感が少ない。
コマセとの同調
マキエは仕掛け投入の前後、あるいは継続的に投入します。このマキエの筋から仕掛けを外さないように人為的に操作(ラインメンディング)すると、仕掛けにブレーキがかかりますので、自然と角度がつきます。つまり逆説的ですが、ラインメンディングをすると、必然的に角度が付くと云うことです。角度をつけるから喰いが良くなるのではなく、喰わせるよう操作するといやでも角度がつくということですね。この場合、マキエはどんどん先行しますから、マキエの打ち方が決め手になります。
アタリを明確に
仕掛けはピンと張っているほどアタリは明確です。グレはたいへん捕食の上手な魚ですので、たるんだ仕掛けではアタリをとることができません。鈎オモリを付けるとアタリが明快になるのと同じことです。分かりやすいメリットですね。
違和感の軽減
喰ったときの違和感?について図解してみましょう。ひったくるようなアタリを出す魚と違って、グレは基本的に臆病な魚です。すれたグレは鈎を吐き出すのも早いのです。そのため違和感が少ないほど、喰いがよいと考えられます。
コマセを追って乱舞しているような時は別として、一般に魚は潮上から喰ってきます。その時、仕掛けがウキより前方にある方が、喰った瞬間はウキの重みを感じないはずです。反対にウキが先行すると、餌をくわえた瞬間にウキの重みを感じることになります。魚に聞いたわけではありませんがね(笑)
なぜ45度か
なぜでしょう。経験的には直立していても、水平に近い状態であっても、喰ってくるときには喰ってきます。誰も分度器で測っているわけではありませんから、サシエ先行45度というのは経験則から得られた一つの目安と云うべきでしょう。つまり推定45度ぐらいより仕掛けが立った状態であれば、しっかりコントロールされておらず、45度より仕掛けが寝た状態であれば、仕掛けを張りすぎで、マキエとの同調、タナに難があると考えればよいかと思います。
釣れるときは…
潮がよくなり時合いになれば、意図的な操作をしなくても自然と仕掛けは潮によく馴染み、たいていはサシエが先行した状態で流れます。仕掛け角度云々は、トーナメントのように潮が悪い、風が強い、釣り座が悪いといった悪条件下でも、何とか一匹釣り上げるために生まれてきた喰わせ理論、テクニックかと思います。囚われすぎると自然体で海と対峙できず、肝心の時合いを外すこともあるかと思います。ゆっくりじっくりマスターしていって下さい。
角度を知ろう
さて角度が大事らしい(=サシエ先行)と云っても、普通では海中の仕掛けの様子まで判断できません。そこで仕掛け角度を知るツボを伝授しましょう。
水面下をにらむ
まずは優しい方法。視認性のよい蛍光道糸の場合なら、海面下ウキの下から出ている道糸を見て下さい。ウキが釣り座に近い時なら、うっすら水中の道糸が見えるはずです。これなら簡単ですね。ただし偏光レンズは必需品になります。
仕掛けの回収時にチェック
サシエが先行しているときは、仕掛けに水圧がかかっています。ですから回収し始めるときに仕掛けの重みを感じます。しかしウキが先行しているときは、仕掛けにかかっている水圧が少ないために、手応えがあまりありません。ゆっくり水の手応えを感じながら、仕掛けを回収してみて下さい。慣れるとすぐに分かるようになります。
トップの塗りが小さいウキを使う
昨今は沈め釣りが大流行で、視認しやすいようにトップがべったり塗られたウキが多くなっています。まぁ好みですが、ウキを買い換えさせようというメーカーの意図を感じないでもありません。ずばり、トップの塗りは小さい方が、仕掛けの角度が把握しやすいのです。仮に足元から払う潮に乗せて、沖へウキを流しているとしましょう。円すいウキの場合なら、ウキのトップがよく見えているときは、仕掛けは釣り座から反対方向へ向かっています。つまりサシエが先行しています。逆にウキのトップがよく見えないようなら、ウキが先行しています。簡単ですね。
べったり塗ったウキでは、情報が伝わりにくいのです。この件に、もし興味を持たれた方がおられたら、ぜひ松田ウキを使ってみて下さい。松田ウキはトップがソロバン型で、しかも下部を塗っていないので、仕掛け角度がとても把握しやすいのです。面白いですよ。
ウキの挙動に注意する
ある程度、余浮力を残したウキ仕掛けならば、波にゆられて小さな上下動を繰り返しています。しかし時合いになると、ウキの挙動がグッと静かになり、やや沈みがちに流れていくはずです。時合いというのは、底潮が動くときです。底潮が動くと、必ずサシエや仕掛けに水圧がかかります。結果、ウキへの負担が増え、ウキの挙動が静かになるのです。
最近は本の影響で、ウキを沈め気味に使う人が多いようですが、ウキは浮かせてこそ様々な情報を釣り人に伝えてくれます。まずはオーソドックスな釣り方に秘められたウキ釣りの奥深さも学んで下さいね。