安全快適のための必須アイテム
読者の質問箱に、磯ブーツに関するご質問をいただきました。装備関連の記事で少し触れているのですが、以前にも同様な質問をいただいたので、この際、足元の装備を詳しく取り上げることにしました。靴は仕掛けに劣らないほど大事な道具~お役に立てて下さい。
色々な釣りに求められる靴の種類と機能
ちょっと一覧表にして整理しましたので、眼を通して下さい。
専用ブーツ(長靴)の要・不要 | 機能 | 底の材質 | |
波止 | 必ずしも必要でないが、コマセの汚れ対策や防寒にはなる | 保温性 軽さ |
ゴム |
磯 | 必需品・命に関わる | ノンスリップ 防水性 |
スパイク フェルト |
筏 | 必ずしも必要でないが、足元が団子でかなり汚れるので、必需品に近い | 保温性 | ゴム |
船 | 必ずしも必要でないが、飛沫をかぶるケースが多いので、必需品に近い | 保温性 防水性 |
ゴム |
渓流 鮎釣り |
流れに立ち込むので、ブーツでは不可 靴とスボンを一体化したウェーダーが一般的 |
ノンスリップ 透湿性 |
フェルト |
この表からもお分かりのように、釣り専用の靴が求められるのは、磯と渓流釣り、鮎釣りぐらいです。ウェーダーについては、専門サイトが的確な情報を提供していると思われるので、当サイトでは解説しません。さて磯ブーツの解説に入る前に、一般的なゴム底の長靴を選ぶコツを書いておきましょう。
ゴム長を選ぶコツについて
皆さん、高価な釣り専用のものは必要ないと思われていると思います。 確かにホームセンターにはとても安いゴム長が並んでいるので、それでもいいのですが、手に取り履いてみて確認して欲しいことがあります。
キャラメルパターンはダメ
ごつごつしたキャラメル状の底が付いたものは、畑仕事用です。濡れたコンクリートや船のデッキでは滑ります。フラットでペタッとした底のものを選んで下さい。土の上を走る運動靴のようなパターンではなく、バスケシューズのような底がいいでしょう。
保温性に気をつけて
冬場に履く場合は、内部にちゃんと起毛してあるものを選んで下さい。極安の長靴は安い裏地ですから保温性が悪く、底も薄いので冷気が地面より伝わり、とても冷えます。普通の運動靴の方が暖かいくらいです~ご注意。
こんなメリットもある
ウキフカセをする人は、一般的にとても長いハリスをとります。靴ひもに引っかかって困ることもあるでしょう。長靴ならこの心配はありません(笑)
磯ブーツの底材を考える
スパイクは滑らないは大きな勘違い!
磯釣りをやると、すぐに分かることですが(笑) スパイクは確かに氷の上や、氷結した雪道では滑りません。しかしスパイクが滑らないと云うのは大きな勘違いで、スパイクはその材質や形状で滑らないのではなく、路面に足がかりを付けて安定させると云うことです。いくら固いスパイクでも、岩の上に窪みを付けることはできません。ですから盲信していると悲惨な目にあります。
問題は滑らか、かつ濡れた岩肌
岩そのものが火成岩のように、ざらざらで滑らない形状なら、スパイクでなくても運動靴で充分です。問題は水成岩のように、波や雨で濡れるとツルツルになる表面が滑らかな岩です。おまけに海苔が生えていたりしたら最悪です。よほどの平衡感覚がないと100%転倒します(本当よ!)
滑らないと云う点ではフェルトに尽きる!
川の底の石には藻がへばりついています。もの凄く滑ります。ですから川の中に立ち混んで釣る釣り師のウェーダー底は全てフェルトです。フェルトは一見頼りなさそうなのですが、実はとてもノンスリップ性能が高いのです。潮をかぶって表面がツルツル岩の上でも滑り難くなります(※全く滑らないのではありませんよ)
要は釣場の特徴で求められる機能が変わる
もうお分かりだと思いますが、一般的な岩場ならスパイク底、常時波をかぶっているような沖磯、雨の日、水成岩のような滑らかな岩肌の磯にはフェルト底が向いているということです。滑りにくさという点だけなら、場所を選ばないフェルトに軍配が上がるのですが…
それぞれの得失
フェルトがノンスリップ性では、スパイクより一枚上手と書きました。それならば、世の磯釣り師がみんなフェルトかというと、そうでもありません。得失を表にして比較してみましょう。
スパイク底 | フェルト底 | |
---|---|---|
滑りにくさ (磯 ) |
▲場所により異なる | ◎場所、天候を選ばず優れる |
滑りにくさ (地磯) |
◎地磯通いは傾斜地を伝い降りることが多い。スパイクはこんな時助かる | ×土、枯れ葉混じりの傾斜地ではよく滑る |
滑りにくさ (渡船) |
▲古い船ではデッキがよく滑る。もちろんスパイクもよく滑る | ◎こんな時も安心 |
歩行感 | ×がちゃがちゃとうるさい。スパイクが足の裏を突き上げ、痛んだり疲れることもある | ◎ゴム底より静か。足が疲れにくく普通の靴の感覚に近い。 |
消耗度 | △週1回釣行なら1年もたない | △似たようなもの |
メンテ | ◎さっと洗うだけでよい | ▲コマセがこびりつくと悲惨。臭いが染みつく |
価格 | ○似たようなものだが、在庫処分で安く買えることがある | △店頭在庫が少なく取 |
お分かりいただけましたか?それぞれ得失があるので、自分が使うシテュエーションを想定して選ぶといいのです。
ズバリ!スパイクかフェルトか
笑魚が底張り替え式を選ぶ理由
笑魚は、底張り替え式がメーカーから出たときから使っています。長く使えて経済的だという理由ではありません。長靴は底以外にも、型も内張もへたってくるので、結局は交換した方が賢いのです。元々が張り替え式は高いですし、交換底も安くありませんからね。選んだ一番の理由は、行く釣場で底を変えられるからです。スパイク底は日本海(除丹生)、瀬戸内方面、フェルト底は南紀~紀東方面の釣りに使います。 筏や沖釣りの時も、フェルト底に変えれば、そのまま使えます。では2足買ったらいいのかといえば、やはり1足の方が経済的ですし、メンテも楽です。
釣場が決まっているなら…
底材を選ぶポイントは上に書きました。自分が通うメインの釣場に合わせればよいのです。地磯通い中心ならスパイクで決まりです。釣場の状況まで分からなければ、先輩や磯釣りに詳しい店員に聞けば教えてくれます。迷ったときは迷わずフェルトにして下さい。メンテと在庫状況以外は殆どの点で優れます。予算があれば張り替え式にしましょう。もっともちゃりこのように、がちゃがちゃ鳴り響くスパイクを履くと「気合いが入る!」という機動戦士ガンダムのような人もいるので、絶対にとは申しません。
ブーツを選ぶツボ
スパイク:鋲の材質、ピン数、配置について
超硬質ピンというのがあります。ピンは思っているより早く減りますので、効果はあるかも知れません。メーカーのプロパー商品の方が、こういう面ではノンブランド品より安心できるかも知れませんね。ピンの数はメーカーにより違います。あるメーカーの靴底は明らかにピン数が少ないです。摩擦にどういう因果関係があるのかまでは分かりませんが、少ない分ピンの突き上げ感は強いと思います。ピンの配置についても、メーカーによっては、かなり靴の縁より内側寄りに付いています。ということはハイヒールと同じで、足裏の安定感が若干損なわれると云うことですね。
スパイク:突き上げ感について
ブーツによって、スパイクの突き上げ感がはっきり分かるものがあります。これはダメです。釣っていると、だんだん足の裏が痛くなってきます。釣具店で試着したときに、足裏に左右ずつ体重をかけてチェックしてみて下さい。スパイクの突き上げがはっきり分かるようなものは、ずばり敬遠した方が無難です。
フェルト:底材について
最近は合成フェルトが多くなりました。綺麗な黄色や白がそれだと思って下さい。自然素材でできた本物のフェルトは、汚いグレー色です。合成フェルトのメリットは、繊維が強靱なので減りが少ない(=ノンスリップ性は相対的に低くなる)と云うことです。これはメリットになるようでなりませんね。フェルトを選ぶ一番の理由は、安全性向上だからです。そこらも検討材料にして下さい。ちなみに笑魚は小汚いフェルトの方です~確かに減りが早いです(笑)
底張り替え式:底が外れる心配はない
底は超強力なベルクロで取り付けられています。もの凄く強力な接着力ですから、初めのうちはドライバをねじ込んで外したくらいです。取れる心配はありませんが、ちょっと付けたり外したりにコツが必要です。もっともすぐに慣れます。
底張り替え式:ピンの減りは早い?
というか、底を張り替えするという構造上、一般のスパイクブーツより、ややピンが短いのです。その分摩耗が早く来ます。もっとも私の場合、フェルトと交換して使っていますから、結果として使用時間が短く、減りは少ないのですが。
スパイクフェルトについて
一見よく考えたような商品ですが~いかにも中途半端ですね。スリップテストの試験結果でもあれば、信用して皆さんにもお勧めしますが。考えられるメリットとしては、皮底に打つ金鋲と同じで、フェルトの減りがちょっと少なくなるだろうと云うぐらいです。足がかりの確かさを選ぶなら全面スパイク、濡れた岩面での滑りにくさを選ぶなら全面フェルトがいいはず~あの程度のスパイク数で足がかりがよくなるとは思えませんし、フェルトの機能もピンに邪魔され、若干低下するはずです。私自身使った経験がないので偉そうにいえませんが、大いに疑問があります。
軽量ブーツのメリットなどない
最近は疲れないと云うことで、軽量のブーツが販売されています、あの手この手と商品開発の担当者は大変ですね。しかしこれはありがた迷惑です。磯の上で一日中歩き回ることなどないのですから。長靴はふにゃふにゃより、剛性ができるだけ高い方がいいのです。殆どの磯は傾斜が付いています。登山靴と同じ理由で、しっかりした重めの靴の方が、却って疲れないのですね。また移動するときに、ガツンとくるぶしを岩角に打ったりして泣くことがあります。厚手のゴムほど足の保護になります。
日本人は甲高・幅広
日本人の足は甲高幅広です。ですから日本人用に合わせた型のものを選ばないと疲れますし、脱着もしにくいと思います。磯ブーツなら大丈夫だと思いますが、中国製の超安価な長靴などは、欧米向けに作られている可能性があるので、用心した方がいいですね。いずれも必ず試着して決めることです。大きい足(笑魚)小さい足(ちゃりこ)の人はサイズに苦労しますが、妥協してはいけません。
磯釣りにはEサイズがいい
Eサイズ(ワイド)といって、ふくらはぎ部分に余裕を持たせて作っているサイズバリエーションがあります。早い話が足の太い人用です。私は特に足が太くありませんが、このEサイズで重宝しています。冬はアンダーウェア、スウェット、登山靴下などで、相当足回りが太くなるからです。窮屈さがしのげますし、靴の脱着も楽です。おそらく取り寄せになると思いますが、おすすめ。
サイドファスナーが便利
足が大きかったり、甲高の人はブーツの脱着に苦労していませんか。私は28cm、しかも甲高なので本当に苦労してブーツを脱いでいます。こういうときは、ちょっと高いですがサイドファスナー付が楽です。冬場、着ぶくれしたパンツの裾をブーツの中に入れたいときも、すんなり裾をたくし込むことができ、とても便利ですよ。ファスナーといっても、中にはゴムのフラップが付いているので、防水に問題はありません。
シューズタイプについて
最近は編み上げの運動靴タイプも普及してきました、確かに夏場にはよさそうですが、磯釣りには難があります。コマセを使う釣りの靴には、防汚性も求められるからです。また足元には飛沫がかかります。濡れることは前提となります。シューズタイプは、ソルトルアーマンか、せいぜい底物師用と考えた方が無難でしょう。
付録:磯ブーツのメンテナンス
何しろ長靴ですから、メンテはありません。しかし釣行ごとに洗う習慣はつけましょう。コマセを使う磯釣りでは長靴も臭います。足の臭い人なら靴の中も、悲惨な状況になっているはず(笑)トランクに入れっぱなしは、嗅覚が正常な釣り人のすることではありませんぞ。特にフェルトはごしごしきっちり洗って下さい。相当汚れが染み込みますからね。それと一般的なスパイクは鉄です。真水で洗わないと錆びますよ。仕上げに靴用消臭消毒スプレーを一拭き~これで大分違います。
最後に…摺り減ったスパイクやフェルトブーツを、小遣いが少ないからと云って履き続けてはいけません。本当に怖い目に遭いますよ(実話)
2019/11 更新