タックルといえば、やはり竿が筆頭
一口にいって竿といっても、ジャンルが非常に細分化されており様々ですし、釣り人の嗜好もありますから、海釣りだけでも膨大なアイテムがあり、皆さん自分の釣りに合わせて様々なものを使っているはずです。しかし、どんな釣りをする人でも、磯竿だけはたいてい1本や2本は持っているはずです。磯竿と銘打たれていますが、ウキ釣りを中心に色々万能的に使える海の竿です。波止専用のウキ竿というのは特に開発されていませんから、波止師はみなこの磯竿を転用して使っています。今夜はこの磯竿について、あれこれ語ってみましょう。
ちょっと竿のお話
釣り道具で一番大事なものは、鈎と糸です。これがなければ釣りはできません。しかし一般的な人なら、まず竿と云うでしょう。鈎や糸のような小道具と違って、やはり大道具ですから見た目にもこだわりたいですし、予算的にも一番気を使うはずです。江戸時代の庄内藩では、釣りは武士のたしなみ、武道鍛錬の道とされていました。ですから、竿は武士の魂「刀」と同じ扱いを受けたと云うことです。
竿には構造によって種類があります
まず英語でワンピースロッドと呼ばれる継ぎ目のない一本通しの材でできたものと、携行に便利なように分割されていて現場でつなぐものの2種類があります。ワンピースロッドは継ぎ目がないので丈夫なのですが、持ち歩きに不便ですから、短くてもよいバスロッドや、強度が最優先される船の大物釣りぐらいにしか使われません。継ぐ本数でそれぞれ2本継ぎとか3本継ぎとか呼ばれます。ウキ釣りでポピュラーに使われる磯竿は通常5本継ぎです。
継ぎ方にも色々あります
現在もっとも標準なのは振り出しと呼ばれるものです。その名の通り竿を順々に振り出して使います。携帯に便利なのですが、どうしても竿のつなぎ目がやや弱くなることと、綺麗なカーブ(調子)を完全には描けないということが欠点とされています。しかし現在では技術の進歩で、こういった欠点も殆ど克服されたようです。かさばりますが、ばらばらの竿を現場で一つ一つつないで使う竿の形態を並継ぎといいます。携行性に支障が少ない船竿では並継ぎのファンがたくさんいます。さらに強度を優先したい石鯛竿などでは、逆並継ぎ(写真竿)という継ぎ方も使われます。また竿の継ぎ手に入り子を入れて、つなぐ方式を印籠式と云います。凝った細工ですが、継ぎ目に少し隙間があきます。わざと開けているのですから、不良品だと思ってはいけません(笑)
釣り糸を通す輪っかをガイドといいます
ガイドのあるなしでも竿は分類されます。ガイドのないものは、のべ竿と呼ばれます。リールをつけずに使う竿です。ガイドが表に見えている竿をガイド竿、あるいは外ガイド竿といいます。外にガイドが付いておらず、糸が竿の内部を通っているものを中通し竿といいます。中通し竿の歴史は古く、かの庄内竿などもそのルーツです。理論はともかく実戦では使いにくい中通し竿でしたが、近年の技術進歩で今日では完全に実用化されました。インターライン(写真竿)とかインナーガイドとも呼ばれています。
竿の各部位についての呼び方も解説しておきましょう
将来、必ず役に立つはずです。5本継ぎの外ガイド式磯竿を例に取りますので、ご覧下さい。
ガイドの呼び方は穂先の場合、先端から竿と同じようにトップ、2番、3番、4番と順に番号で呼びます。竿に動かないように取り付けられてあるガイドを固定ガイド、収納に便利なようにスライドして動くようになっているガイドを遊動ガイドといいます。一般的に固い竿や、仕掛けを遠方に飛ばす必要のある竿ほど、ガイドの数が減ります。特に遠投性に考慮して作られたガイドを遠投ガイド(直径が大きい)と呼びます。
長さについて
一般的に磯竿は、グレ、チヌなどのいわゆる上物釣りでよく使われますから、上物竿とも呼ばれます。竿の標準長さは5.3mです。昔は5.4mいわゆる3間竿がスタンダードでしたが、いつの間にか10cm短くなってしまいました。取り廻しのいい5mという長さもあります。持ったときかなり軽く感じます。てこの原理で魚の引きを弱く感じますから、大物とのやり取りにいいという人もいます。私自身は操作性がよくて好きですが、固定の最大ウキ下がやや短くなるという欠点があります。
下手の長竿という言葉があるが…
釣り師のなかには、6.3mという長い竿を好んで使う人もいます。ちなみにヘラ釣りでは尺(30cm)という尺貫法がいまだに用いられ、この場合は21尺になります。長竿を使う主な理由としては…
- ウキ下を固定で4ヒロいっぱい取れる。
- 足元のシモリをかわして魚とやり取りできる。
- 細ハリスが使える。
というのが大きい理由のようですが、確かにウキ下については物理的に長いのですから、間違いなく長く取れます。しかしシモリをかわすとなるとどうでしょうか?大きい魚を掛けると竿はかなり湾曲しますから、同じ固さ調子の竿ならば、たいして魚との距離が変わるわけではありません。それよりも魚をあやす技術やフットワークなど、テクニックそのもので決まるはずです。細ハリスについてはタックルバランスで変わるため、長いから有利とは一概にいえないでしょう。むしろ欠点として…
- 1mも長くなるとかなり重たく感じる。
- 風が強く吹くと、支えておくのに苦労する。
- 狭い釣り場では、操作性が劣る。
- 必ずしも欠点とはいえないが、てこの原理で鮎釣りと同じように、掛けた魚を大きく感じてしまう。
ですからどうしても固定ウキで勝負したいとか、カゴ釣りなどで長くハリスを取りたいというのでなければ、あまりメリットはないようです。好みの問題ですから否定しませんが、少なくとも初心者には難しい代物でしょう。
ならば短竿はどうか…
では短い竿はどうなのでしょうか。私自身、磯竿としては5.3mの竿を4本、5mを2本、4.8mを1本持っていますが、操作感は明らかに違います。
- 2号の竿が1号程度の感じ、かなり軽く感じる
- 軽快性が増し、操作感がよくなる。
- 固定ウキ下が少し短くなるが大勢に影響はない。
- 短い分キックポイントが穂先側へ移動するため、腰の強い竿というフィーリングを感じる。
必ずしも、同じ竿の長さ違いで比較していないので正確なことはいえませんが、必ずしも5.3mで絶対という理由はないと思います。むしろ小柄な人や女性でしたら、やや短めというのはいい選択ではないでしょうか。売場には標準的な長さの物しか置いてありませんから、店員さんに相談すればいいでしょう。
際専用超短竿
シマノから際攻め用の超短尺竿が発売されています。とても面白いコンセプトです。際一本という攻め方もポイントによっては有効です。私自身何回となくばらした大物のほとんどが際で食ってきました。これで石鯛狙いの落し込みをやってみたいですね。
強さについて
竿の強さは号数で表されますが、統一基準がなくメーカーにより多少の違いがあります。年々強度がアップしており、号数による選択が難しくなってきました。対象魚とホームグラウンドで号数を選びましょう。
対象魚と号数の関係
- 0.6~0.8号=いわゆるチヌ竿
メバルなどの小物釣りにも使える。高級品なら反撥力があるため大型チヌ・スズキでも充分取り込める。 - 1号=チヌ・近場の中型グレまで
近場は、まずこれで間に合うはず。 - 1.2号=大型チヌ・中型グレ
中途半端だが、たまに大物が出るような釣り場では竿を換えずに使える。 - 1.5号=中大型グレ
近場のグレ釣りのスタンダード。 - 2号=大型グレ・尾長・マダイ・青物・夜釣り
出番は少ないが、1本は欲しい竿。 - 3号~5号=遠征・青物・かご釣り
いわゆるフカセ釣りでは、出番は少ない。ヘビータックルを使う大物専用。
これから上物釣りをするのなら
グレ一本というならば
近場用に1.5号があればまず間に合うでしょう。1.5号くらいの細ハリスから3号ハリス位までが充分使えますから間に合うはずです。 関西などすれた近場主体なら少し柔らかい1.2号という選択肢もありますし、中通し竿ならばやや強いので、1号という選択肢も悪くありません。
チヌ一本というひとならば
1号でいいでしょう。グレ兼用で万能的に使えるはずです。ただ磯竿の場合、基本的にはグレに照準を合わせているのか、先調子で腰の強い竿が多いので、チヌにこだわるのならば、チヌ用と銘打っているものを購入すべきでしょう。かなり腰が柔らかく胴調子になります。
メバルなど小物好きというひとならば
0.6号でいいでしょう。軟調の竿は釣味が良く面白いものです。細ハリス専用ですが竿がショックをいなしてくれるので、意外と大きいチヌやスズキでも取り込めます。気をつけておきたいのは、表示されているより太いハリスを使わないことです。最近のハリスの強度は素晴らしく、超大物とやり取りしている最中に、竿に負担が集中しバキンと折れることがあります。竿より弱い糸を使うように!
竿のトレンド
ズームロッド
一時はズームと呼ばれる手元で伸び縮みする竿が大流行しました。仕掛けを振り込むときや、際で魚を取り込むときは伸ばしておき(例5.3m)、ウキを流しているときや磯際を責めるときは、軽く操作性のいい(例4.8m)長さにするというコンセプトです。
たしかに合理的で私も一時購入を考えたのですが、使っている連中の話では、リールシートの上から曲がるような予想外の大物がかかると、とてもズームを伸ばしているような余裕はなく、竿がたわむためすんなり竿が伸びてくれないということでした。また竿の構造上どうしても強い先調子になるため、胴調子を好むベテランには敬遠されるようです。そのため私は使っておらず、この件については明快なことはいえません。
中通しロッド
もう完全に定着しました。従来の外ガイド式は少数派になりつつあります。穂先がらみしても、竿の一振りで糸がほどけるため手間いらずであり、穂先を折る心配がまずないというのは素晴らしいメリットです。雨風に強いというのは、気象条件に左右される磯釣りにとって強い味方です。穂先が固いとか、内部に水が着くと糸の出が悪くなるというのは、メーカーの努力で改善されつつあります。
しかし私自身は、まだ外ガイド式に分があると見ております。一見いいことずくめの中通しのようですが…
- 構造的に見て、やはり外ガイド式の軽さに中通しはかなわない。重量バランスがどうしても穂先寄りになり、実質の重量よりは持ち重りを感じる。
- 糸の出も外ガイド式が物理的に優れる。そのため軽い仕掛けを使うときは有利。
- 穂先のトラブルなしや、風に強い点は確かに中通しの魅力だが、これは釣り人の腕にも比例する。やはり初心者や下手な人ほどトラブルが多いし、風のかわし方も下手だ。逆にいえば初心者にはとても強い味方になる。
- 最近は糸がらみがほどけやすよう、ULガイドを多点セッティングした外ガイド竿が発売されている。私のように外ガイド派には嬉しい商品だ。
調子について
よく先調子、胴調子という言葉が会話に出ます。この竿が好きとか嫌いとかいうのは、ベテランの場合、持ったとき魚を掛けたときのフィーリングを差します。このフィーリングを竿の調子と言い換えてもいいでしょう。
腰の強い先調子
- 現在は先調子の竿が主流。
- 曲がる支点=キックポイントが先にあります。
- 持ったときに張りを感じ、しゃっきとしている。
- 操作性がよい。
- 腰が強い。
- 引きを強く感じやすい 。
一言でいえば、グレ釣りに向いているといえましょう。グレは足元に突進して抵抗する魚ですから、魚にストップをかけられるだけの腰の強さが必要になります。竿自身の反発力は素材のグレード/コストに比例していますが、調子もおおいに影響があります。
釣り味のいい胴調子
- いわゆるチヌ竿。
- キックポイントが手元に近い方にある。
- 重みがじわじわ胴に乗ってくる竿。
- 引きをいなすため細ハリスが使いやすい。
まずチヌは掛けられると沖へ出ようとする魚ですし、シモリを避けて泳ぐ習性があります。ですからグレと比較するとバラシにくいのです。強引に止めるのではなく、やんわり引きをいなしながら取り込むのには胴調子がいいですし、面白みもあるといえるでしょう。
D社/シャープな切れ味8:2グレ調子
D社/伝統の6:4チヌ調子
竿の折れるメカニズム
軟調の竿は折れやすいのか?
確かに強い竿を比べると折れやすいと云えないこともないのですが、普通に使う限り、まず折れることはありません。竿が折れるより先に糸が切れるからです。普通は箱にメーカー推奨のハリスの号数が表示されているはずですから、それ以上のハリスをかけることはやめましょう。笑魚も弱い竿に強い糸を使ったために、竿がバラバラになったという苦い経験があります。
根掛かりで折る人が多いようです。竿をあおって糸を切ることは禁物です。よしんば切れても結節部にショックがいきますし、竿が痛みます。またナイロン道糸だとかなり伸びますから、あおっても道糸が伸びて切れないのです。ですから後方に反っくり返って切るような形になります。すると図でもおわかりのように、竿の先側の弱い部分に力が局所的に掛かり折れてしまうのです。
根掛かりしたときは、まず糸が巻き取れなくなるまでしっかりリールを巻きます。それから糸ごと竿を両手で掴んで綱引きをするように竿を引きます。こうすると糸の伸びがなくなっていますので、簡単に糸を切ることができます。竿には全く負担がかかりません。
一番多いのは外ガイド竿の穂先折れでしょうね。穂先に糸が絡んでいることに気が付かずリールを巻き上げたりすると、一発で折れます。また大物とやり取りの最中に、うっかり巻き上げたウキを、ガツンと穂先に当てて折るということもあります。余分な糸ふけを出さないようにしたり、軽くリールを巻いて穂先絡みを起こしていないか、始終チェックする習慣をつけましょう。
魚の強引で竿が折れるときは、先ではなく中間か根元が折れます。竿が満月に曲がるとそこに負荷が掛かるからです。満月になるようなときは、1番2番はほぼ直線上になっており、ほとんど負荷は掛かっていないのです。ですから2番が折れるというのは、反っくり返って竿をあおったなど、無理な使い方が原因したと考えていいでしょう。また高品質な竿でしたら、本当に魚の強引で折れた場合は、バラバラになります。完璧なバランスになるように、作られているからです。
好みが出てくる…
長く釣りを続けていると、必ず好みの竿が出てきます。気に入った道具に巡り会えると、何にも代え難いものです。私事で恐縮ですが、好みの例としてあげますと…
- 穂先がらみのしにくい竿(かなり優劣あり)
- 腰が強く大型魚の突進に対抗してくれる竿
- 造りが頑丈・塗装が強固でタフなこと
- どんくさい保守的なデザインであること
- 絶対的に軽く持ちおもりしないこと
- パーツが高級かつ定番品で保守しやすい
- 余分な機能は不要、基本性能重視の設計