磯釣りへのいざない

釣りのステッカーとTシャツの音海屋
磯釣りへようこそ

最近は若い磯釣りファンが増えています。色々なジャンルの釣りがありますが、野趣あふれる釣りといえば磯釣りが一番ではないでしょうか。潮が飛ぶ南海の荒磯あるいは風光明媚な田舎の海岸線で過ごす一時は、喧噪の中で過ごす都会人には魅力です。加えてゲーム性の高さ、大物と出会えるチャンス、自分一人の技だけがたよりという男らしさが、若者の気を引きつけているのかも知れません。この章では磯へ上がるまでのアウトラインをご紹介します。

フィールドが釣りを作る

猟も漁も同じ読みです。獲物を追いかけるという点ではどちらも同じです。都会に住む現代人には忘れられつつある言葉ですが、釣りはそんな狩りの本能を満たすもっとも手頃な遊びです。その中でも磯釣りは、古代から人間のDNAに刻み込まれている狩猟本能を、もっとも呼び起こさせてくれるものの一つです。 では磯釣りは他の釣りと、一体どの点が大きく違うのでしょうか?

まず一番違うのは、磯というフィールドが波止釣りのような人工的な都市環境で遊ぶ釣りではなく、太古そのままの地形、自然の気象ともろに対峙する釣りということです。渓流のアマゴやイワナを追いかける釣りと並んで、もっともアウトドア性の高い釣りでしょう。また、どんな釣りにも要求されることですが、海そのものに対する知識、特に潮を読む目が重要になります。また都会の波止とは比べものにならないほど、生物相が豊かですから、博物的な魚類知識も要求されます。カッターナイフが危ないなどと云うアホで柔な人種はいませんし、アウトドアという点でも、ファッション的なライフスタイルの入り込む余地はありません。ひたすら釣る、魚を掛けることに執念を燃やす釣りなのです。

外界に面した磯は気まぐれな気象をもろに受けるため、万一遭難事故に遭えば命に関わることがないとはいえず、ライフジャケットは必需品です。都会のようなシェルター環境ではありません。あくまでも自己責任です。しかし磯釣りをやればすぐお分かりでしょうが、危機管理能力が高くなり、波止釣り師よりも天候に対する関心、足場あるいは逃げ場の確保に注意を傾けるようになります。渡船屋も事故を出すと大問題になりますから、危ないと思えば決して渡船を出しません。そういう意味では、見た目より安全です。ファミリー連れでも、行く磯さえちゃんと選定すれば、一部の波止より遙かに安心です。釣りだけでなく、1日愉しい磯遊びができるででしょう。

近場から絶海の孤島まで…

磯にも多様な風景があります。チヌやメバルが濃いような磯は静かな内湾が多く、松緑が繁るような風光明媚な所は旅行がてら行くと、いいリゾートになります。国道から坂を下りたらすぐ釣りが楽しめるような手軽な磯もありますし、陸地を遠く離れ太平洋の本流に位置するような絶海の磯もあります。写真は東シナ海に浮かぶ無人島「男女群島」です。70cmオーバーのグレ、石鯛、磯の帝王といわれる巨クエを追って、全国の大物釣り師が通う特級磯です。釣り人は自分の想いを、それぞれの磯にかけて旅しているのです。

魚影の濃さは都会の波止とは問題になりません。もちろんボウズという哀しい日もありますが、一日中憎きエサ取りの厚い壁が突破できないと云うようなことは、波止では考えにくいと思います。それだけ魚が濃いのです。大物と出会うのは腕だけでなく運もありますが、それだけの可能性を荒磯は秘めています。磯釣り師なら何度となく糸を切られて悔しい想いをしているはず…。さぁ、一緒に紺碧の海に穂先が引き込まれる夢を見ましょう。

上物と底物がある

上物のスーパースター「グレ」

北風が厳しくなる季節になると、寒グレ寒グレと騒ぎ出す連中がいます。1年中釣れる魚なのですが、水温が低下する冬場こそ大物が狙えるベストシーズンなのです。関東ではメジナと呼ばれますが、ずばり上物界のスーパースターです。その強烈な引き味は、同じサイズならチヌの倍と考えていいでしょう。始めてグレを掛けたら、その引きの強さに戸惑うはずです。普段皆さんが波止でお使いになっている磯竿は、このグレを対象魚として開発されています。塩分濃度の高い潮を好む魚ですから、外洋に面する磯が釣り場となります。磯に居着く魚ですので、残念ながら釣り荒れのため近年魚影が薄くなっています。紀州では40cmを釣れば万々歳で、関西では50オーバーが釣り師の大きな壁になっています。関東では磯釣り人口が少なく、離島が多いせいか関西よりは事情がいいようです。ゲーム性が非常に高い釣りで、潮を読む目を非常に要求されます。つぼにはまるとチヌより数が釣れる魚ですので、これ一本という釣り師も多く、全国で競技会が行われています。

身近な好敵手「チヌ」

チヌ、関東でいう黒鯛は波止釣りのスーパースターですが、磯でもグレと並ぶ千両役者です。潮の甘い海を好む魚ですから、静かな湾内でも釣れます。日本海側や瀬戸内では一番人気です。回遊する魚ですから、磯に居着く魚と違って釣り荒れの影響が少ない魚といえます。手軽な波止でも充分釣れますが、磯に潜むチヌは泳ぐ力が強く、一味違う釣り味を味わせてくれるでしょう。将来グレ釣りをめざす磯釣り志望者にも、近場のよい好敵手になってくれるはずです。グレより有り難いところは、50オーバーいわゆる年なしが、初心者にもかなりの確率で望めるところです。ゲーム性もグレに引けをとりません。グレほど潮の善し悪しを問いませんから、腕さえよければグレよりも、良型と出会える確率が高いはずです。シーズンを通して狙えるところから、春・秋はチヌ、冬はグレと釣り分けている釣り師も多いですね。

幻の魚「石鯛」

底物ではもちろんイシダイがビックスターです。幻の魚と呼ばれていますが、どうしてどうしてグレの60cmオーバーは離島にでも行かない限り無理ですが、イシダイでは近場でも珍しくありません。もっとも10連続ボウズというのもよく聞く話ですが(笑) こいつの仲間にはさらに巨大化するイシガキダイがいます。20号ハリスを掛けて挑む男のロマンです。この釣りの難点はグレ以上に外洋性が強く、近場ではまず良型を狙うことは難しいことです。またエサが人間以上にグルメというのがやっかいです。何でも喰ってくれるチヌや、オキアミで充分というグレと違って、ウニ、ヤドカリ、赤貝、トコブシ、伊勢エビ、マムシといった具合に、金がかかるのです。安いエサで実績を上げている地方もありますが、まぁ普通はちょっと厳しいです(笑) それだけに、石鯛特有の縞模様が消えて、体色が銀褐色になった銀ワサ(♂)と呼ばれる良型の成魚を釣り上げることが出来たら、もう最高でしょう。

こだわりの魚種を追い求めて

グレ・チヌ・石鯛だけが磯釣りではありません。快速特急ヒラマサや狼とよばれるシマアジなど、青物専門の釣り人がいます。小物では釣り味がよく腕の差が出るメバルを追いかける人もいますし、大物では磯の帝王クエを狙い、タックルの限界に挑むチャレンジャーがいます。磯投げの専門家も居ます。マダイやアブラメはもちろんのこと、強引さでは石鯛をしのぐと云われるタマミ、イサギの親分コロダイの超大型を追いかけているのです。最近ではアオリイカ人気が急上昇しています。また未開拓のポイントを求めて、なんと磯まで遠征するアブラメ狙いの投げ釣り師もいます。どうですか、結構色々な釣りものがあるでしょう。こんな面白い釣りを見逃すわけにはいきません

ファミリーに親しんで欲しい

磯釣りという趣味、生き甲斐はその人のライフスタイルの中でも占める割合が多いようです。渓流釣りと同じくアウトドア性が高いからでしょう。健全なホビーライフなのですが「出世も家庭もさようなら、わたしゃ釣りだけが人生よ~」こう云いきる人も少なくはないちょっと危ない?遊びです。蒼い海と空に身体一つで向き合っていると、ストレスの多い日常生活が面倒になってしまうのですね。価値観が変わるというのでしょうか。しかも近年は女性の参加人口が多くなりました。

私はぜひ女性やジュニアに磯釣りを経験してもらいたいと思っています。波止釣りに女性を連れて行っても、なかなか釣れないと飽きられるのが落ちで、同行の亭主や彼氏は気を使うものですが、磯釣りならば朝から晩まで1日飽きないはずです。基本的なことさえ覚えれば、何かしら鈎には掛かってくれますし、寄せる波やほおに当たる本物の潮風は、くすぶっている日常の垢を洗い流してくれるはず。釣りは女子供だからといって、特別優遇してくれません。女性向きとされる筏釣りや船釣りに比べると、釣りそのものがハードです。それだけに、他のジャンルにない魅力を発見して貰えれば、ライフスタイルが変わり新しい自分を発見できるでしょう。愛する人々と同じ趣味を共有することは大きな喜びです。

ジュニアにも磯釣りを教えたいものです。昨今の都会に住む子供達はあまりにも自然にふれる機会がなくなりました。昔なら苦労して上った登山道も、いまでは車ですいすい~身近であったはずの海もいつしか灰色に…。自然に接する機会を奪ったのは、大人達の責任です。磯釣りだけに限るわけではありませんが、TVゲームや参考書にかじりつくだけの子供時代ではなく、自然の中で思い切り遊んだ想い出を与えるのは、私たちの世代の務めではないでしょうか。

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