紀州釣りだよ3

釣りのステッカーとTシャツの音海屋
シンプルだが、それだけに奥の深い紀州釣り

紀州釣りは装備はともかく、釣りそのものはシンプルな釣りです。ダンゴさえ上手く作ることができれば、待望の1匹を手にしやすい釣法ですし、おぉ!という数釣りも夢ではありません。しかしシンプルがゆえに、きっちりと釣りをマスターする必要があります。基本をしっかり頭にたたき込んで下さい。

底をとる

紀州釣りは底を釣る釣りです。まずきっちり底をとることから始めましょう。これがいい加減では話になりません。一般的な底取りの手順についてはウキ釣りコーナーを一度読んで下さい。ダンゴ釣りでは、もう少しシビアに底を取る必要がありますので、初心者にも扱いやすい棒ウキを例に解説しましょう。

  • まずウキ止めを2本結びます。上側が水深表示用で、下側が正味のウキ止めとなります。上のウキ止めはズレ防止にもなりますので、面倒くさがらず必ず付けること。潮の干満で水位は変りますので、時々チェックすることが肝心です。
  • ダンゴ釣りには底取りオモリは必要ありません。まず大体の水深を想定します。その水深分より、やや浅めにウキ止めを仮止めします。鈎をダンゴでくるんだら仕掛けを、狙ったポイントに投入して下さい。※ダンゴが上手くばらけない人はオモリでやろう。
  • ウキが沈むはずです。トップがちょうどいい加減になるまで、ウキ止めを二つまとめて上げて下さい。ウキが水面下に見えるようなら、微調整で済みます。見えないようなら、かなり予想が外れていますから、ぐいとウキ止めをずらしましょう。馴れれば一発で決まるようになります。
  • 投入したウキが始めからぷか~と浮いているようなら、ウキ下を深くしすぎたのです。ウキ止めをずり下げ、いったんウキを沈めてから再度調整します。
  • はい、これで底が取れました。鈎と海底がすれすれになっているはずです。これを「底とんとん」といい、このまま釣る方法もあります。
  • 次に鈎を底から少し切ります。一般的には5~10cm程度です。二つあるウキ止めの下側を5~10cmずらしましょう。鈎はその分海底から離れます。これがチヌを狙うタナ~シビアですね。いよいよ釣り開始です。

釣りの手順

底が取れた時点で、底取り用のダンゴがいくつか海底に投入されていると思います。初心者なら10個ぐらい入っているかも知れませんね(笑)気にする必要はありません。そのダンゴがコマセになって、チヌを呼ぶポイントを作るからです。

  • まず想定したポイントの周辺にダンゴを10個ばかり投入して下さい。ポイントより沖目、半円状に打ちましょう。これが遠くからチヌをじっくり寄せてくるコマセになります。
  • どんな釣りでも、手返しは重要です。アタリが出ないと、どうしてもダンゴの投入回数が減ります。これでは釣果がおぼつきません。早からず遅からず、いいリズムで投入を続けることが第一。
  • エサ取りが多い時期は、サシエが持たないと思います。エサ取りに強いコーンや丸貝などに変えると、今度はエサ取りのアタリも出なくて、退屈になる人もおられるでしょう。こういうときは二つの考え方があります。エサ取りに強い餌でじっくり本命を待つか、食い込みのいい餌でひたすら手返しで勝負するかです。笑魚は後者です。
  • アタリはウキの変化で取ります。ちょんちょんつつくようなアタリはエサ取りだと判断してもいいでしょう。チヌのアタリはまず前当り、それから本アタリというパターンが多いものです。ですからこの前当りを見逃さないことです。もぞもぞという前当りとか、ウキのトップを少し押さえる前当りなど、日や餌により様々なパターンがあるはずです。この前当りを見逃してはいけません。
  • 前当りが出たら、じわりと糸ふけを取って本アタリを待ちましょう。ウキが消し込まれるのを待って合わせると間違いありません。いわゆる向こう合わせです。アタリを取るのが上手くなれば目盛り3つで合わせるとか、早アワセで合わせることができるようになります。鈎を呑み込まれないメリットがあります。
  • ウキが水面下でしもったまま変化しないときがあります。そのまま加速して消し込まれるのを待ってもいいですが、待ちすぎて鈎を吐き出されてしまうときもあります。こんな時は聞きアワセです。糸をじわ~と張って下さい。魚の重みが乗ってきたら、竿を立ててしっかり合わせましょう。

仕掛け投入テクニック

紀州釣りには不可欠のテクニックです。一般のウキ釣りに役立つこともありますから、必ず身につけて下さい。これを知らずに紀州釣りをしている人も多いね。

  • ダンゴを右手に取り投入の用意ができたら、左手で持つ竿の穂先を、海面に少し浸けて下さい。リールのベールはオープンにしておくこと。
  • 穂先を海面から出し入れするように、上下に振って下さい。道糸が水の抵抗で繰り出されるはずです。
  • 繰り出す糸の長さはポイントまでの距離と水深分~ウキは海面に浮かべておきます。
  • これで準備完了。ダンゴをポイント目指して投げ込みます。バラケ加減はともかく、ガイドやリールの抵抗で、自爆することだけは防止できます(笑)
  • ダンゴを投入したらすぐにまた穂先を海面に浸けて、大きく1~2回しゃっくて糸を繰り出しましょう。こうしておくことでダンゴに竿から糸を繰り出す抵抗を与えませんし、ウキが手前に寄って来ることも防きます。普段のウキ釣りでも役立つ技です。
  • ダンゴが海底に落ち着き仕掛けが馴染んだら、余分な糸ふけを巻き取ります。

底にハリスをはわせる

ウキ下を長く取り、ハリスを海底に這わせて釣る釣りを、はわせ釣りといいます。食いの渋い冬場のテクニックですが、最近は紀州釣りに限らず、チヌ釣りの必須テクニックになってきました。年中これ一本というチヌ師も多いようです。チヌ釣りを目指す方なら覚えておきましょう。

  • 這わせますので、ハリスを余分に長く取ります。
  • いったん底取りをして、きっちり水深を測ります。
  • ハリスを這わせたい長さ分だけ、ウキ止めを上にずらします。
  • 鈎や餌の重みがウキに掛からなくなり、トップが浮き気味になるので、小さいガン玉で微調整します。この釣りに馴れれば、浮力0の玉ウキを使って、ガン玉を打たない完全フカセでやっても面白いでしょう。
  • 通常1~2ヒロぐらいずらす人が多いようです。下記の理由により、潮の速いときはずらし幅を大きくした方がよいかも知れません。釣り方は通常とまったく同じです。

はわせ釣りが釣れる理由

魚に聞いても応えてくれませんので、必ずしも理由は分かりませんが、私なりに推測することはできます。図をご覧下さい。

通常、サシエがコマセの効いたポイントから外れると極端に喰いが落ちます。ハリスを海底に這わせると、海中に余分に糸ふけが出た状態になります。これだと、ウキが流されてもサシエが移動しにくくなります。つまり作りあげたポイントから外れにくくなるわけです。潮が速いと仕掛けが浮いてタナズレの原因になりますが、これも防ぐことができます。同時に餌が海底に着いており、チヌの警戒心が薄れるということも考えられます。この釣りでは、釣り方に似合わない明快なアタリが出ますが、チヌが餌を充分に食い込んで走っているからでしょう。逆にいえば糸ふけが出ているため、前当りは出にくい釣りです。

釣果を上げるツボQ&A

ポイントの選び方は?

  • ずばり紀州釣りで実績のあるところです。釣り人の長年の経験と検証の結果ですから、大きな間違いはないはずです。しかし地方によっては、紀州釣りがあまり行われていないところもあると思います。そのような地方でしたら、まずチヌの濃い場所を選んで下さい。次に潮のとろくて底がフラットの所がいいでしょう。根や藻が多いところは苦手な釣りです。足元は磯場でも沖が砂地なら面白いと思います。ただし遠投力が必要です。一般的には波が穏やかで、適度な水深のある湾内の波止というのがベストでしょうね。
  • 低水温期は、水深のある釣り場ほど水温が安定しますから、水深10m以上ある深場を狙うのも、一つの手です。誰も紀州釣りをしない(知らない?)波止でやったことがありますが、上記の条件を備えた釣り場でしたので、チヌの顔を拝めたことがあります。

潮が速くなってきました

  • 潮の抵抗で仕掛けが浮きます。仕掛けが浮くとダメな釣りですから、即座に対応しましょう。流れが速くないようならガン玉を下げましょう。
  • 速い流れなら重いガン玉の使えるウキに交換します。少しウキ下を深くとってもかまいません。

うぅ~釣れん…

  • 底を切って釣っている場合、ダンゴが割れサシエが飛び出た瞬間に、一番アタリがよく出ます。ですからダンゴの打ち返しをマメにすることが、釣果と比例します。アタリが出ないからと、ぼぉ~としていてはいけません。

エサ取りだらけでいやになります…

  • チヌだけに効くダンゴやコマセはありません。紀州釣りに限らず、およそコマセを使う釣りでエサ取りを嫌がってはいけません。エサ取りが居ないようなら、本命も難しいと考えるべきです。ですから頑張ってエサ取りを集めましょう。
  • 大型魚は潮下からじっくり小魚の動きを見ています。小魚が集まるところは餌場なのです。ですから時合いになると、小魚を蹴散らし突っ込んできます。騒いでいたエサ取りがピタリと静かになったら…本命が来ているはずです。

青物の大群です・・・

  • イワシやコノシロも困りものですが、アジは底に居着きますからやっかいです。事前にアジが釣れているという情報が入ったら、アミエビや集魚材を入れないことです。これだけでも大分ましになります。サナギだけでも充分チヌを寄せられます。一応集魚材を一袋持って行けばいいと思います。現場でエサ取りの活性が低いと判断したら、その時点で添加すると集魚効果がアップします。

ボラの群れが居着いてしまいました

  • ほほほ、ボラを寄せればチヌを釣ったも同然。不思議にボラの下にはチヌが居るのです。ボラの群れを散らさないよう気をつけて下さい。ボラを鈎に掛けてはいけません。ちょっと難しいですが、ボラのアタリはちょっと頼りないアタリですので、力強いアタリでなければ、向こう合わせで鈎に掛かるまでは待つことです。チヌならそれで良し、もしボラなら素早く強引に取り込みましょう。もたもたして暴れさせてはいけません。ポイントが荒れます。
  • ボラはウキの回りでうろうろしますから、体が糸に触れるスレアタリがよく出ます。注意して見ていると分かりますから、合わせないようにすること。またボラは軽い仕掛けほど、鈎によく掛かります。鈎のチモトにガン玉を打って仕掛けをふかせないようにするのも、ボラ対策になります。

水温が低く、エサ取り一匹いません

  • じっと我慢の一手です。チヌは耐寒性の強い魚ですから、寒さに弱いエサ取り達が出てこなくても、釣れる可能性は充分あります。ただし冬場に実績のある釣り場であることが条件、ダメなところはダメですからね。オキアミやボケのように食い込みのよい餌を使って下さい。また水温の低い時期は、夏場よりも遅アワセにして、じっくり餌を食い込ませるようにして下さい。はやって合わせると、素鈎を引くことになります。
  • いずれにせよ、集魚力を高めたダンゴ投入をマメに繰り返すことです。居たら必ず喰ってくるはずです。特に日が昇って、水温が少しでも上昇するとチャンスがあります。チヌとはそういう魚です。気まぐれで潮任せのグレよりは、狙って釣りやすい魚なのです。

アタリが出ないので、ウキを流してみましたが…

  • ダメです。ウキを流しても釣れるのはエサ取りばかりのはずです。ウキフカセとは釣りの仕組みが違いますから、潮下を釣っても釣果は期待できません。ひたすらピンポイントを攻めるのが常道です。

アタリが小さい~合わせたらいいのかどうか?

  • 水温の低い時期によく見られます。アタリが出ているのに気づかないこともあります。波気がないようなら高感度のウキと交換して下さい。アタリの表現力が高まります。道糸を細くするのも同じ効果があります。ハリスを落とす必要はありません。ハリスを落としても、そんなに食い込みは変らないはずです。
  • アタリに確信が持てないときは聞きアワセをしてみます。乗ったらしめたもの!その日のアタリのパターンが分かりますから、後は積極的に掛け合わせていけばいいでしょう。

風が強く、ウキがポイントから外れてしまいます

  • 道糸を打ち返し修正する技を身につける必要があります。馴れれば難しくないですが、コツが必要です。ウキ釣り編で詳しく解説しますから、それを参照して下さい。
  • とりあえず道糸を細くする、短いトップのウキ(自立式)を使う、ドリフトタイプ(高比重)の道糸を使う、穂先を風上側に向けておく、海面に突っ込んでおくことなどで、多少の軽減は可能です。

仕掛けに関する注意は…

  • このコーナーで書いたことを基本に、自分流にアレンジしていって下さい。軽い仕掛けで釣るのが基本です。
  • ダンゴには砂が入っていますので、どうしてもハリスが傷みます。適当にハリスを切って使いますが、その都度、底を取り直すのを忘れないように。1ヒロを切る前に新しいハリスと交換しましょう。フグに噛まれて傷つくこともあります。仕掛けを回収するたびに、ハリスを指でしごいて傷をチェックする習慣をつけて下さい。

笑魚はもう数年以上、この釣りから遠ざかっています。たまに新しいネタも仕入れていますが、基本的に釣り方に大きい変化はないようです。紀州釣りは落とし込みと並んで、チヌを手にする確率の高い合理的な釣法です。見事チヌを釣り上げてください。

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