競技の釣りに学ぶこと

釣りのステッカーとTシャツの音海屋

自称釣り天狗が通用するか

釣りも趣味が高じカンカンになってくると、釣りクラブに入ったり自ら仲間を集めサークルを結成したりするようになります。ある程度組織化された釣りクラブならたいてい上部組織があり、ここを通じて各種のイベントや催しへの参加を招聘されます。大手の釣り具メーカーや観光振興団体などがスポンサーになって、イベントや競技会が年中催されていますから、釣人同士の交流や腕自慢の場へ参加することができます。

競技会は腕前のバロメータ

囲碁や将棋、あるいはスポーツと同じで、人間は本能的に他人と競うことが好きです。釣りでも同じで自分の腕前にある程度自信が深まると、それを確認したくなるものです。競技会は皆同じルールに基づいてやりますから、実力のほどが簡単に分かります。もっとも釣りは、全員が同じ条件で競えるわけではありません。抽選やジャンケンで選ぶ釣り座の優劣が必ずあるからです。それでも競技会の上位は必ず名手と呼ばれる常連達が占めています。ポッと素人が出ても勝てるものではありません。やはり腕の差がはっきり出るのです。

私も以前ある磯釣りクラブに所属していた頃、かなり競技会には出場しました。ビックな全国大会だと、まず一次予選を突破しなくてはいけません。残念ながらいいところまでは行ったことがありますが、毎年予選落ちの憂き目でした。クラブのメンバーだけでやる例会や、交流を目的とした大会では嬉しい賞をいただいたりしたこともありますが、なんせ地方の一次予選でも一会場当り150人を越すような大会で、そこから5人勝ち残りという狭き門になると、腕もさることながらツキにも恵まれないといけないのです。まず抽選でいい磯を取らなくてはダメですが、私はくじ運が弱いのです。またいい磯に上がれても、大会ですので普段より人を多く乗せます。もう押し合いへし合いですから、かなり厚かましい性格でないと、思うような釣りはできません、ハハハ。

この緊張感に…しびれる

「我こそは~」と釣り自慢達が集う冠付の大きい競技会の雰囲気は、また格別です。ゴルフのコンペとは比になりません。私は若い頃スポーツで県大会などに出場したことがありますが、全く同じ空気です。会場にはのどかな釣り風景など全くなく、ぴりぴりした緊張感に満ちています。相手の気合いは伝わってきますし、時には敵意すら感じるときがあるぐらいです。ベテランは他のクラブの顔見知りと声を交わしつつ、相手から情報が得られないかと密かに腹を探っていますし、若い中堅クラスは道具のチェックをしたりしつつ精神集中を図っています。まだ不安が一杯の新米クラスは、先輩のアドバイスを聞き漏らさないよう一生懸命です。未明の船着き場は、釣人達の緊張と喧噪をはらんで夜明けを待つのです。

トーナメントの効用

競技会というイベントには賛否両論是非があります。否定論の中には、環境保護という観点からどうかという人もいますし、釣り本来の楽しみをそぐものだという方もおられます。私自身の意見はさておき、技術の向上という観点から見ると、競技会に出場することはとてもいい経験になります。何度か出場して厳しい結果を突きつけられると落ち込む反面、真剣に釣りというものを技術面からチェックするようになるからです。「あぁ~今日もボウズ」といって、大した反省もせず同じ轍を踏み続けるのが普段の釣りとするなら、あと一匹あと1グラムを追いかけるのが競技の釣りです。人により程度の差はあれ、飛躍的に技術が向上するはずです。

競技会から学んだこと

ということで、私自身がグレ釣りの大会(たまにチヌも)やトーナメントの予選会に出た経験を綴ると、皆さんの普段の釣りにもお役に立つかも知れません。磯のウキ釣りですので、ピンとこないところもあるかも知れませんが、釣りのエッセンスはどのジャンルの釣りでも共通するはず。わかりやすいよう箇条書きにしています。

装備がシンプルになり、手際よくまとめるようになった

競技会は時間との戦いでもあります。重たい荷物はまず身軽に移動できませんし、使わない装備・仕掛けは万一の予備を除いて全く無意味です。収納物をすぐ取り出せるようにしたり、たくさんの人の荷物に紛れてもすぐ分かるような目印を付けたり、ちょっとした工夫をするようになりました。

竿・リールが競技会では実用本位になった

本来、釣り味のいいチヌ調子の竿が好きでしたが、競技会では一匹でも人より釣らなくてはいけないので、腰が強く(取り込みが早い)操作性のよい竿と、巻き取り速度の速いリールを組合わせて使うようになりました。もっとも競技を離れたいまでは、軟調子と小型リールの組み合わせがやはり好きです。

仕掛けがシンプルになった

自分なりに仕掛けを工夫するのが好きでしたが、短い時合いの間にトラブると競技会では致命的です。超高感度な仕掛けや水中ウキ、2段ウキをよく使っていましたが、自然とシンプルでオーソドックスな仕掛けを好むようになりました。

仕掛けづくりが早くなり、結びが強くなった

もたもた仕掛けを作っていると、貴重な時間が過ぎ去ります。ですから素早く仕掛けを作る小道具や手順を考えるようになりました。また競技会では喰わせ優先仕掛けになりますから、自然と小鈎細糸を使うようになります。糸が切れるのはたいてい接続部ですから、結びの技術はとても大事です。色々な結び方の速度、強度、確実性などを検証し、自分なりに結論を出すことができました。

悪条件でも辛抱する釣りを覚えた

競技会ではクジによる渡礁順、あるいはジャンケンなどで釣り座が決められます。ルール上釣り座を移動できませんから、二級磯、向かい風、潮上、あるいは最低のポイントであろうが、与えられた釣り座で頑張るしかないのです。しかし、ある程度経験を積むと、始めての磯でも「あぁ、ここはあかん…」というのが分かりますので、集中力が持続しません。こんな時こそ勝負を投げない粘りが必要ですし、技術的には狭い範囲で少しでも潮のいいところ、的確なポイントを探す目を養うことが大事になってきます。

横目で人の釣りを見る習慣が付いた

競技会では並んで釣ることが多くなります。隣の釣り師は直接のライバルになりますが、それ以上に情報源でもあります。ですから食いの状況、ウキ下、ポイント、エサ取りの状況、群のサイズなどを横目で確認することができます。その情報は自分の釣りにも役立ちますし、相手が名手なら技を学ぶこともできます。

イメージトレーニング

競技会に出る以上いい成績を残したいものです。大きなイベントの開催時期、会場は予め決まっていますから、イメージトレーニングができます。水温が低ければ喰わせる仕掛けを考えますし、高水温時期でしたらエサ取り対策を考えます。潮の流れも釣り場ごとにずいぶん違うものです。じっくりその日の釣りのイメージを想定して、リールに巻く糸と持っていくウキを厳選する習慣が付きました。

釣りがマメになった

私は元々気が短い方ですから、釣れないとなったら早めに見切りをつけ、狙うポイント、タナ、仕掛けをすぐに変える方です。競技会に出るようになったら、ますますその傾向に拍車がかかるようになりました。いいのか悪いのか分かりませんが、人が釣っていないときにポツリと一匹釣るのは、いまでも得意です。

さて別に奨励しませんが…

釣りには色々な楽しみ方があります。束縛されない自由な時間を持てるのが釣りのいいところですから、トーナメント志向の釣りクラブへ入ることや、競技会に出ることを特にお勧めはしません。車の一般ドライバーとレーサーが異なるように、サンデー釣り師とトーナメントに出場しているような釣り師では、目的とする釣りの次元が違うのです。

しかし釣りの技術という意味では、彼らに学ぶものは大きいと思います。切磋琢磨する中から生まれてくる技術や道具は、やはり理にかなっています。競技は実力の世界ですから、怪しげな釣り理論など通用しません。以前、トーナメント常勝の磯釣り師の方と身近に接して話を聞く機会がありましたが、その釣り理論が明快かつ合理的、なにより分かりやすかったことが印象的でした。

都会の波止もトーナメント

当釣り道場へアクセスする読者の方は、そのほとんどが「魚と遊ぼ!」ではなく「魚に遊ばれてくやし~い!」負けず嫌いの方でしょう。私なぞ、万年B級釣り師でいまさら進歩の見込めないヘボですが、若い皆さんはまだまだこれからです。はっきり言って釣りはとても難しい遊びです。船釣りのように船頭さんが釣らせてくれる釣りならまだいいのですが、厳しい環境の都会の波止で工夫のない釣りをしていたら、貧果に明け暮れるはずです。人出で混み合う休日の波止は、釣果を競う競技会さながらです。さぁ獲物を仕留めるのは誰か~海を読み技を磨き優勝を目指してがんばれ!

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