釣りは悪魔の趣味…
釣りほど挫折に明けくれる遊びはありません。全国レベルの名人ですら坊主を喰らうことがあるのですぞ!古来釣りは一種の薬物症状を人に与える「悪魔の趣味」と呼ばれており、もう抜け出すことは不可能です。ならば堂々と立ち向かいましょう。あなたを救う必釣の心構えを教えます。
何が悪い?何を覚えれば…
時合い(じあい)???
魚にもお食事タイム(時合いといいます)があります。私たちが空気に依存しているように、海の生物は潮(海水の流れ)に支配されています。魚たちは潮がよくなる(自分たちにとって都合よい流れ)と餌を摂ろうする習性があります。一日に何回もあるものではなく、この時釣れないとあとは坊主が待っているばかりです。ですから潮の読めない漁師は一人もいません。
出会い頭に釣れることはない…
誰も釣っていないときに、ポンと魚が釣れることがあります。「交通事故や、ウッシッシッ~」と私たちは喜びますが、実は交通事故ではなく、やはり潮が目に見えないところでよくなって魚の活性が上がっていたのです。そこへ餌の付いた鈎があったというわけですね。
皆が釣れるときもあるじゃん?
潮というのは日によって変わります。いい潮もあればイマイチという潮もあるのです。いい潮の時はすごく魚の活性が上がって、どんどん住処から餌を摂りに出てきます。こんな時は全員大漁です。いま一つの潮の時は魚もあんまり食欲がないのです。目の前に餌がぶら下がらない限り食ってくれません。釣師の腕の差が出る時です。
黙って釣られる奇特な魚はいない~
魚は基本的に臆病です。身を守ってくれる法律や警察はいません。弱肉強食に支配された生態系です。波止でしたらスズキがその頂点でしょうが、スズキですらタチウオが接岸してくると態度が小さくなります。餌が流れているから「パクッ」などとやっていたら身が持ちません。どうも釣り人はこの事実を忘れがちです。ウサギを捕まえようとしたら誰でもすごく慎重になるはず、魚が相手でも同じです。
マズメは黄金タイム
臆病な魚でも食事は必要です。勇気を奮って餌を摂る時刻が日の出日の入り頃です。夜明けや夕暮れの薄暗い時は、魚にとってもっとも大事な食事時間です。この時、いい潮が重なると爆釣ショーとなるわけです。潮が悪いとせっかくのマズメタイムもいまひとつになります。真っ昼間に出かけていって釣れないからすぐ帰るというパターンの人をよく見かけますが、腕前以前に自然の摂理を無視しています。
あなた任せの時合いでも…
時合いというのは案外短いもので、まず30分とは続かないですし、いつ訪れるのかあなた任せです。しかし、この時合いもある程度人為的にコントロールすることができます。マキエです。マキエというのは自然界にはないのです。ですから自然界にない摂理で魚が行動します。呼び込む、足止めするなど、魚の習性を押さえたテクニックが必要ですが、これは後日解説しましょう。
ポイント・潮時・時刻を知れ!
この3つを忘れてはいけません。そこそこ実績のあるポイントでいい時刻、いい潮になれば、魚は釣れてくれるはずです。ポイントと時刻はコントロールできます。潮もある程度は予測できるのですが、初心者のうちは「潮が悪くても釣ったるわい」などと豪語を吐かず、ぐっと我慢の子になりましょう。いくら悪くても、日に何回かはいい潮が流れます。このチャンスを逃がさないのが腕なのです。
粘っても釣れない…Q&A
みんな釣っているのに私だけ釣れない~
- 問題を一つ一つ整理して考える習慣を付けましょう。同じ餌、同じポイントで釣ってみんなが釣っているのなら、いわゆる時合い=魚のお食事タイムです。
- 仕掛けが合っていないかも?魚が泳ぐ泳層(タナ)を探ってみましょう。アタリを見逃していることも考えられます。感度の高い糸やウキ、柔らかい穂先に交換するのもひとつの手です。魚は潮下(潮が流れてゆく方向)から食ってきます。潮の流れを判断しつつ、釣り座を移動することを考えてみてもいいでしょう。
真夜中まで粘ったが釣れなかった~
- 経験的にいうと、大体お魚は夜8時以降は食いが渋くなります。特に昼間釣れなかったようなときはなおさらで、10時以降は確率がかなり低くなります。またハゲやベラは陽が落ちるとさっぱりです。魚も眠るのです(早起きですから…)。もちろん夜行性の魚もいますが、一般的な波止で真夜中に釣れるのはアナゴぐらいですぞ~
- 早く帰って一杯飲んで寝ましょ!
いいポイントと聞いて来たが釣れなかった~
- ポイントだけ聞くと後はそそくさ、という慌て者の釣り人は多いようです(筆者も…)。釣り場にはそれぞれ個性があります。同じ魚でも習性や潮の好みが微妙に違います。食性が地域で変わるために、当り餌(よく釣れる餌)も違うのです。
- その釣り場のくせや、潮の流れ方、当り餌、釣り方など、手に入る情報はすべてゲットしましょう。その上で自分の釣りを組み立てればいいのです。
いいポイントを探して歩いたが…
- 探り歩くこと自体は悪くありません。ただあまりにもせっかちに移動している間に、肝心の時合いを見逃すことが多々あります。ここはダメと自信を持って見切るまで多少の粘りは必要。
- 少し経験を積むと、なんとなく海がざわざわしてきたとか時合いの気配を体で感じられるようになります。そのときは気をとらわれず釣りに集中するのです。
1カ所で粘ったが釣れなかった~
- 先ほどとは反対のケースです。よほど変なところで竿を出していない限り、粘ること自体は悪くありません。必ずチャンス(時合い)はあるものです。しかしそのチャンスを生かし切れていないようです。
- 折角1カ所で粘るのですから、ポイントをくまなく探ってください。半径20mの範囲を探っても600㎡以上あります。ましてそれに水深を掛け合わせたら、探索範囲は思っているより広いのです。釣り糸を垂れているだけでなくもっとマメになりましょう。
釣れる仕掛けを買ったけれども釣れなかった~
- 仕掛けで魚は釣れません、魚は腕で釣るのです。いくら理にかなったいい仕掛けでも、釣り方が理にかなっていなければ……ねっ!
- 仕掛けにはそれぞれ特長がありますから、その使い方をマスターしましょう。慣れるまでは時間がかかるはず、焦らずに~
読者の質問
何で隣ばかりが釣れるのよ?
他の人と同じ仕掛けで釣りをしているとき、自分は全然釣れなくてもそばの釣人は沢山釣っています。道糸や竿の種類とかおもり等は違うと思いますが、仕掛けは同じです。これはどうしてなんでしょうか?
- ふむ、よくあることですね。同じ技量ならば、いい釣り座を占めた方が有利ということもありますが、文面から判断するとそうではないような。ちょっと極端な例え話ですが、あなたが漁師さんの船に乗って、同じ魚を狙って同じ仕掛で釣ったとしても、やっぱり差がつくと思いませんか。漁師さんは大漁であなたはボウズかも知れません。
- 名人が100匹釣るような時は、初心者でも50匹位釣れるものですが、名人が粘っても10匹しか釣れないときは初心者は2,3匹、下手をすればボウズです。釣れないときほど腕の差、経験の差は出ます。仕掛云々以前に海と魚を知り尽くしています。仕掛が占める割合などたいしてありません。しかし熱心に研究し経験を積むことで、ベテランに追いつき追い越すことは可能です。頑張ってください。
なぜ僕には釣れないの?
先月末から海釣り(堤防サビキ釣り)をはじめました。しかし釣果は4回○○県の堤防に行って、豆鯵1匹とふぐの子供が2匹と恥ずかしい釣果です。片道3時間かけて行っているのに…。また仕掛けもよく判らないので、釣り道具屋でつるしの仕掛けを使っています。そこで質問~なぜ?釣れないの?4回とも時間は夕方から翌日昼まで寝ずにやっています。サビキの仕掛けで網のかごにさびきを入れて釣りしていますが、さびきの量が足りない?
- 長くやればいいというものではありません。いい潮回りや潮時、時合いを外すとダメです。大体草木も眠る丑三つ時は、夜行性の魚を除いて魚も眠ります。ここらへんはこの章にも詳しく書いていますから、ご参照下さい。
全く釣れない初心者なんです。
初心者でも釣れる初心者の仕掛けと釣り方教えてください。何の魚でも良いから海で魚釣りたいです。
- ハハハ、結論から云うとそんなものはありません。面白いもので、海や釣りに精通したベテランほど仕掛けはシンプルになっていくのです。ですから初心者の方が、ベテランの釣り道具を手にしたら「意外と扱いやすいなぁ」と思うはず。
- ベテランはトラブりやすい仕掛けや、手返しが遅くなる凝った仕掛けを嫌います。現場で作るのに時間の掛かる仕掛けも嫌いです。また付加物の少ない仕掛けほど、喰いがいいと云うことを経験から学んでいます。基本は鈎一本でやるフカセ釣りと考えて下さい。それに加えて飛ばす、流すなどの機能を加えて行くだけです。あまり難しく考えないように。
海釣りもっと勉強しないと釣れない?
それとも僕は海釣りに向かない? 本当に悩んでいます。忙しいところ申し訳ございませんが、どうか愛の手を~
- 釣りにお勉強は必要ありません。楽しんで経験を積んでいけば自然と上手になりますし、いい日に当れば大釣りという楽しいことも必ずあります。しかしコンスタントに釣果を上げたいとか、人より釣りたいというのであれば、真剣に遊びに向き合うことも必要です。
- どこで釣れるのか何が釣れているのか?前回釣れなかった理由は?など考えることはたくさんあります。あなたが釣りに向いていないということはありません。質問をしてくるという「あきらめの悪さ」が、充分立派な釣り師になれる素質を物語っています。