釣れない冬を釣る

釣りのステッカーとTシャツの音海屋
冬の釣りも体力と忍耐・・・

2月に入ると、さすがにアタリが出ません。ついには完全坊主という人も出てきます。かくいう笑魚も、オキアミ一匹でエサが足りたという悲惨な経験がないわけではありません。夏のエサ取りと戦うのも釣りなら、これも釣りです。釣果を競うのも楽しいですが、喰わない日に一匹釣るのも釣りの醍醐味、釣れない冬を頑張りましょう。

釣りは科学だぞ

釣りというのは漁です。漁に一番必要なものは何でしょうか。そう~漁場のデータ、対象魚のデータ、そしてそれらのデータにかなう漁の技術ですね。ちょっと釣り込んできた釣り人ほど、この簡単なことを忘れがちのようで「釣りは技術だ、仕掛けだ」となりがちです。もっともデータといっても、データを集めるだけではだめで、データを分析する、あるいは予測する洞察力が必要です。漁船の漁労長は神様なのですよ。

冬の海とは…

海にも四季があります。海水は大気より冷え込むのが遅れますので、陸より海の暦は約一月ちょっと遅れます。ですから、2~3月の海というのは真冬になります。また一言に海といっても、色々な海があります。外洋の黒潮の影響を受けるような沿岸部では、水温の低下の幅は限られており、12,3度を切るようなことはまずありません。しかし、瀬戸内海などの内海では、気温の低下に比例する形で、どんどん水温が下がります。場所によっては6~7度という低水温になり、魚が仮死状態でポカリと浮かんでくることさえあります。また、初春の日差しを受けて雪が温む頃は、海も暖かくなるのかといえば大間違い、雪解け水が入るような河口近くの海では、すごく水温が低下するのです。

水温が低下したらお魚はどうなる?

お魚は人間と違って変温動物だと云うことを忘れないで下さい。人間を始めとする哺乳類は恒温動物といって、気温の上下にかかわらず代謝ができます。早い話が寒くても動けると云うことです。しかし魚は爬虫類のように変温動物ですから、水温が下がると、代謝しなくなります。つまり動かなくなりエサを取らなくなります。金魚が冬の間、池の氷の下にじっとしてエサを取らずに過ごせるのは、一種の冬眠状態ですね。海の魚も同じことです。

低水温が嫌いな魚もいる

水温8度ぐらいでも、チヌを釣ったという記録がよくあります。チヌのように沿岸性の魚は地域にもよりますが、耐寒性が強い魚です。それと比較すると、グレは水温の変化に敏感です。エサを取らなくなると云うより、さっさと場所を移動するようです。水温の安定した地域、あるいは深みへ落ちていくことはよく知られています。基本的には磯に居着く魚なのですが、渡り鳥のように回遊するのです。夏場あれほどいたこっぱグレがいなくなるのは、集団で移動するからでしょうし、グレ本番が水温18度前後とされているのも、大型の魚ほど水温低下に強いということでしょう。しかし寒グレも水温14度を切るぐらいから、極端にエサを取らなくなります。活性が下がるわけです。

海の中は見えない…

大分昔ですが、釣りのビデオを見ていたときに、笑えたことがあります。寒風吹きすさぶ地磯で上物師が釣っているのですが、まったくアタリがありません。
「今日はあかん~水温が低いのやな~魚がおらん」
水中カメラが捉えたものは、ちょっと離れたポイントで乱舞するグレの集団でした。

もう一つの笑えた話は雑誌の冬場の沖磯取材。やはり状況は厳しく、名人はあの手この手と繰り出します。
「喰わんな~よし!この手で~」
しかし水中カメラが周辺を観察すると、グレどころか小魚一匹いません。要するに魚が一匹もいないのです。釣りの腕前以前の状況だったのです。

冬場のセオリー

冬場はいずれにせよ、厳しいものです。海は1月までは晩秋から初冬と考えていいでしょう。エサ取りが減って、魚種にもよりますが、大物が狙う確率が上がります。しかし2月から3月、場所によっては4月中旬ぐらいまで、釣りは難しくなると云うことを忘れないで下さい。しかし冬でも毎日行きたい釣りキチは、石を投げたら当たるほど、ゴロゴロいますね(笑)ちょっとヒントを書いておきましょう。

冬場のマネジメント

徹底して風裏のポイントを探す

冬場は季節風が厳しくなります。例え魚が居るポイントでも、仕掛け操作がままならない状況では釣果は望めません。もちろん体力も消耗しますし、うねりの立つ釣り場なら危険です。

風が強い週はあきらめる

冷たい風が吹き続けると、水温は低下します。その週、よく風が吹いていた釣場はあまり期待できないと考えて間違いありません。

水温の高い釣場へ移動する

発電所の排水口は、魚の越冬場になります。関西の例としては姫路妻鹿のチヌ、若狭高浜の越冬石鯛、若狭大島の青物などがあります。また水深があり流れのとろいところも狙い目です。間違っても雪解け水が入るような所を選んではいけません。

大物を求めて遠征する

冬場は遠征がいいと思っていて下さい。元々魚種が限られ魚影が薄い都会の波止では、ますます釣果が期待できなくなります。冬場に実績のある所は、大抵資源が豊富で、水温も安定しているところが多いものです。情報は腐るほどありますから、調べてみましょう。釣行回数を減らす分、大物を狙うのです。

釣場のデータを蓄積する

名人といえども坊主を喰らうことはあります。しかし名人と呼ばれる名手に坊主が少ないのは、その技もさることながら釣場のデータが頭に入っているからです。同じ釣場でも季節によって、アタリの出る場所が変化します。こればかりは通って身に着ける必要があります。苦労せずにネットや本で覚えた知識は、現場ではなかなか活用できませんからね。

マズメより水温を優先?

朝マズメはゴールデンタイムです。しかし水温が一番低い時間帯でもあります。釣りものにもよりますが、日が昇ってやや水温が上がる昼前後に、よくアタリが出る釣場があるということも覚えておいて下さい。

釣果に出会うための技

冬場の釣りは一にポイントですが、やはり技やギアのコーディネイトも必要です。全ての釣りにわたってセオリーを書くことは無理ですが、笑魚の親しんだウキフカセで、私流に実践したことを書いてみます。この考え方は必ずしも皆さんに参考にならないかも知れませんが、一つの例として、それぞれの釣りで工夫を重ねてみて下さい。

深みを釣る

私は数釣りや大物釣りでは、決して自慢するような技は持っていませんが、全員討ち死にという最悪の日に、ポツポツ釣るのは得意なのです(笑) 7ヒロ以上の沖の深みを攻めるのが好きというのも、その理由の一つだと思います。しかし初心者の方が「よし俺も!」と深く釣っても、なかなか釣果に反映するものでもありません。仕掛けの状態、海底の様子、マキエの行き着く先を推測できなければいけないからです。しかし練習を始めて見て下さい。冬の技術です。

スルスル釣りはしない

上物釣りではスルスル釣りが全盛です。自在にタナを求めてというのがその理由だと思いますが、私自身スルスル釣りは高水温期浅場の数釣り用です。喰い込みがいいのでアタリがとてもよく出ます。しかし深みを釣る全層釣法などは、実際は手返しの悪い釣りです。これと思ったタナを想定したら、潔くそのタナで狙うというのが私の性に合っています。

這わせて釣る

低水温期のチヌにはかなり効果的な技術です。2ヒロ以上ハリスを海底に這わせるイメージで釣ります。ウキの選択が重要になります。鈍くさいプラ製の棒ウキや寝ウキではダメです。研究してみて下さい。

エサ使いを考える

オキアミが主流のグレ釣りでも、冬場は工夫します。私は小鈎小餌にするぐらいですが、皆さんオキアミの皮を取ってむき身にしたり、ハバノリを使ったり、人によっては石ゴカイを使う人もいます。冬のチヌ釣りではボケが好きですね。水温の高い時期にはエサ持ちが悪すぎて使えませんが、冬場は特効餌です。何回もいい目をしたことがあります。他の魚種でも使えると思いますので、費用が気にならない方は試してみて下さい。

徹底して喰わせ優先仕掛けにする

南紀のグレ釣りなら、道糸1.5号、ハリス1.5号、グレ鈎4号が標準です。ばらした時は、ばらした時と割り切っています。さばきやすさ最優先です。もちろん数限りなくばらしております、ハハハ。

技術を磨く

風の強い日が多くなるのでライン・メンディングの技術がとても大事になります。道糸を打ち返せたり、逆に風を利用できるようになれば一人前です。

違う釣りもしてみよう

海釣り道場の主な読者は、波止釣りの方が多いと思います。 波止には波止の面白さがありますし、私自身気が向くと夜釣りにふらりと出かけます。しかし冬場に面白い釣りではありません。釣りにはそれぞれシーズンがあります。冬場なら磯のグレ釣りや、年中多彩な魚種が狙える沖釣り、湖のワカサギ釣り、投げならアイナメ釣りなど、冬ならではという釣りもたくさんあります。こんな面白い釣りを見逃す手はありません。一度考えてみて下さいね。

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