これぞエビで鯛を釣る釣法…
万年B級笑魚ではありますが、ことエビまき釣りではいまだボウズを食らったことはありません。対象魚を選ばないと云う点でオールマイティな技ですが、高価な生きエビを使いこなすにはそれなりの経験も必要です。本章ではスズキ、メバル、チヌの業種別に必釣メソッドを解説します。
エビまき釣りの手順
釣り場に行く前にチェック
エビブクの電池の寿命は大丈夫ですか?途中で切れると酸欠でエビは昇天します。小さすぎるエビブクより、大きいエビブクの方がエビの鮮度は保たれます。容量はできる限り大きいものを。
気温は高くありませんか~エビに最適な水温は15度前後です。夏場でしたら氷で冷やすような工夫が必要です。エビタンク付きクーラーでしたら低温が保たれますが、普通のエビブクでしたら、氷をビニールに入れて水に浮かべるといいでしょう。溶ければ補充するようにします。
まず底まきを準備
肝心な点ですが、仕掛けのセットは後です。エビに限らずマキエを使う釣りは先ずポイントづくりから始めるのが大鉄則です。マキエが効くまでの時間は、ポイントやその日の海の状況で変わりますので一概にいえませんが、まずそこそこの時間がかかると思っておいて間違いありません。
まず底まきの準備です。エビまき用の竿(不要な投げ竿など)にカゴをセットします。カゴにオモリを着けますが、直接ではなくハリスをいったん結んでからオモリをつけます。そうすれば海底からハリスの長さ分上で都合よくエビがまかれます。準備ができたらたっぷりカゴにエビを詰め込んで、海中に入れます。オモリが海底に着いたらしゃくります。三回程度やればいいでしょう。
ハリスの目安
水深によります。深ければ長く浅ければ短くします。一般的な波止なら1ヒロ前後でいいでしょう。
対メバル戦術
メバルは根についていますので、そのポイントを直撃するようにまきます。事前の情報入手が必要、ケーソンよりはテトラの方が魚影が濃いものです。
対チヌ戦術
中層を回遊している魚ですので、メバルよりはエビをまく層を上にします。
対スズキ戦術
スズキにも底まきは有効ですが、水深の浅い釣り場でしたら底まきは不要。
いよいよ仕掛けをセット
エビまき釣りはウキ仕掛けで釣ります。対象魚で竿の強さを変える必要がありますが、チヌ竿のような柔らかい胴調子の竿がエビまき釣りには似合います。
ウキ釣りですから道糸はできる限り細くして下さい。風に強く水切りがよくアタリが出やすいのです。ハリスは状況で使い分けます。障害物のない釣り場なら細く、テトラのような障害物の多い釣り場なら一回りアップ。
ウキは好みが分かれますが、エビまき釣りには棒ウキがいいでしょう。深いタナが探れるよう誘導仕掛けにします。感度のいいウキに目がいきがちですが、気象の変化が激しい海ではある程度自重があるウキが使いやすいものです。私感ですが、細身のチヌウキよりはグレ用の棒ウキがこの条件を満たしています。※写真は釣研製「列島フカセ」笑魚愛用の一品でした~生産中止。
ウキのオモリ負荷は水深で変えます。2ヒロ程度でしたらB~3B、4ヒロ前後でしたら5Bもしくは0.5号、それ以上深いタナでしたら1号といったところですが、現実的には4ヒロ以上深いタナを攻めることはあまりありません。マキエがその水深までなかなか効かせられないからです。
対メバル戦術
道糸1.5~2号、ハリス0.8~1号)状況でランクアップ
対チヌ戦術
道糸2号、ハリス1.2~1.5号)状況でランクアップ
対スズキ戦術
道糸2~2.5号、ハリス1.5~2号)状況でランクアップ
さぁ~上まきをしよう
風の強い日は必ず風を背中から受ける釣り場を選びましょう。これはジャンルを選ばず釣りの鉄則です。向かい風ではどんな名人でも釣りになりません。
まず潮の流れを見ます。波が流れているように見えるのは風の影響です。海中の潮の流れとは違います!気をつけて下さい。海中に漂っているゴミなどを観察して下さい。風の方向とは関係なく流れが分かります。分からなければティッシュをちぎって投げて下さい。浮遊物は風の影響を受けますが、ティッシュは海中を漂うのですぐ分かります。流れが分かりましたか?では上まき開始です。潮の流れの上流に向けてエビを飛ばします。杓をよく振ってエビを気絶させておいて下さい。
潮が速いほど潮上に向かって飛ばします。ビギナーが思っているよりかなり潮上にマキエを効かすのがツボです。でないとサシエとマキエを合わすことができません。マキエの釣りは、鈎のあるところとマキエが流れているところを上手く合わせることで魚を食わせるのです。潮が動いてなければ簡単です。ウキを入れるところに、マキエをすればいいでしょう。ウキ2投に対して上まき1回のペースでマキエを効かせて下さい。底まきは1時間に1回程度忘れずに。潮下からやがて魚がマキエを嗅ぎつけやってきます。
タナをあわせる
まず2ヒロぐらいで様子を見てみましょう。早速アタリがあって釣れればそのタナで続けましょう。活性が高いときは、アタリが出てもウキが引き込まれず、ぱたっと倒れるような仕草を見せるときがあります。こんなときは魚がマキエに興奮してうわずってきていますので、すぐウキ下を浅くして下さい。
アタリも出ず餌が取られもしない…。魚がいるはずならタナが合っていません。アタリがでるまで半ヒロ(矢引)ずつ深くしていきましょう。4~5ヒロ以上探ってもマキエが効いていませんので、今度は反対に上げていきます。この繰り返しです。
潮が速い時は仕掛けが斜めになるために実質的なウキ下が浅くなります。そんなことも考えながらウキ下を調整します。風が強くなったり、潮がどんどん速くなってきたら仕掛けを落ち着かせるためにハリスの中間にガン玉オモリを打って下さい。G2~G5ぐらいを打ちたすと仕掛けが馴染んで安定します。仕掛けが重くなりますので、必要に応じてウキをオモリに合わせて交換します。
ポイントを読む
タナを変えても餌取りのアタリすら出ないのなら、よほど海の状態が悪いのか、サシエとマキエが合っていないことが考えられます。海の状態が悪いときは帰って一杯やった方がいいですが。
釣り始めは足下からやるのが鉄則です。通い込んで知り尽くした釣り場なら別ですがまず足下を攻めるのが基本、当たり前ですが釣りやすいのです。その次は徐々に沖を攻めていきます。しかし都会の波止の場合、あまり沖を攻めてもいい結果は得られないことが多いということを忘れないようにして下さい。魚が居着くようなポイントが少ないのです。
よほど沖を攻めるか、釣り座を移動する以外、マキエを投入するポイントを変えてはいけません。同じ場所に投入しているからこそマキエの流れを推測できるのです。あまり変えると訳が分からなくなります。
海中の流れは複雑です。なかなか思ったようにマキエは流れて行きません。ここらへんかな?と思ってウキを入れても実際は全然違うところへマキエが流れていることもあります。そこで魚は餌を食っているわけですから、当然釣れないと云うことになります。だからマキエ投入点を変えずにウキの投入点を変えるのです。もっと潮下、沖とポイントを変えつつ攻めます。
やったぁ!喜ぶのはまだ早い
エビまき釣りは数を釣る釣りなのです。そのため高価なエビをまくのです。手際よく取り込みましょう。もたもたしていると折角集まった群が散ります。メバル狙いでもエビまき釣りにはチヌやスズキ、グレがよく掛かりますから玉網は必需品です。魚影が濃くすれていない釣り場だと、エビに興奮してメバルがどんどん浮いてくることがあります(=うわずる) 。半ヒロぐらいで爆釣する時です。普段シビアな釣りばかりしていると、こんな時深く釣りすぎて却って失敗する事もあります。田舎の海岸線で釣りをするときなどは、このことを思い出しましょう。
取り込んだら魚や仕掛けの処理は後です。すぐにポイントにマキエを2、3杯投入して下さい。マキエは絶対に切らさないということが大事です。折角集まった群でもマキエがとぎれると何処かへ行ってしまいます。マキエの切れ目は縁の切れ目です。
エビまき釣りの道具仕立て
糸の太さ等は文中を参考にして下さい。生きエビを使うので鈎は吟味して下さい。
- メバル→メバル専用8号程度
- チヌ→生きエビ専用もしくは細地チヌ
- スズキ→細地チヌもしくはチヌ3号程度
タックルバランスを覚えよう
仕掛けというものはバランスが大事です。ウェルバランスにすることで仕掛けは最強の強度を発揮します。笑魚の仕掛けは、一般的な入門書よりかなり細糸志向と思います。しかし釣り場の障害物さえなければ、かなり大きい魚でも必ず取り込めるはずです。弱い糸には弱い鈎、竿をセットするのが仕掛け作りのツボです。投げ竿に細ハリスだと一発で切れますが、チヌ竿だとショックを吸収してなかなか切れません。 鈎にも同じことがいえます。細ハリスほど弱い細地の鈎を使って下さい。逆に強い仕掛けを作りたいときは弱いところを作らないようにすることです。必ず弱いところに破綻が来ます。
釣果を上げる秘訣は?
仕掛けを作る点で気をつけることは?
- マキエをする釣りの原則として、ハリスは長く取って下さい。本当は1ヒロ以上必要です。理由は後日解説しますが、長ければ長いほどサシエとマキエをあわせやすいのです。
- 長くなるほど扱いにくくなりますので、ビギナーでしたら1ヒロぐらいがいいでしょう。糸が切れにくくなるメリットもあります。
ガン玉の打ち方は?
- 上記と同じ理由ですが、本当は打たない方がいいのです、打たない方が仕掛けが軽く海中を漂っているマキエの層と重なる確率が高くなります。しかし速い流れや風が強くなると、仕掛けがうまく流れに馴染まなくなります。そのためオモリを打ちます。軽めのオモリを打つのが原則です。
- できればハリスに1個打つよりはもっと軽いオモリを分散して2個打つ方がよく馴染みます。例)B×1個→G2×2個
ウキの負荷調整は?
- 市販のウキは表示されてあるオモリ負荷より余分に浮力が付けられています。例で云うと0.5号のウキでしたらBぐらいのオモリは余分に乗るはずです。
- ウキのトップと本体の継ぎ目の部分よりやや上の部分に水位点が来るぐらいに、追加のオモリをサルカンの上にでも打って下さい。できるだけウキを水中に沈ませて使うのがコツです。感度がよくなり風にも流されにくくなります。
なかなかアタリが出ません…
- エビまき釣りではウキにばかり注意を払っていてはいけません。ウキなど魚が食ってくれば勝手に沈んでくれます。それよりひたすらマキエがどこに流れて行っているか想像して下さい。あっちかこっちか?もっと深いか浅いか?この洞察力の差が釣果の差なのです。
メバルが1匹釣れましたが、後が続きません…
- 群の中でもうわずって来た奴を釣った可能性があります。ホンの少しウキ下を深くしてみましょう。下で潜んでいる群を狙うのです。
浅いタナでガシラ(カサゴ)が釣れました…
- 普段底でしか釣れないガシラが釣れたということは、マキエ効果で浮いてきたのです。日没でしたらガシラも浮きます。
- よくマキエが効いていますので、魚が上層に集まって来ています。すぐタナを浅く設定して下さい。
エビがすぐに死んでしまいます…
- エビ生かしが小さすぎませんか。できる限り大きいものを選んで下さい。泡の出るストーンも使っていると目詰まりしてきますから、新品と交換して下さい。気温が高い時期なら冷やすことも忘れずに。
餌取りばかりでいやになります…
- 餌取りは釣果のバロメータです。嫌がってはいけません。餌取りのいない日は釣りになりません。餌取りの群のやや潮下を釣って下さい。大体そこらへんに本命がいるものです。
- またスズキやチヌがくれば一瞬にして餌取りの姿は消えます。消えたときが時合いですから集中して下さい。
シラサが沈まない~ブツエビの撒き方は?
シラサエビを上まきの際シャカシャカ振ってもやっぱり沈みません!海面近くを泳いでいるのが見えます。それとブツエビを底まきする際は、一般的に習性上シラサよりも、上のタナで撒いた方が良いのでしょうか? 例えば3ヒロのタナを攻める場合、2~2.5ヒロでブツエビを底まきする~仕掛けとの同調を考えると、そっちの方が良いような気がするのですが…
- 振り方が弱いようです。気絶させなくてはいけません。仮死させるために手でじんわり握ってから撒く人もいます。いずれにせよ深いタナには落ちていきませんから、底まきを掛け、上下にサンドイッチさせマキエの層を作ります。立体的なマキエの層を作ることで、ポイントを作るわけです。
- メバルの場合でしたら、底まきはまさに底へ撒きます。つまり根についている魚ですから、この底まきで呼び出すわけです。浮かせた魚を上撒きで仕留めます。メバルの場合、深釣りすると数が出ません。浮かせて釣るのが腕の見せ所です。
- スズキ狙いでコマセがシラサなら、遊泳層にダイレクトに底まきを掛けるのは、自分の経験からも効果的です。しかし、ブツエビが入手できたら特に底まきを掛ける必要はないでしょう。ブツエビなら底めがけて泳いでいきますからね。スズキは根につく魚ではありませんから、想定したスズキの遊泳層にエビが届くと判断できたら不要です。むしろ手返しを優先しましょう。喰いが立つとマキエに突っ込んできますから。
- ブツエビが入手できるのは冬です。冬は風が強く二枚潮になりやすいものです。こんな時は底まきを中層で掛ける手も有効です。覚えておいて下さい。