魚種別攻略講座

魚種別攻略講座

野武士黒鯛と勝負!

釣り人を魅了してやまない黒鯛、関西ではチヌとよばれ、全国区でもその名称が定着しつつあるようです。古代の貝塚からチヌの骨がよく発掘されており、大昔からチヌは釣り人にとって身近な存在だったようです。開発で海から水産資源が失われつつある現在でも、チヌの魚影は相変わらず濃く、人間の暮らしと共生していける不思議な魚です。

釣りの好敵手としてこれほど身近な魚はいません。大物と巡り会うために釣り人は古来工夫を重ねてきました。具体的な釣り方については別章で扱うとして、ここでは全国に伝わるご当地釣法の紹介と、チヌ釣りのツボをまとめてみました。

チヌってどんな魚?

いやしさでは一番かも…
チヌは成長している途中で性転換を行う魚として知られています。幼魚時の性はすべて雄ばかりで、少し大きくなると精巣と卵巣をもつおかまちゃんに、そして四歳ぐらいまで成長すると完全に雄か雌かにわかれるそうです。産卵は沿岸域一帯の浅瀬で広く分散して行われ、これがいわゆるノッコミと呼ばれる春先の産卵期です。

稚魚は塩分の少ない河口付近でも生息することができますし、夏季は31〜32度、冬季は4〜5度と極めて厳しい水温変化に対応する魚です。食性は雑食で、プランクトンからエビ・カニ、海藻まで食べます。手当たり次第なんでも食べますから、釣り人のエサも多様で、コーンやスイカでも釣れることはよく知られていますし、ルアーで釣れたという報告もあります。日本記録は2002年6月福岡県で出た70.2cmと超大物です。それまでの記録は三重県尾鷲湾で釣れた69cmです。凄いという一言ですね。こんなのが身近に釣れるのですからやめられません。

日本各地ご当地釣法

ご当地釣法は理にかなっている…
なんでも食べるチヌといってもやはり地域によって食性が少しづつ違うようです(当たり前ですが)。気候や地形にも影響されますから、初心者がチヌ釣りを始める場合は、やはり自分が住んでいる地域で盛んな釣りを覚えていくのがいいと思います。おそらく釣りのなかでは一番バリエーションが多いと思われるチヌ釣りを、各地の伝統釣法とあわせて紹介してみましょう。記憶に頼って書きますので、もし間違っていたらゴメンナサイ。

関東のヘチ釣り
関東では防波堤の際のことをヘチといいます。チヌはこのヘチに沿って就餌する習性があります。これを専門に狙った釣りです。東京湾野島防波堤で盛んに行われたことから野島釣りという呼び方もあります。総じて東京湾の波止は関西より高さが低いため、扱いやすい短竿が主に用いられています。

小さなガン玉だけで勝負する繊細な釣りです。短竿によるミャク釣りの一種です。2.1〜2.7mぐらいの短竿、太鼓リールというのが基本の組み合わせです。凝り性の東京人らしく竹の和竿、木製リールにこだわる風流な人もいます。

名古屋の落し込み釣り
いまではもっともメジャーな釣法です。ゆっくりとエサを落し込んで行くことからこの名前がつきました。関西関東の釣りも昔から基本的には同じなのですが、初心者にもアタリが取りやすい発泡の目印を使い出したのが名古屋ということもあって、この地がこの釣法の発祥地ということになったようです。

食いの渋いときは引き込むようなアタリはなかなか出ません。また落ち込みや食い上げのアタリは初心者には取りづらいのです。こんなとき目印が一種のウキ代わりとなって活躍してくれます。目印を使わないベテランも多くいます。この場合、視認性がよく浮力のある道糸を使うケースが多いようです。

前打ち釣り
チヌは食性はどん欲ですが、行動そのものは臆病で学習能力の高い魚です。ですから魚がすれているところでは、強力な落し込み釣法でもなかなか釣れてくれません。そこで釣り人が考えたのが、長竿を使い仕掛けを遠投して沖の底を攻める前打ちです。これも名古屋が発祥の地と云われています。

ポイントが遠いため5m前後の長い竿を使います。落し込みと兼用できるように、竿の長さが変えられるズームロッドに人気があるようです。テトラの切れ目などがポイントですので、仕掛けをうまく操作するのには経験が必要です。

こすり釣り
大阪湾の釣りです。落し込みが垂直方向を攻めるのに対して、これは水平方向を攻めます。タナを○ヒロと決め打ちして、波止の際を潮の流れにあわせてこするように釣って歩くのです。夜釣りによく使われる釣法で、スズキなど他魚のお土産が期待できます。

波止の高さに合わせた竿を使います。大阪湾の波止は足場が高いのでちょっと長めの竿になります。タナはイガイのついた層になりますので、結構浅めのタナを探って歩く(平行移動)することになります。

うきふかせ
磯ではもっぱらこの釣法が用いられます。マキエで魚を集め、小さな円すいウキと軽い仕掛けで潮の流れを釣ります。仕掛けに何も付けない釣りをフカセ釣りというのですが、この場合ウキを付けますのでウキフカセということもあります。

現在、磯では一番メジャーな釣法です。もともとはグレ釣りが原型でしょう。同じような仕掛けでも、グレ釣りと違う点は食わせ方にあります。 魚の習性をわかっていなければ、狙った魚を手にすることは難しいものです。メーカーの磯竿は、このウキフカセに照準を合わせて作られています。

若狭の棒ウキ釣り
潮が遅くエサ取りが異常に多い若狭湾で発達した釣りです。遠いポイントを攻められ同時に小アタリを取れるよう、重たいオモリを仕込んだ棒ウキを使う釣りです。エサはこの地方伝統のエサ取りに強いサナギ(蚕のサナギ)です。サナギミンチを練り込んだ赤土マキエを使うのが特徴です。

ウキフカセ全盛の現在でも、この地方で磯のチヌ釣りといえばこれが主流です。特に若狭湾の夏場はこの釣り方でないと、まずチヌの顔を拝むことは難しいでしょう。

紀州釣り(和歌山)・バクダン釣り(瀬戸内)
名前からもわかるように和歌山で発達した釣りです。元々はエサ取りからサシエを守るためにダンゴでエサを包み込んだところから、エサ取りの多い夏場の釣りといえるでしょう。基本はウキ釣りで徹底して底を攻めます。
同じ考えで瀬戸内で発達したのがバクダン釣りです。ここではウキを使わない場合もあるようです。

徹底して底を攻めるだけに、底がフラットなところでなければ、根かかりでつりになりません。防波堤に向いた釣りですが、磯でもやる人がいます。上記の理由から、かなりの遠投力が要求されます。女性には厳しいでしょう。

かかり釣り
静かな湾内に浮かべられた筏やカセ(小舟)に乗って、チヌを狙う釣りです。動かないよう固定されている(船をかける)ところから、カカリ釣りという呼び方がうまれたのでしょうね。若狭湾本郷が発祥の地といわれています。

釣り方はダンゴ(サシエをマキエが混ぜられた土でくるむ)ので紀州釣りに似ていますが、足元がポイントですので、ウキを使わず穂先でアタリをとります。1.5m前後の短竿が用いられますが、鋭敏な穂先が特徴で自作する人も多いようです。

一つの釣り方をマスターしよう
この他にも有名な庄内釣り(中通し竿を使ったフカセ釣り)や、神戸の備中釣り(超長竿に目印仕掛け、エサはアケミ貝)、スイカ釣り、渚釣り、サナギのぽかん釣りなど、まだまだ各地の伝統釣法を紹介するとキリがありません。こう書くととても難しいようですが、言い換えればどんな釣り方でも釣れる魚ともいえます。他の魚だとまずこうはいかないでしょう。これがチヌ釣りの面白いところですね。

チヌ釣りのツボ

チヌという魚は人気があるだけあって、昔からなるほどというセオリーや格言が言い伝えられてきました。そこで数多いその中から私自身が経験で検証したものや、初心者が疑問を持つ点についてノウハウを選んでみました。

チヌのアタリは小さい?
  1. チヌは居食いをする魚です。エサを食って反転するような魚ではありませんから、明確なアタリは出にくいのです。ですからエサだけ取られてお終いとか、せっかくのアタリを見逃すこともあります。いったんエサをくわえてから再び呑み込む習性があるため、本アタリの前にモゾモゾとした前アタリがあるのが特徴です。
  2. 潮が飛ぶような磯では円すいウキが使いやすいですが、一般的な波止では感度のいい棒ウキに分があります。前アタリが取りやすいので初心者向きです。
予想外のポイントで釣れた
  1. 特にマキエをする釣りにいえることですが、意外な所で釣れるのがチヌです。100mも離れた潮下でも食ってきますし、とんでもなく浅いワンドで釣れたり、ほんの足元でも食ってきます。グレが潮を釣れといわれることに比較して、チヌは居場所を探す釣りだといえるでしょう。
  2. 基本的には障害物にそって移動しますので、壁・底・シモリ廻りがポイントですが、安易に決めつけてはいけません。特に初めての釣り場では慎重に探りましょう。
チヌは遅アワセというが?
  1. チヌはエサを呑み込むのが遅い魚です。ですから前アタリで合わせると素鈎を引くことが多々あります。確実な本アタリで合わせるのが原則です。しかし落し込みの場合カニエサなどは一瞬で鈎を吐き出しますから、早アワセが必要です。
  2. 落し込みのように仕掛けがしゃんと伸びているような場合は、早アワセでも掛けられますが、ウキを流し放しにして糸ふけが多量に出ているような場合は、糸ふけを取りながら本アタリを待つようにします。
チヌは底を釣れというが?
  1. かかり釣りや紀州釣りは底をポイントに定めて釣ります。チヌそのものは中層を泳ぐ魚なのですが、釣りの対象としてみた場合、底がよく釣れるのです。底生の小動物を食べる食性だからでしょう。特に低水温期は浮いてきません。ウキ釣りでもハリスを底に這わせて釣るぐらいです。大体が投げ釣りで釣れる魚です。
  2. タナ取りオモリで水深を知り、確実に底を知って仕掛けを流すのが基本です。グレは上からタナを決めますが、チヌは底からタナを決めるといいでしょう。しかし時合いになると、かなり浅いタナまで浮いてくることがあるので注意が肝要です。ちなみに釣り場にもよりますが3.5〜4ヒロぐらいでアタリがよく出るようです。
夜釣りがいいと聞いたが?
  1. 確かに昔はチヌは夜釣りといわれて、素人が昼間になかなか釣れる魚ではありませんでした。しかし現在は落し込みに代表されるように、チヌの習性を逆手に取った釣技が開発されており、昼間でも十分な釣果が望めるようになりました。
  2. どちらとも云いきれず釣り場で変わるようです。昼間、あるいは夜釣りで実績のあるところを調べておく必要があります。落し込みは繊細なアタリを取ることが要求されるため、特殊な仕掛けを使わない限り夜釣りは難しいでしょう。
胴調子の竿がいいらしいが?
  1. 細ハリスを生かすためには、胴に重みが乗ってくる柔らかい胴調子の竿が最適です。ベテラン好み軟調の竿は釣り味がよく、満月のように竿をしならせて釣るのはチヌ釣りの大きな楽しみです。
  2. 落し込みのようにシビアな仕掛けの操作性が要求され、テトラのようにバラしやすい釣り場では、極先調子と呼ばれる竿が好まれます。強い腰があるため、先手先手で強引にやり取りできるのです。
マキエがよく効くらしいが?
  1. グレほどではありませんが、濁りや匂いに敏感ですからマキエにはよく反応します。メーカー製のマキエもこの点が考慮されており、匂いが強くよく濁り、比重も重めで水深の深いところを攻められるようになっています。
  2. ウキ釣りでしたらマキエは非常に効果的ですが、チヌは基本的に回遊してくる魚です。ですからマキエが効いておびき寄せるに時間がかかります。気長に時合いを待つ辛抱が必要です。
マキエをしてもなかなか釣れない?
  1. チヌはグレのように、マキエの真ん中に突っ込んで来るようなことはありません。少し離れたところで様子を伺いながら、こぼれエサを拾っているのです。これがわからないと苦労することになります。
  2. マキエが効いているなと予想されるところから、さらに潮下で少し深めを釣ってください。大体そんな所にいるものです。
エサが多すぎて迷う?
  1. 雑食性のため多様なエサがあります。基本はやはりその地方でよく使われ、実績のあるエサが間違いないはずです。季節により食性も変わりますが、これもその地方地方でアタリエサがありますから研究してください。基本的に水温の低いときほどオキアミやボケのように食い込みのよいエサ、エサ取りが多い水温が高い時期ほどカニやイガイなど固いエサを用います。
  2. あれこれ試すのも悪くありませんが、自分の得意な釣りにマッチした餌を使いこなす工夫が必要です。一つのエサを使い続けることで、自分のノウハウが生まれてきますし、他のエサの良さもわかるようになります。
ボラはチヌの親戚か?
  1. たしかにボラとチヌは切っても切り離せません。不思議にボラが回ってくると、チヌがその下にいるものです。ボラが釣れたら嘆かずに、時合いだと思って気合いを入れてください。
  2. ボラはエサを吸い込んで就餌し、かつ反転しません。群でポイントの廻りをウロウロしますからスレアタリも多いのです。ですからボラのアタリは明確でなくチヌよりモゾモゾとしたアタリです。チヌだと確信できないときは、合わせず様子を見るのも上級者の手です。
悪環境に強い?
  1. 塩分濃度の高い外海より、潮の甘い内海部を好みます。水温変化に強いため、春先の超低水温期や夏場の高水温期でも周年釣れます。どこでもいつでも釣れる釣り人の味方のような魚ですが、釣り場で条件が異なりますので事前情報が必要です。
  2. 台風で土砂が流れ込み、海が黄土色になったときでも釣れたことがあり、驚きました(そんな日に釣りをするか…)。船頭がダメといった低水温期や、赤潮の時に釣ったこともあります。悪条件に強いというのは本当でしょう。