釣りのタックル研究室

全国釣り場巡り

長崎県男女群島

磯釣りといえば、行き着く所は長崎県男女群島ですね。巨グレや石鯛の数釣り、九絵の宝庫として知られています。高速渡船が就航するようになった近年は釣り荒れたと云われていますが、まだまだ魚影は濃いようです。

一口GUIDE
男女群島は福江島の南南西約60kmにあり、主な島は5つで、全島が溶結凝灰岩からなり、総面積は4.75km2、最高峰は女島の海抜283mである。海岸線には断崖をめぐらし、柱状節理が発達している。男島と女島では山中に森林がある。その主木は、タブノキ・ヤブニッケイ・ショウベンノキで、林下にはオオタニワタリ・クワズイモ・アオノクマタケラン・オオイワヒトデ等が密生する。海岸近くにはマルバニッケイ(北限地)の群落がある。植物相は南方系植物を含みながらも、裸子植物、ブナ科・ツツジ科・ハイノキ科を欠き、キク科・マメ科・ラン科が貧弱な島嶼型の特徴を持つ。動物相においては、ザウテルヘビの日本唯一の生息地であり、陸産無脊椎動物に固有種がいる。鳥類には、カツオドリ、アカコッコ、アカヒゲなど南方系がおり、オオミズナギドリが高密度に営巣しているなど、自然を維持する数少ない地域の一つとして学術上貴重である。島全体が指定区域となっており、鳥獣の捕獲、植物の採集はもとより、島への上陸も許可なしにはできない。なお男女群島は国指定の天然記念物に指定されている。※長崎県福江市観光協会HP

今回は、2002〜03年にわたって遠征された山口県在住のせいいちさんのレポートをまとめて紹介させていただきます。

南シナ海せいいちが往く 2002.5.17/18

男女群島とは
長崎県松浦港から約200km南西に位置し、大きく分けて北から「男島」「クロキ島」「中の島」「ハナグリ島」「女島」で構成されている無人島。長崎県福江市に属する。黒潮の真っ只中で、真冬でも海水温度が17℃を下回ることはないとのこと。今回クロキ島で竿を出した。

肥前鳥島とは
男女群島の男島から約35km北西に位置し、「北岩」「中岩」「南岩」から構成されている「釣り人最後の楽園」西の横綱。男女からは5千円のオプションだが、瀬渡し業者ごとに瀬渡しできる日が割り当てられており、さらに海の荒れる冬には月に3度しか渡れる日がないとのことで、男女までは行けても鳥島にまで渡れる釣り人は限られる。今回渡れたのは非常に幸運であった。南岩で竿を出した。

今回の釣行で準備したものをまとめてみた。
(使用◎ 予備△ 使用したが具合の悪かったもの▲ 不必要だったもの×)

船の甲板に積んだもの
ロッドケース◎ 3号5.3m中通し竿◎ 予備の竿△ 3000番LBリール◎ 予備のリール△ 玉の柄5m玉網(40cmで充分か)60cm◎ 撒き餌杓◎ 予備の杓△ ハゲ掛け針×
ソフトクーラー× 着替え 予備の手袋△(船に荷を載せるまではバッカンに収納)
クーラー(大)◎ ペットボトル(水)◎(船に荷を載せるまではリュックと磯靴を収納)
クーラー(小)× ※車中で同行者が飲む飲み物◎
バッカン(40)◎ ドンゴロス◎ 撒き餌杓立て◎ 撒き餌ブレンダー ◎配合餌(一袋使用)◎ パン粉(1キログラム)▲ 水汲みバケツ◎
磯靴◎ ※船室入口の靴箱付近に置く
船内に持ち込んだもの
リュックサック◎ エギラック▲ 餌木× ナイフ◎ 替えスプール◎ ハリス(4号から10号)◎ 夜釣り用のウキ◎ 予備の電池△ ケミホタル△ 玉網用ケミホタル(20cm)▲ その他小物(タバコ等)
服など◎ 帽子◎キャップライト△ 合羽(上)△ 合羽(下)◎ ジャンパー(上・夜から使用)◎ ペットボトル(茶)◎ カロリーメイト・缶詰・箸・菓子◎ 使い捨てカメラ◎
ライフベスト◎ 鈎・サルカン・ガン玉セット◎ 手袋◎ 偏光レンズ(顔に密着するタイプだったので暑く、曇った)▲ タバコ・ライター◎ ライター予備△ ウキセット◎ フレキシブルライト◎

松浦港を出港(1日目1時30分ごろ)

車から荷を船に移し、いよいよ松浦港を出港。瀬戸内海から出ることすら初めてなのに、いきなり男女群島や鳥島に遠征することに対し、大きな期待(オナガを釣る!)と少しの不安(ボウズだったらどうしょ・・・)を感じつつ、そんな自分に酔ったりしていた。「五島を過ぎたらウネリが出るかもしれんから、早く寝た者が勝ち」とのアドバイスがあり、酔い止めの薬を飲んで就寝。爆睡。

男女群島に到着(1日目6時30分ごろ)

「見えてきたでぇ」の声に目を覚ます。夜明けの男女群島。甲板へ出る。船長の「上物!」「次、底物!」という声と共に2人ずつ磯へ渡ってゆく(写真1)。師匠と私が渡ったのはクロキ島の「ミホの瀬」という磯(後日調べ)。水道の中ほどに位置し、大きな磯だが足場は悪い。北の突端にハナレがあり、そちらに竿は出せない模様。岩のてっぺんに登り写真撮影(写真2)。師匠は「水族館の裏のハナレ」を見ながら「あそこに渡りたかったのぉ」などと言っている。反対側も写真撮影(写真3)。師匠が「ワシから離れて釣れイ!」と言うので、岩を伝って南側を偵察。平坦なところがあったので荷物の運搬に3往復。汗が噴き出したので上着を脱いだ。いよいよ釣り開始だ。

独り寂しく(1日目7時30分ごろ)

撒き餌を作り、撒き餌を打ち、竿の準備をする。小潮のせいか、潮通しが悪いようだ。5投してアタリがないので、試しに磯の反対側に竿を出してみると・・・釣れた。なんだかチヌのような目をしたグレだ。少し違和感を覚えながらもナイフで締め、ドンゴロスへ放り込む。再び元の方向へ竿を出すが、やはりアタリなし。そこで先ほどグレを釣ったポイントに仕掛けを流してみると・・・また喰った。30cmくらいか。締めようとすると、私が降りてきた岩の上から師匠の声が。「えらく白いグレじゃの〜、持って帰るんか?」は?「ウンコしちょろうが!」はぁ・・・?「・・・それがキツ(イスズミ)じゃ!!」おお神よ!男女群島まで来てあなたは私にこのような試練を与えるのか。師匠は潮が満ちてきているので戻ってこいと言い残し、去っていった。締めてしまったイスズミに合掌して、2尾の魚を海に帰した。

師匠のもとへ(1日目9時00分ごろ)

とぼとぼと荷物の運搬に3往復。せっかくひいた汗が、また噴き出す。師匠がコーヒーを淹れてくれた。写真を撮ってもらう(写真4)。師匠から「オキアミや道具は使う分だけ持っていけば良かったのに」と言われる。早く言ってくれ!っちゅうねん。聞けば師匠もキツと波しぶきの猛攻に辟易して私を呼んだとのこと。仲良く竿を出す。するとウキにキツとは明らかに違うアタリが!・・・乗った!横に走る!あのぉ師匠、何かサヨリの親分みたいなのが釣れたんですけど。ギザギザの歯が生えているんですけど。「・・・それがダツじゃ!!噛まれるな」食えるんでしょうか?「・・・骨が青いがの」う〜ん。あのぉ師匠。どう考えても神様が誤って色をつけ間違えたとしか思えない青紫の変なベラを釣ったんですけど。「・・・それでもベラじゃ!」あのぉ師匠。海で金魚が釣れたんですけど。「・・・これが南方系の海じゃ!」

師匠ヒラゴを釣る(1日目11時30分ごろ)

潮に変化が。師匠が北側突端のハナレとの間にできるサラシを指し「ここから右(東)に流れて行く潮が、50mほど先で前(北)に緩く流れる本流にぶつかって流れが変わっている。キツを沖に出させないようにこのサラシに撒き餌を入れるが、残った撒き餌が本流がぶつかっているところにも効いているはずだ。そこに仕掛けを持っていく。・・・そこで魚は喰ってくる!」しばらくすると師匠「キツが湧いてこなくなった。本命が来るぞ・・・」

1分ほどで竿を曲げ「尾長じゃ〜!!・・・違う、これは・・・ヒラマサじゃ〜!!」おお、師匠の「がまかつグレ遠征スペシャル2号」が大きく曲がっている(写真5)。竿を置いて師匠のもとへ。北側に頭を出してみると、、、見えてきた、ヒラマサの魚体。師匠は寄せる。ヒラゴは走る、ハナレの向こう側に!「師匠!擦れる!」私が言うのとハリスが切れるのがほぼ同時だった。師匠無念のバラシ。師匠鼻息荒く「絶対釣ったる!!!!!」3分後には再び竿を曲げていた。慎重に寄せて私がタモ入れ、フィニッシュ!さすが師匠。いいな〜ヒラゴ!釣りたいな〜。よほど羨ましそうな目で見ていたのだろう。師匠が「さっき言ったとおりにしたら釣れるけぇ、釣ってみ!」と優しい一言。お、ウキがススッと入りましたな。アワセ。乗った!おおっ、よぉ走りますな!。まずは一本。続いてもう一本。やったぜ師匠、ありがとう

瀬渡し船の見まわり(1日目12時00分ごろ)

二本目のヒラゴを釣り上げた直後、船が見まわりにやってきた。船長が「瀬替りする?釣れてないじゃろ?」と聞いてきたが、師匠が「どうせどこでも同じ釣れんのじゃから、ヒラゴが出ているここを替わらんほうがエエじゃろ」という判断をしていたため、釣ったヒラゴ3本を入れたドンゴロスを手渡すのみ。しかし、ヒラゴはもう釣れなかった。釣り座を師匠に返し、少し退屈に。キツはよく釣れるので引きを楽しむことはできるのだが、水切れがよくて満足できない。・・・それにしてもベタ凪だ。荒れるよりはずっと良いが、風がないので暑くてたまらない。

1日目納竿(1日目15時30分ごろ)

あのぉ師匠。何か変な色の丸々とした魚がつれたんですけど。「・・・それは・・・持って帰れ」え?「・・・旨いらしい」え?「・・・たぶんタカベじゃ」多分・・・という言葉に一抹の不安を感じたが、持って帰ることにした。16時に船が迎えにくることになっているので、夜釣り用に道糸を2.5号のPEに替え、納竿。迎えの船がきて、乗り込む。どの磯も釣れていない模様。夜釣りに備えて体力温存作戦のため、船中45分間を仮眠に充てる。またも「見えてきたで」の声に目を覚ます。まず、北岩(写真6)の組が磯に上がる。続いて少し離れた中岩(写真7。右手水平線上が北岩)へ。そして最後に私たちの組4人が上がる南岩(写真8)だ。

肥前鳥島(1日目17時00分ごろ)

写真左手に向かって竿を出す。師匠は中岩との水道を釣っている。師匠の釣り座は低いので、時折波をかぶっている。釣りやすい場所を私たちに与えてくれたのだ。真っ先に竿を曲げたのは師匠。「尾長じゃ〜!」と大声を出していたが、途中で静かになったなと思って見ていると、上がってきたのはでっかいサンノジ。55cmはあるだろう。続いて私の右隣が沖に流して地グロを1尾。私も真似して1尾。

日が落ちて際狙いに切り替える。玉網の枠につける長いケミホタルを装着したが、目がケミホタルの光に行ってしまい、浮かせた魚が見えなくなるという本末転倒の結果に。また、PEラインがダマになるトラブルが2回あったため、道糸は昼間使っていた4号のナイロンに戻す。後ろから煌々とライトを照らす密漁船(結局夜明けまでずっと照らしっぱなしだった)。師匠は「明かりがあると尾長が出んのんじゃあ」とやや不機嫌。本当に尾長は出ず、地グロのアタリも散発的になった22時ごろ磯の上で皆が仮眠に入る。座った姿勢で2時間ほど眠っただろうか、波をかぶる。寒い。眠れない。タバコを吸う。場所を変える。やはり眠れない。寒い。タバコを吸う。後ろから私を照らすキャップライトの光。師匠だ。「何しよるんか・・・そりゃあ、中から温めんと駄目じゃ」コーヒーを入れてくれる師匠。しばらくゆっくりして釣り再開。

朝マヅメ2日目05時30分ごろ)

海に色がつき始める。同時に風が吹きはじめ、バッカンも潮をかぶりオキアミも水浸し。杓で掬うのももどかしく手で直接つかみ、ぱらぱらと切れ間なく撒く。明るくなった海面から、電気ウキがシモってゆく。まだだ、まだアワせない。ウキがさらに加速し、見えなくなりかけたところで小さくアワセ。・・・乗った!・・・これは今までと違う、大きいか?下へゴンゴンと突っ込んで行くが、糸は出さない。グレの魚影が見えてきた。そう大きくはないが色が違う。茶色い。尾長か!?。はやる気持ちを抑えてタモを手にする。水面に浮いたグレが猛烈な勢いで水中へ潜った。「竿を立てい。伸されてしまうがぇ」と師匠。タモを地に置き、今一度格闘。そしてタモ入れ。竿を股に挟み、ずっしりと重い玉の柄を手繰る。尾長だ。鈎はタモを入れた後に折れてしまっていた。

納竿(2日目07時30分ごろ)

時化始めたため、12時の予定を早め、納竿する。終わってみると来る前の「あまり釣れていない。ボウズで帰る人も多い」という情報を裏切り、上物も底物もそこそこ釣れた様子。中岩は悪かった模様。昨日の凪が珍しいのだろうが、帰りの船は揺れそうだ。早く眠ろうと思っているうちに・・・気分が悪くなってきた。早く眠れ、俺よ・・・眠れ!・・・爆睡。気付くと船が揺れていない。港に近いなと感じる。10分ほどで松浦港に帰着。4人分の荷物のうち積みきれなくなったものを車の屋根に縛り付け、途中伊万里の街を過ぎたところで「ちゃんぽん」で遅い昼食。

釣果を食す(2日目21時00分ごろ)

釣果(写真9)を実家に持って帰り、お裾分け。さっそく尾長(写真10左側)を半身捌き、親父たちと食べる。残った半身を持ち帰る。

心地よい疲れ…
その夜は鳥島での釣りの夢を見た。

 

 

炎の男女群島〜西磯編〜 2003.12.28

遠征から帰り、なんとなく腑抜け状態になってしまっているうちに二月も半ばを過ぎようとしている。僕は元来釣り天狗となって自分の釣果を自慢したい、釣れなかった事はなるべく隠しておきたい(少し笑いが取れそうなら話そうかと思っている)、そんなタイプなのだが、今回はちょっと酷過ぎた。釣果その他各所に反省すべき点があり、自分の中でなかなか笑い話にできなかった。『イラストも付けよう』などと思っているうちに延び延びになってしまった。笑魚さんに「釣行記はどうした」と叱られるに至り、遅くなったが「新春初笑い企画」を立ち上げようと思う。始めに断わっておくが、今回はオチに至るまでのフリが長くなると思う。また、話し言葉(そして山口弁)主体で読者の方には読み辛いかもしれない。しかし、これが精一杯〜お許しください。話は12月初旬に遡ります。

男女釣行に向け話す二人

「師匠、今回は冬なので、やっぱり防寒着を買おうと思います」
「お前なぁ、男女は黒潮のド真ん中ぞ。温い温い。お前のいつも着ている『スノーボードウェア』で充分。それより前回ワシは思うたんよ『やっぱり3000番のリールじゃパワーが足りん』と。ここはひとつデカいリールを買おう!」
「・・・また僕を巻き込むんですかい?・・・幸い防寒着のために金は貯めていますが〜して、何を買うんで?」
「うむ、何を買おう?D社の4000番のベールが『エアベール』じゃったら迷わず買うんじゃが」
「S社のリールが良いと云っている人が多いようですよ?」
「うむ、お前カタログ持っとったじゃろう?・・・ふむ、昼休みに見に行ってみよう」

昼休み

「・・・なかなかイイんじゃないですか?」
「・・・エエかもしれんな・・・さんざん馬鹿にしてきて悪かったなS社。しかし、5000番にするか8000番にするかという問題が生じたな」
「あのぉ師匠、5000と8000はスプールの違いだけみたいなので、5000と8000を1台ずつ買って替えスプールを交換するという手があるような気がします」
「・・・おおっせいいち!お前はこういう時だけ知恵が働くな!いいぞ!そうしょ」
「・・・(喜んでいいの?)」

12月中旬〜嫁さんと家族会議

「今度の男女群島釣行・・・大きいリールが欲しいから、(そうとう遠慮しながら)三万円貰えん?」
「はあ?アンタ・・・旅費で五万円出すのにさらに?」
「二万円でも?」
「駄目!無理!」
「くうぅ・・・分かった・・・(予備費に頼るしかないのぅ)」

12月28日夕方〜長崎県に突入

「今の釣具屋で1000円も使ってしまいましたぁ」
「何を買ったんか?」
「まず、酔い止めの薬!それからケミなど小物だけなんですが。鈎も買いました。ヒラマサ用のと、尾長用。こいつはネーミングが良かった。『あわせちゃダメジナ』スレ鈎でしたね」

「ワシは帽子を買った」
「え。。。帽子、あるじゃないですか」
「あの帽子は『釣れん』」
「そんなもんですか?」
「当たり前だ。だいたいお前の『がま鮎』の刺繍の帽子は何だ。んな物海で使いよる奴を見た事無いがまぁエエわ。お前、入れ喰いになった事、あるか?」
「・・・ないですね」
「ま、筆頭の『釣れん帽子』じゃな」
「・・・その話はこのくらいにして・・・夜釣り、しましょうね!」
「嫌じゃのぅ・・・ワシは船で寝たい・・・。実は準備が足りていない。夜釣りは寒い。ビニールシートが要るな」
「おお、私は持ってきました。二人で包まって寝ますか?」
「バカタレ!そこにホームセンターが見えてきたろうが。そこに車を付けい!シートくらい買うわ」

「・・・実はガスバーナーも調子が悪うてな」
「えっ師匠が持ってくるという話だったので私は買ってきていませんよ」
「そうなんじゃが・・・火が付かんごとなるかもしれんな・・・」
「あ、師匠!ここに『広告の品1980円』というのがありますよ!欲しかったので私が買いましょう。他に要るものは何ですか?」
「このガスボンベが要るわな。あと、ビニールシートを封筒型にしたときにガムテープがあると便利」
「・・・3000円使ってしまいました〜」

目的地に到着・夕食後

「ふぅ、食ったな。さて、釣行費用を徴収するぞ。せいいち、お前は5万7千円じゃ」
「・・・・・・は?」
「・・・は?じゃなかろう。早くよこせ」
「念のために内訳を教えていただけますか?」
「渡船・餌代合わせて5万円、往復の旅費7千円じゃ」
「せいいちがこれまでに得た情報を整理しますと、せいいちが家を出るときに持っていた現金は約6万円。これは5月の渡船がたしか餌代を含めないところで3万5千円だったということで、充分余裕のある計画だったのであります。そして今財布を確認しましたところ、残金は5万5千円!すっからぴんになってさらに2千円足りません〜」
「5月は今回より1泊少ないし、チャーターじゃったからのぉ。ま、貸しにしといたるわ。・・・お前、帰りに飯が食えんのぅ〜(帰りの飯は師匠に奢って頂きました)」
「・・・(あの時ガスバーナーを買わなければ・・・くぅぅ)」

2002年12月28日夜、出船
2002年12月30日未明(5時位)〜男女群島西磯へ渡礁〜

「師匠〜波が結構ありますね(>_<)ゞ!どこをどう釣っていいものか分かりません〜」
「そんなもんワシにも分からん!それより早よ荷物を高い所へ持ってけ。さらわれるで!真っ暗じゃけぇ気ィ付けぇよ」取敢えず荷物と一緒に高い所へ避難してっと。
「しかしまぁ〜ナンですねぇ〜。皆さんが西磯西磯って大騒ぎしてたんでついうっかり僕たちも降ろして貰いましたが、僕ぁちと嫌な予感がしてます」
「・・・実はワシもじゃ。『なんとか渡れる天候』と言うのは微妙じゃのぅ・・・」

「・・・で師匠、釣らないんで?」
「バカたれ、こんなに波があって暗いのに怖ぁて釣れるか!こんなときはそうそうしない(ゴソゴソ動かない)」
「・・・師匠、温いぬくいと言われていた男女群島ですが、やっぱり動いてないと寒いじゃないですか・・・騙したのね?」
「そりゃお前、冬なんじゃけぇ寒いのは当たり前じゃ。5月に寒かったのにそれより暖かい筈も無かろう。ま、ワシはゴアテックスじゃからの。やっぱコレじゃわい!がはは」
「・・・ううっ師匠(T▽T)・・・身も心も冷えきって、せいいちは・・・がぼっ」
「こら、動くなと言っておろうに」
「せめて暖かいものを飲ませてください。田舎には嫁さんが夫の帰りを待っておりますだ。可愛い娘を父無し子にはしたくありませんだ。ここで死ぬわけにはいかんのです!ココアを!」
「風が強いから火が付かんかもしれんて」
「バーナーは私が出しましょう」
新しい道具を使うとき、それは心ときめく瞬間です。錆ひとつないボディー、満タンのガスタンク、それらを繋ぐジョイント・・・完成です・・・って何?この『シュー』っていう音は。何?この嫌ぁな臭いは・・・うわぁ、ガス漏れだぁ!なんで?!

動転した人間に冷静な判断はできません。『とりあえず火を付ければエエやろ』火花を飛ばすスイッチを押しました。が、これが過ちであったことにすぐ気付きました。『ゴオオオオッ!』ガスバーナーから出る炎、ほら昔の家庭用ガスコンロには取り入れる空気の量を調整するツマミがあったでしょう?その『空気が足りない(つまりガスが多過ぎる)』炎、普通は青く燃えているはずなのにオレンジ色の大きな炎が音を立てて辺りを激しく照らし出しました。

言い訳にもならんですが家のガスコンロは勿論、鍋料理をするときのコンロ、ひいてはキャンプ用のツーバーナーまで、たいていのガス器具は手懐けたつもりでした。ただ、このワンバーナーというのだけ使ったことが無かったのです。後になってガス量を調整するツマミが『全閉』になっていなければならないのに『全開』になっていた(展示品だったのでおそらく誰かが開けたままにしていたのでしょう)ことが分かりましたが、その時は知る由もありません。弘法も筆の誤り、猿も木から落ちる、せいいちもバーナーの使い方を誤る。炎はバーナーを丸く囲んでボンベにもあたっています。手が熱い!ボンベが熱せられるものだから炎の大きくなることといったら・・・ばっ、爆発しないでくれぇ!(ここまで3秒)

「しっっっ師匠ぉぉぉぉ〜!!」
師匠いわく、にわかに明るくなった岩陰からせいいちが両手でガスバーナーを捧げるように持ち近づいてくるさまは、漆黒の磯に差す一筋の光明・・・には当然見えず、『まさに火だるま』だったそうです。もはや時限爆弾と化した新品のガスバーナー、どうすればいい?古典のコントに爆弾や手榴弾を仲間同士持て余し渡しあうものがありますが、この状態でした。僕は師匠にこの『爆弾』を手渡したくて仕方が無かったのです。師匠はこの時立ち尽くして何も言いませんでしたが
「(早よ海に投げ捨ていっ!このボケっ!)」
と思っていたそうです。固まった師匠は何もしてくれません。と師匠の足元にタイドプールを発見!これだ!『じゅうぅぅぅ』・・・消えたと思ったら大たまげ!水面下のバーナーから出続けるガスが、水面から出たとたんに炎となって燃え続けます。

「うげぇっもう堪忍して〜!」
ちょっと在り得ない光景でしたが、泣きが入ったところで鎮火(ここまで15秒)。
「取り扱い説明書を読んでから使え!バカタレ」
「師匠〜この暗い寒い緊急時に酷でっせ〜(泣)」
幸先の悪いこの磯で、もちろん大グレを釣ることはできませんでした・・・。※管理人注)楽しい絵はせいいちさん(^^)b

ここでの主な釣果/イスズミ・オキナヒメジ

肥前鳥島せいいちが往く 2003.5.23/24

2003年5月23日、いよいよ鳥島に出発する日がやってきた。今回の予定は、23日正午に出船し17時より釣り開始、24日17時まで丸一日鳥島で釣りができるというもの。昨年と同じ南岩で釣ることも決まっている。昨年は17時から翌12時まで釣りができる予定だったが、朝マヅメに釣れ始めたところで天候の悪化により撤収して悔いを残した。南岩に乗るのは昨年より一人少ない3名。会社の上司と師匠、そして僕だ。狭い磯だったので荷物を厳選して、いざ出陣!

行きの船中は、のんびりしたものだった。南東の風が吹いており、明日は時化ると言われるのが信じられないほどの凪の海をゆっくりと進んでゆく。鳥島は磯割りが当番制であり、17時から翌17時までと決まっている。正午に出船し5時間、早く着いても釣りはできない。五島列島を過ぎるとぐるり一周、水平線となる。磯付けのときに船長が操舵する船のてっぺんに登ると、とても良い気分だ。

予定通り17時に鳥島に到着。南岩に渡り、三人が昨年と同様の位置に釣り座を構える。中岩を左手に、左から師匠、僕、上司の順番で、順に釣り座が高くなってゆく。師匠が早速何か魚を掛けたが、すぐにバラした。今回の私の仕掛けは中通しの磯竿3号、レバー付きリール5000番(8000番の深溝スプール)に道糸6号200メートル、3Bの電気円錐ウキ、ハリス8号をちょっと長めに6mとしていた。中岩との水道を潮が右側にびゅんびゅん通っている。

3Bの錘をサルカンの上につけて仕掛けを投げ、道糸を張ったり緩めたりしながら様子を見る。さすがに道糸とハリスの重みに耐え切れずウキが沈んでしまうので2Bのガン玉に換える。潮が引っ張るのかそれでもウキが潜ってゆく感じがしたが、良しとした。仕掛け調整の途中に、道糸がパラパラと出て行くので向こうアワセ。ラッキー!!不幸なグレだ。難なく寄せたまでは良かったが、ハリスが長すぎた。道糸を一杯に巻いて、ちょうどグレが水面に出る。いざタモを入れようとすると釣り座が高くて海面に少し届かない。釣り座は狭くて移動できない。ひざを曲げてタモが入るとグレが沈んで突っ込んでゆく・・・この不毛なタモ入れを数度繰り返したがどうしても上手くいかないので諦め、師匠にタモ入れをお願いした。40センチくらいの尾長だった。

尾長が飛び出して餌を咥えたこの仕掛けを切るのはセオリーに反すると抵抗があったが、このままではどうにも取り込むことができないので50センチほどハリスを切り、ウキ止めを上げる。日が暮れて潮の流れは少し緩くなった。仕掛けを正面に投げ、右前の方向に流す。ウキにアタリは出るのだが喰いが渋く、3人とも苦戦していた。僕は先ほど尾長が飛びついた場面をイメージしながら、向こうアワセに徹することにした。

仕掛けを遠めに入れ、少し待つ。ゆっくり引き戻す。少し流したら次に流した分だけ道糸を出すが中通し竿に太い道糸の泣き所、スムースに出てはくれないので穂先を海面に浸けて振り、1メートルほど出す。スプールを押さえたら道糸が直線になるようにし、基本的には張りを意識しながら少し弛ませたりして流す。このとき僕は世紀の大発見をしてしまった。実践している人には大したこと無いことなのかも知れないが、劇的にアタリが取りやすくなったので書かせていただく。

それは、アタリを待つ間の「道糸の押さえ方」である。今まで僕はTVで名人達がしているように、人差し指でスプールリングを押さえていた。これだと僕が器用でないせいもあるのだろうが、竿を持つ手がとても疲れてしまうのである。腱が攣るような痛みに耐え、耐え切れないときには竿を持たないほうの手でアシストし、時には竿を落としそうになりながら、必死に押さえていたんである。はっきり言って「アタリが・・・」というレベルではなかった。「丁度良い押さえ」の力を遥に超えた力で、しっかりと押さえつけていた訳だ。アタリは取りづらく、何より精神衛生上良いものではなかった。集中力が続かない。

さて、それでは今回どうしたらアタリが取りやすくなったのかと言うと、「スプールリングを押さえる」のではなく「レバーブレーキの所に置いた人差し指に、道糸を引っ掛けておく」だけだったのである。軽く挟んでおくだけでよい。魚が道糸を引っ張れば、ピピピ・・・と道糸が出て行くから、少し走らせて今度はしっかりとレバーブレーキの所で道糸を押さえ、ゆっくり竿を立てればアワセは完了。あとはベールを戻して巻き取りにかかる。これは劇的に楽ちんだった。ウキから目を離していても大丈夫。鈎もカンヌキに掛かっていたからタナも合っていたのだろうが、今までより仕掛けを咥えた時の抵抗が少ないせいか、魚も安心して喰いついてきたようだ。こんな簡単なことに今まで気がつかなかった。

今回ここで釣り上げた魚は、最初の一尾を除いては全てこのようにして掛けた魚だ。バラシも数回あるが・・・まず1つは2尾目の時。40センチくらいだったので抜けるか?と思ってブチ抜いたら・・・チモトで切れた。あとは「秒3回」の勢いで巻いて2回くらいバラシ。高切れも1回あった。上司はドラグリールを使っていたがもの凄い締め込みで、アワセと共にギュゥーーンとドラグが鳴り、巻く間も無くプツリと切られたのが一回あった。あれはデカそうだった。或いは石鯛かもしれない。僕は撒餌に普段使わない地アミを混ぜていた。そのせいか潮下を流している上司にイサキが連続して喰い付きはじめた。

上司の釣り座は高すぎてタモ入れができないので、「上司アワセる→僕は仕掛けを巻き取って竿を持って逃げ、その場所に上司が入る→師匠がタモを入れる」という図式ができ上がってしまった。納竿間際に尾長2枚を釣ってみせた師匠もこの時までは地グロ1枚で低迷していた。師匠は珍しく気弱になっており「俺もタモ入れだけは上手いのにのぉ・・・」などとぼやいていたのが可笑しかった。結局昨年の朝マヅメに好調だった上司は今回、グレをあげることができなかった。

少しずつ強くなってゆく風が、僕の気持ちをはやらせた。時刻は22時。「このままではラーメンを食べれなくなってしまう・・・」いやしい僕はバーナーに火がつくうちに湯を沸かし、ラーメンを食べた。食べ終わる頃にはさらに風が強くなり、船が近寄ってきてポーターが「大丈夫ですかあ〜?!」と叫び、師匠は「大丈夫〜!!」と応えた。嫌気がさしたが仕掛けを入れるとイサキが釣れた。さらにもう一尾。喜ばれるお土産を釣り、僕はもう、思い残すことが無くなった。24時頃、風と波でどうにもならないので3人で竿をたたみ、荷物と共に高い所に移動し身を屈める。

船はライトを点け、中岩を照らす。見ると7メートルはあろうかという釣り座の上を波しぶきが飛び越えているではないか。船はそのまま監視モードに突入。中岩の釣り人はびしょ濡れ。昨年と風向きが逆なので南岩は上手い具合に波を逃れたが、中岩の当事者としては生きた心地もしなかっただろう。ちなみに離れた所にある北岩でもこの時、荷物が流されたりして大変だったらしい。早く撤収してくれれば良いのに・・・と思う反面、このまま岩の上で過ごすのと、揺れる船で酔うのと、どっちが良いだろう?という迷いもあった。船でも同様の迷いがあったらしい。今回収するか、風が治まるのを待つか。長い時間が流れた。

2時近くになって、これ以上時化たら回収困難ということで、ようやく撤収!かと思いきや「折角来たのに気の毒だから」と「男女群島で朝マヅメ」を狙うことになってしまっているらしい。3時ごろ男女群島に着きポーターが声を掛ける頃には、僕は酷い揺れですっかり船酔いしていた。師匠も寝転んだまま起きて来ない。うぅ・・・気持ち悪い・・・もうエエで・・・。どうも磯で食べたラーメンが、重く胃壁を圧迫しているらしい。「どうせ男女群島じゃ魚は喰わんわい。男女群島なんかいつでも来れるわい。」いつでも来れる訳はないのにそんな気分になってくるから、不思議だ。すっかりサボる気になっていたのだが磯に上がれば気分も晴れるかという思惑もあり、上司に連れられて磯に上がることに・・・。ここでの釣りは特筆すべきものでもないだらう。

僕達が肝を冷やすような今回の時化で、風速6メートル、波高3メートルというのだから、本当に天候の良い時しか鳥島に上がれないというのが良く分かる。釣り人が上がれない時が多いから、大きな魚が残っているわけだわぁ。

釣果

5月23日午後17時〜5月24日0時30分 
長崎県肥前鳥島(南岩)にて。狙いは60センチオーバー

  • 尾長グレ;3尾(42.8センチ)
  • イサキ;2尾(42.4センチ)
  • タカベ;1尾(計測せず)

5月24日4時〜8時30分 
男女群島(どこかのワンド)にて。17時まで釣りの予定が時化た為、鳥島を撤収し男女群島のワンドにて朝マズメ勝負!!

  • アブラメ;1尾(計測せず)
  • ハマフエフキ;1尾(33.7センチ)

60センチはもとより50センチの壁も越えられず…でも、楽しかったです。

せいいちさん、本当に楽しい釣行記でした。ありがとう♪