紀州釣りだよ1

釣りのステッカーとTシャツの音海屋
チヌのための特化型釣法筆頭だよ

要領さえ覚えれば抜群の釣果が期待できます。庄内、野島、備中、若狭云々など地方の名前の付いた伝統釣法、ご当地釣法は各地にあります。その中でも紀州釣りほどメジャーになった釣法はないでしょう。波止でウキを使わない釣法の筆頭が落とし込み釣りなら、ウキを使う釣法の筆頭は間違いなく紀州釣りです。紀州釣りの面白さは探る釣りではなく、寄せて釣る面白さにあります。3回特集で紀州釣りの秘密を覗いてみましょう。

紀州釣りとは…

波止に陣取ったおじさんが、ダンゴをポンポン投げている風景を見たことがありませんか。水面を見ていると、ダンゴに引かれて沈んだはずのウキが、ぽか~んと浮いてきます。しばらくしておじさんがピシャッと竿を立てると、あら不思議、チヌが掛かっています。手品のようですね。

この釣りが紀州釣りです。もちろん種も仕掛けもあります。落とし込み釣りは、チヌの習性にかなった釣りだと前章で説明しましたが、この紀州釣りも大変チヌの習性にかなった釣りで、紀州すなわち和歌山県(発祥は江戸時代中期和歌山県北部)では、昔から行われていたポピュラーな釣りです。決して秘伝○○釣法ではなく、波止のオイヤン(和歌山弁でおじさんのこと)なら、誰もが身近に親しんでいる釣りです。では普通のウキ釣りと一体どこが違うのでしょうか?

最強の理由1 徹底して底を攻める

チヌ釣りの基本は、まず底狙いということはご存じですね。魚の習性として、底に着いたエサには警戒心が薄れるといわれています。チヌは底棲魚ではありませんが、筏のかかり釣りと同じく、底をポイントにするとよく釣れる魚なのです。紀州釣りの基本は底とんとんです。水温が低くなるとハリスを底に這わせて釣るテクニックもあります。

最強の理由2 底で魚を集める

紀州釣りでは、マキエの代わりにチヌの好きな集魚効果や濁りのあるダンゴを海底に投入することで、ポイントを人工的に作ります。ダンゴに釣られてやってきたチヌを一網打尽にするのです。ですからツボにはまると、凄く数釣りできます。マキエをするウキふかせ釣りが、上から流し込んでいくのと逆です。浮かせて釣るのではなく、底に集めて釣ります。筏のかかり釣りに似ていますね。

最強の理由3 沖を攻める

落とし込み釣りが際ぎりぎりを攻めることに対して、紀州釣りは徹底して沖を攻めます。底を攻めるため根かかりしにくい沖の砂地を攻めるという意味もありますが、沖ほど魚の警戒心は薄らぐのです。人の姿も海面が反射して見えなくなります。人工的にポイントを作る釣りですから、際やシモリにこだわらなくていいのです。

最強の理由4 エサ取りを防ぐ

ダンゴには強力な集魚力があります。しかし同時にサシエを底まで持たせるという役目もあるのです。アジやサバが湧いていたら、とてもサシエはチヌのタナまで持ちません。こんな時、ダンゴはエサ取りからサシエを守る強力なガードの役目を果します。私がよく通った瀬戸内海家島諸島でも、エサ取りが跋扈する夏場になると、紀州釣りをやる人がずいぶん見受けられたものです。

最強の理由5 作戦を組み立てやすい

ダンゴはピンポイントに入れます。普通は潮や潮汐の変化で、ポイントを変えるということはありません。タナも底狙いですから、的は絞りやすくなります。どちらかといえば手返しをよくし、アタリを待つワンパターン的な釣りです。もちろんそれはそれで奥の深い釣りですが、シビアな潮読みが要求されるウキふかせ釣りなどよりは、最初の一匹を手にしやすい釣りでしょう。

紀州釣りの道具仕立て

紀州釣りだからといって、特殊な道具が必要なわけではありません。普通のウキ釣り用品を充分に流用することが可能です。仕掛けとしてはシンプルなぐらいですが、ダンゴと深い関わりのあるウキについては、注意して選択しましょう。

ウキは紀州釣りの命

この釣りはウキが重要な役割を果します。一般的によく使われるのは軽量の棒ウキ、玉ウキ、寝ウキです。特徴を上げてみましょう。

棒ウキ・非自立式

視認性・感度がよく、初心者でもアタリが取りやすいウキです。仕掛けが立たないとウキも立たない非自立式ウキの方が、ダンゴに掛かる仕掛けの馴染み、食い上げのアタリ、糸絡みなどのトラブルが分かりやすいという長所があります。ですから非自立式のカヤウキや、改造ヘラウキを好む人も多いようです。欠点としては低浮力のウキが少ない(大体0.5号程度まで)ため、市販品では重めのオモリを使う必要があります。紀州釣りの場合、サシエはダンゴの重みで海底まで届くので、ハリスを馴染ませる程度のガン玉、あるいはガン玉なしの完全フカセでもいいのです。軽い仕掛けを使えないという点では不利です。

棒ウキ・自立式

鉛が仕込まれているため、風や波に対する安定性に優れているというのが強みです。同じ大きさなら非自立式より軽いオモリが使えますので、魚に対しての喰いが勝るという考え方もあります。しかしダンゴ釣りに向いた小型軽量の自立式ウキは、市販されている数が少なく商品が限られています。一般的な桐製のウキでは、やや重さと感度に難点があります。ダンゴ専用の細身カヤ素材がベストです。
※写真左は非自立タイプ/右は自立タイプ

玉ウキ

集中力があり、微妙なシモリアタリを取ることのできる中級者以上なら、玉ウキが扱いやすいと思います。軽量で小さく風に強いため、よく飛びます。遠投するならこれが一番です。しかし磯で使うような円すいウキは、見た目より自重がありますし、浮力が殺されているので、潮の流れで仕掛けに角度が付きます。紀州釣りでは仕掛けを直立させたいので、軽量かつ余浮力を残した専用ウキが必要です。最近では紀州釣り専用の玉ウキが発売されているので、それを使えばいいと思います。

寝ウキ

通常は海面に横たわっていますが、アタリが出て魚がウキを引くと、ピョコンと直立するという面白いウキです。ポピュラーではありませんが、一部に熱烈なファンがいます。アタリの表現力という点ではピカイチですが、微妙なタナ加減や前当りの表現力となるとどうでしょうか。使ったことはありますが、簡単なようで意外と難しい?ですね。タナを取るためにオモリを打つ必要がない、という紀州釣りの特徴から生まれたウキです。

初めての方にお勧めするウキ

初心者なら棒ウキの方が、アタリもタナも取りやすいはずです。ダンゴ専用の自立ウキが手にはいるのなら、この方が扱いやすいと思います。しかし手に入らなければ非自立ウキでもかまいません。上記にも書いたようにメリットは多々あります。ただし0.5号以上のオモリ負荷のあるウキは必要ありません。

素材としてはカヤ製が一番です。浮力は2~3Bぐらいと、潮の速いときや深場用に0.5号があればとりあえず間に合います。磯で使うのなら上部に浮力を残したウキの方が扱いやすいのですが、紀州釣りは静かな湾内の波止で釣ることが多いので、感度に優れたスリムな形状がお勧め。

竿は磯竿1号程度が標準です。チヌ調子の0.6号や強めの1.5号など、自分の好みや手持ちのものでも結構です。長さは4.5mから5.3mぐらいが扱いやすいでしょう。ダンゴは道糸を引っ張りながら飛びますので、仕掛け操作に慣れない初心者なら、ガイド抵抗の少ない外ガイド式の方が、始めは扱いやすいかも知れません。

リールは2~2.5号を150m巻ける小型スピニングリールがいいでしょう。道糸は細い方がよく飛びますし、さばきやすいのでナイロン2号をお勧めしますが、不安なら2.5号でもかまいません。風の強い日は細くするなど、使い分ける方法もあります。またこの釣りには棒ウキならサスペンドタイプ、玉ウキならフロートタイプが向いていると思います。

ハリスはフロロカーボン1.5号で充分です。鈎は標準的なチヌ鈎1~4号くらいをエサの大きさによって、使い分けるようにします。もちろん好みで伊勢尼などに替えても結構です。

HINT
  • ウキ止めは必ず2ヶ付けること。一つは水深表示、一つはウキ下設定用です。ハリスは約1.5ヒロ程度取り、中間に仕掛けを馴染ませるための小さいガン玉G2~G5程度を打ちます。ウキ浮力の微調整も兼ねています。カラマン棒はウキの全長分プラス少しサルカンより離して付けること。
  • 遊動用ウキ金具はSICなど滑りのいいものを使うこと。スムーズな落下はタナの深い紀州釣りではかなり重要。
  • カラマン棒は市販品でもよいが、ウキゴム2ヶとヨージで作れる。
紀州釣りの命「ダンゴ」のレシピに付いては次章にて

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