どんな世界にも常套句あり
もちろん釣りの世界にもあります。釣りは相手が直接目に見えないため、なかなか思うようには成果が上がりません。それだけにフレーズもちょっと悲しいものが多いのです。でもこれを覚えると、いっぱしの釣り師気分になれること請け合い~
アタリ
魚がエサをくわえたこと(就餌)を知らせる信号=魚信(フィッシュオン/ヒット)です。このアタリこそ魚釣りの醍醐味です。ウキが沈んだり、竿先が引っ張られたり、手にびりびりと震えがきたりアタリは様々。表れるアタリの大小で「大当たりが出た」「小アタリで釣った」などと表現します。釣れないときは「釣れヘんなぁ」と軽く云ってはいけません。「アタリが…出ない……」と重々しく田村正和風にいうと間違いなく上級者に思われます。
ポイント
魚がいるだろう(釣れるだろう)と思われるところです。ここで肝心なのは、思われる=推測かつ希望である、ということです。「このポイントで去年は釣れたのになぁ」などというベテランの言い訳はあまりにも日常茶飯事ですので、初心者は耳を貸さないこと。
ばらす
魚を掛けたものの意外と大きかったり、釣具のトラブルで取り逃がすことです。「くそ~ばらしてもた~」釣り人にとっては悔しさいっぱいの瞬間です。他人の不幸は自分の幸福、この摂理は釣り場でも通じます。最大のライバルである友人が慰めます。さも気の毒そうな口振りで「ほんまに惜しかったなぁ~」目が笑うとるがな、目が…
エサ取り
根かかり・ボウズ・エサ取りの3つをさして、釣りの3大試練と云うほど釣り師に忌み嫌われるものです。代表としてフグ、ネンブツダイ、ボラ、小サバ、ハゲ、ヒトデなどがあります。大きいものではウツボ、サメ、エイ、ウミガメなどがあり対応に困り果てます。私が釣った餌取りの中には、弁当箱、傘、長靴、三脚、折り畳み椅子というのもありました…。さて完璧な100%ボウズの日によく使われる言葉として「エサ取りも釣れんかった…」という常套句があります。初心者の方は、いまから言い方をしっかり練習しておきましょう。
ぼうず
魚が全く釣れなかったことです。エサ取りなどの小さな魚を釣っても、まっとうな釣り人は釣ったとはいいません。あくまでも対象魚を釣りきらなかった時に使います。まぁ、毎日何十万人という釣り人がボウズを食らっているはずです。最悪のシーズンなどは「ボウズの連チャン」「またしてもボウズの嵐」「ボウズ街道お先にゴメン」とか、ことさらに大げさな表現を使いたくなるのが、釣り人の悲しい性(さが)です。
根かかり
根というのは海底の岩礁のことです。その根に鈎やオモリが引っかかっることを根かかりといい、最悪の時は高価な仕掛けが回収できなくなります。後述するボウズと並んで釣り人を苦しめる悲しい言葉です。極寒の風の強い冬の日、根かかりした仕掛けを引くと道糸が電線のように「ヒュ~ヒュ~」と風に叫びます。そんな時、寒さがひとしきり身に沁みるのは私だけでしょうか~
水温
魚は水の中で暮らしています。ですから人間が気温を気にするように魚たちも水温に敏感なのです。学者によると水温の1度の変化は気温の5度に匹敵するといいます。2,3度も急に変われば魚にとっては大変なことで確実に餌を取らなくなります。悲しいかな!釣り人のいう言い訳で一番多いのがこれなのです。
実際に温度を測ったわけでもないのに…「今日はあかん~水が冷たいわ」
プロの渡船屋もいいます。昨日も一昨日も釣れていなかったのに…
「昨日までよぅ釣れとったのになぁ、水温が急に下がったんちゃうか~」
タモ入れ
釣った魚を陸に揚げることを取り込みといいます。その魚が大きくて竿では取り込めず、別に用意した網ですくうことをタモ入れといいます。大物を掛けたと思い「タモ、タモ、タモ~」と絶叫、友人にタモを持たせて走らせたのはいいが、想像よりも獲物がずっと小さく、タモを出した途端すくうより先に竿の弾力でポンとはね上げてしまった、というのもよく観る波止の光景です。このときのフレーズは、釣り人が「うぅ~」友人が「くくくっっ」というのが多いようです。