海は誰のもの?釣りと漁業

釣りを始めて間もないMさんから、こんなお便りをいただきました。

「初めまして。最近釣りを始めたばかりですが、先日海岸でカレイ釣りをしようと思い、準備を始めてまもなく漁師に怒られました。まるで密猟者扱いの罵声を浴びました。確かに近くにサケの物と思われる網は仕掛けてはありましたが、邪魔になる距離ではないと思いましたが、漁師以外立ち入ることも出来ない場所なんて(海岸)あるのでしょうか。専門的な法律も交えて、海釣りを始めるに当たって気をつけなければいけない規則をお教え頂けませんか」

 

さぞ驚かれたことと思います。私も不愉快な思いをしたことは一度ならずありますし、疑問に感じたこともあります。一度この問題とルールを考えてみましょう。

海は誰のもの?

海は一体誰のものなのでしょうか?国有らしいということは知っていましたが、考えてみると、埋め立て事業などでは、国が漁業組合に補償料を払っています。ということは漁業者のもの~うん?分からなくなりますね。ということで、ちょっと調べてみますと、これには漁業法という法律が絡んでいることが分かりました。以下資料を書き出しますと…

昔は地元の漁師達あるいは免許を受けた網元のものだった

江戸時代は浦浜制といって「沖は入会、磯は根付」つまり沿岸漁場は部落総有の形で管理、沖合は共同利用ということで、地域の漁師達にそれぞれ解放されていたようですが、江戸時代後半期に至って総有漁場の中に、領主の特許による個人的な独占漁場が分化した状態が生まれました。明治8年に時の政府が海面の国有化を宣言し、これまでの慣行を打破しようとしますが、全国的に大混乱が生じ失敗。

やがて漁業権制度が発足

明治34年、漁業法が制定されました。最も特徴のある点は…
1)水面を分割所有または分割管理方式とせず、立体的重複利用的な法式とし、自由に発展する余地を残した(※早い話が私有を認めず国有化したということかな?)
2)漁業権制度を創設した。これは、漁業種類毎に漁業上の独占排他権を設けて慣行に合致させたものである(※私有を認めないかわり、その海域における独占的操業権利を認めたということね?)

その後幾たびかの改正を経て現在に至る

その後、戦前戦後何回かの改正を経て今日に至っています。つまるところ漁業権とは「行政庁から免許または許可を受けて一定の漁場において、特定の漁業を他人を排訴して独占的に営むことのできる権利を言う」ということです。すなわち「海は国有であるから基本的に立ち入りすることに制限はないが、その地の漁場は国から漁業権を免許された者の権利であるから、第3者が勝手に漁を行ってはならない」とでも解釈したらいいのでしょう。

河川の漁業権は分かりやすい

鮎釣りや渓流釣りでは、釣人と漁業権を受けた漁協との関係がはっきりしています。川は国有地ですが漁業権は組合のものですから、勝手に魚を釣ると罰せられます。ですから釣人(遊漁者)はお金を払って鑑札(許可)をもらって遊ぶわけです。これは海と違って魚(資源)が少なく、組合は国から稚魚放流など魚の増殖を義務付けられていますから、当然と言えば当然でしょう。しかし圧倒的に水域が広く資源が豊かな海ではどうなのでしょうか?

魚は誰のもの?

組合同士あるいは国同士のトラブルは、いわゆる漁業法や各種の協定を元に裁かれているようです。遊漁(レジャーの釣り)と言う言葉は法律用語なのですが、遊漁者に関する法的な規制等は、ちょっと調べた範囲ではよく分かりませんでした。あるいは細かく法制化されていないのかも知れません。そこで参考になる事例を調べたところ、ダイバーと漁業者とのトラブル例がありました。※1997年2月/宮古島ダイビング事業組合がダイビングフェスティバルの時に配布したチラシより、以下原文のまま

漁業権ってなんだろう?

宮古島は「ダイバー迷惑料問題」で揺れています。 伊良部漁協組合長はいまだに「ダイバーの存在そのものが漁業権の侵害」と主張しています。本当にそうなのでしょうか?

誰も知らない漁業権

こういう問題が起きた第一の原因は、漁業権をきちんと理解している人が誰もいなかったことです。漁業権とは魚などを捕ったり養殖する権利のことで、海を占有する権利ではありません。ダイバーは当然、漁をしている場所で潜ったりしませんから何か捕らないかぎり、漁業者が「ここで潜るな」などと言うのはすじ違いなのです。

漁業権の侵害は親告罪

漁業権を侵害したかどうかは「親告罪」といって、当事者が告訴して初めて成立します。そのためには納得できる証拠と資料が必要なのは言うまでもありません。告訴をしないで実力行使という自力救済を行うのはもちろん違法です。

受忍料・迷惑料

伊豆などで漁協がダイバーから取る料金はいろいろな名目になっています。「受忍料」とは、外部からの圧力を耐え忍んで目をつぶるからお金を出せということで「迷惑料」とは読んで字の如くです。いずれも補償金的な色合いが強く、払う側が納得しなければ、裁判など第三者の判断に委ねるべきなのです。そのためにはきちんとした資料が必要で、それもなしに「受忍料」を要求することは、暴力団のショバ代要求と変わらないと言えます。

海面利用料・入海料

古くからある漁村には「地先の海はおらが海」という思想が今だに根強く残っています。つまり「一村専用漁場」が慣習的に残っているのですが、これも戦後、現行漁業法の施行により消滅し、法に基づく権利関係が存続しているのに過ぎないという理由で「海面利用料・入海料」を払う根拠は見当たりません。「入海料」は当然ダイバーは生物採捕しないので論外です。

協力金・施設使用料

唯一、ダイバーが納得して漁協に支払えるとすればこの名目になります。ただし「協力金」については事業内容を明確に示し、双方納得の上でなければ難しいでしょう。 「施設使用料」とは漁協の管理する施設(例えばトイレや水道)を開放してもらい、料金を支払って使用するというものです。いずれにしろ、漁協がダイバーに対して何らかのサービスをし、その対価として料金を徴収するのが、社会的にも認められる方法ではないでしょうか。

さいごに

現在、伊良部漁協はダイバー1人当たり800円の「迷惑料」を要求しています。平良市漁協、池間漁協はこの問題に対して曖昧な姿勢です。宮古島ダイビング事業組合は、1漁協50万円ずつ年間合計150万円の「施設使用料」を支払うことを表明しており、交渉は決裂しています。今後、裁判で争うことになりますが、今回の問題は、沖縄県初の事例として他地域のモデルケースとなるだけに、宮古島ダイビング事業組合はこの問題を中途半端に終わらせたくないと考えています。ダイビングフェスティバルを機に、私たちダイバーにふりかかったこの問題を共に考え、ご支援をいただけますようお願いいたします。

宮古島ダイビング事業組合

なるほど~確かに一理あると思います。ダイバーと釣人とは遊び方も海の利用の仕方もずいぶん違いますから、一概に同じ立場であるとはいえませんが、気分的には賛同できます。

しかし、この手の話は政治的なことが絡むことも多いので、一概にいずれの立場を容認あるいは支持できるものではありません。また人間は感情の動物ですし、団体としての発言と個人としての行動に大きな違いがあるのも事実です。

例えば、ダイバーは生物は採取しない、とこのビラでは書かれています。しかし私自身ボンベを背負ったダイバーが、サザエを山ほど担いでいるのを目撃したことがありますし、アワビをいくら捕ったなどという話もくさるほど聞いています。釣人のゴミ放置と同じで、心ない一部の人間の行動で全体が評価されます。

漁業権の侵害

どうやら問題は海に立ち入ることではなく、漁業権を侵害するか否かということにあるようです。専門的には…

漁業権の侵害について

漁業権の侵害とは、具体的に次のようなことをいいます。

  • 現場に敷設または使用中の漁具や養殖施設を毀損(きそん)する行為
  • 現に行いつつある、またはまさに行おうとする操業を妨げる行為漁場内において、漁業権の内容と同じ漁具・漁法によって採捕または養殖する場合
  • 漁業権の内容となっている水産動植物の採捕を行った結果、棲息等を害し、その漁場の価値を量的または質的に著しく減少させる場合
  • 漁場内の土砂の採取、水質の汚濁、魚類の来遊を妨げる工作物の設置等、これらによって明らかに漁場価値の減損となる場合

以上のように、権利者の漁業を直接妨害することが明らかな場合は侵害行為となります。ただし、侵害行為があった場合でもこれを「容認」するか「排訴」するかは権利者に任されています。分かりやすく説明すると、例えば、第1種共同漁業権の内容となっているアワビ・サザエ・イセエビなどを漁業権者である組合に断りなく捕れば、漁業権の侵害となるということです。また「潮干狩」などは第1種共同漁業権である貝類を採捕しますが、権利者が受認の範囲内(料金を徴収する)として許している場合が多いようです。

なお参考までにお話ししておきますと、淡水における第5種共同漁業権については、指定された魚種(アユが最も有名です)を釣る場合には、遊漁規則に基づいた「入漁料」といったものを組合に支払う必要があります。しかし、指定されていない魚種を釣る場合には「入漁料」を支払う必要はありません。

ちなみに、現在のところ、海面で魚を釣る場合には、「入漁料」といったものを支払う制度はありません(波止の清掃協力金や海釣り公園の入場料は除く)。しかし、近年、重要視されている水産資源の問題によって、将来は、海釣りにおいても「入漁料」や「ライセンス」といったものが導入される時代が到来するかもしれません。

―漁業者と遊漁者の立場の違い―

漁業者
遊漁者(釣り人)
定 義
水界生物を採捕し、販売することを生業とする 趣味として、水界生物を採捕することを楽しむ
組 織
漁業協同組合に所属しなければならない 遊漁団体に所属するかどうかは、自由意志による
地域性
特定地域に居住し、特定漁場を操業の場とする 特定漁場にこだわらず、随時・随所で操業する
規 則
漁具・漁法などについて、法規・条令により規制を受ける 漁具・漁法などについては、全く規制がない
船 舶
漁船の隻数・大きさ・馬力などに厳しい制限がある 使用船舶について、漁業法規上の制約はない
漁獲量
魚種によっては、年間総漁獲量の割り当てが決められる 漁獲量については、一切制限なし

ふむふむ、こうやって見ると私たちヘボ釣り師が漁業に与える影響というのは、限りなく低いですから(残念ながら~大笑い)まず問題にならないようです。つまり操船や操業の邪魔にならないようでしたら、法的には怒鳴られる筋合いなどない!と言うことになります。お上はずいぶん遊漁者(釣人)には甘いのです。もっとも貴重な税金で、よく分からない埋め立てや河口堰を作り続け、魚はもちろんのこと、そこで生活する漁師や、庶民釣り師をどんどん閉め出していますが。

これならわかる守れるルール

以下の文章は福岡県行政のサイトから抜粋しています。他県とは条例も異なるでしょうから100%参考にならないかも知れませんが、要領よくまとめられており、釣人には分かりやすいものです。

本県の海は漁業生産の場としてはもちろんレジャーの場としても利用されています。遊漁者(遊びでの海面利用者を含む)の増加に伴って、漁業者との間のトラブルも多くなっています。そこで、海浜で遊ぶ場合、漁業者や他の遊漁者および地元の住民に迷惑をかけないように次のことを守ってください。

(1)遊漁者(漁業者以外の人)の漁具漁法

遊漁者(漁業者以外の人)のできる漁具漁法は、福岡県漁業調整規則で次のとおり定められています。次の漁具漁法であっても正当なる漁業の操業を妨げてはいけません。

  • さお釣及び手釣
  • たも網及びさで網(照明を利用するものを除く)
  • 投網(船を利用しないものに限る)
  • やす及びは具
  • 歩行徒手採捕
  • 以上のことから、ひき縄釣り(トローリング)は、遊漁者の人はできません。
(2)貝類や藻類をみだりに採捕しないようにしましょう。

ほとんどの地先海面には、地元漁業協同組合に対し漁業権が免許されています。したがって、一般の人がアワビ、サザエ、ワカメなどをとることはできません。ただし、アサリなどの潮干狩については、漁業権侵害に対する受忍料として漁業協同組合が金銭を徴収して漁場を開放しているところがあります。

(3)海釣りをされる人は次のことを守りましょう。

まき餌の使用については、海藻類の育成、魚介類の産卵などに悪影響を及ぼしますので次のとおり使用を制限しています。
赤土:全面使用禁止
麦の使用禁止期間、5月15日から6月14日まで
また、砂浜や磯場など限られた釣場を多数の釣り人が利用しており、ビニールや空き缶類を海中に投棄したり現場に放置したりすると、漁業者はもちろん地元住民や他の釣り人が大変迷惑しますので、必ず持ち帰るようにしてください。

(4)その他の海面利用について

ウインドサーフィン、水上オートバイなどを使用する海面レジャーについては、騒音や迷惑駐車など地元住民に迷惑をかけないよう十分注意してください。

福岡県水産林務部漁政課編

特に罰則などを羅列したものではありませんが、釣人が守るべき心得として分かりやすく明快ですね。いわゆる常識というべき範疇を守れと言うことです。

尊重しよう「おらが海」

こうやって見てみるとよほど不心得な釣人でない限り、トラブルを起こすことはないでしょうし、法的にどうのと言われることもないようです。しかし冒頭に上げたMさんのような事例はかなりあると思います。

私自身不愉快な思いをしたこともありますから、Mさんの気持ちもよく分かります。確かに目くじらを立てる漁師さんもどうかと思いますが、干してある網を平気でずかずか踏んで歩く釣人や、ゴミはほったらかし、関係者の駐車場に大きな顔で車を止めっぱなしという釣人が多いのも事実なのです。その漁師さんも、おそらく釣人との間で不快な経験が幾度もあったのでしょう。

漁師さんの大半は、先祖の代からその海で生活してきた人たちです。私たち都会人とは、ずいぶん土地に対する想いや関わり方が違うと思います。法律はどうのこうのといっても海は彼らの海「おらが海」なのです。お前達だけの海とは違う!などというのはナンセンスです。所詮釣りは遊びです。例え不当と思われる扱いを受けたとしても、ぐっと我慢の子で引き下がる方が格好いいのではないのでしょうか。

釣り師にも色々いるように、漁師さんにも色々います。喰ってかかるだけの了見の小さい人だけではありません。海や釣りのことを色々教えてくれる度量の広い漁師さんや親切な人は一杯います。願わくばそういう人たちに巡り会いたいですね。

この記事制作については、 以下のサイトの記事を参考あるいは
一部引用させていただきました。ありがとうございます。

吾が故郷・奥三河の自然と歴史  宮古ダイビング迷惑料問題
つりネット  福岡県のホームページ

釣りのステッカーとTシャツの音海屋
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