釣りのタックル研究室

タックル研究室

どんぐりウキが好き!

読者のSさんから「笑魚さんは棒ウキ派でしょ」という書き込みをいただいた。記事のカットや仕掛け図に、いつも棒ウキのイラストを描いているから、そう思われたのだろう。棒ウキを描くのは、初心者には親しみやすいかなというほどで、特に深い意味はない。もちろん波止釣りにはたいてい棒ウキを使っているから、Sさんの指摘もあながち間違いとは云えないが、僕は円すいウキが大好きだ。

棒ウキのように自作が簡単ではないので、一から作ったことはないが、買ったウキは数知れず、改造や再塗装、果ては水槽実験もかなりやってみた。僕のもっとも好きな釣り道具はウキ、それも円すいウキといっていいかもしれない。最近はウキ道楽から遠ざかっているが、機会があれば卓上ロボット旋盤を買い込んで「1日中遊んでみたいな〜」と秘かに夢見ているのだ。Sさんは師匠がオールドファンなのか、最近ではあまり耳にしなくなったどんぐりウキという言葉を使った。どんぐりという言葉には、少年の日の懐かしさを誘う響きがある。今宵は笑魚のどんぐりウキのお話♪

どんぐりウキとの出会い…

円すいウキというのは、比較的新しい呼び方かも知れない。笑魚が釣りを始めた頃(大昔)は、木玉と呼ばれる白や赤に塗られた玉ウキぐらいしか、釣具屋の店頭には並んでおらず、流体形状のウキはなかったように思う。つまりウキといえば、ヘラウキに代表される棒ウキだったわけだ。

その後十年ちょっと釣りを中断して再び再開すると、いわゆるどんぐりウキと呼ばれる円すいウキが、磯釣り、それもグレ釣りの主流になっていた。円すいウキを駆使する阿波の釣り名人達が、全国トーナメントを席巻したのが、ブームの要因だろう。残念ながら神戸は磯釣り師が少なく、店頭にはいまほど商品が並んでいなかったから、名人ウキを探して大阪のマニア系ショップにまでよく足を運んだものだ。当時、メーカー製のどんぐりウキもぼちぼち出始めていたが、とても欲しくなるような代物ではなかった。それに比べると名人手作りのウキは、見た目はもちろんのこと、仕上がりやフォルムにそれぞれ個性があった。

収集癖があるわけでないが、ついつい欲しいものがあると、2個3個と買い求めたから、およそ名のある名人ウキは全て使ったのではないだろうか(笑) ということで、道具箱には常時100個以上はいつでも転がっていたが、倶楽部の若い子や磯釣りを始めた友人らに、随分分けてあげたから、いまでは使う分以外にはあまり残っていない。最近は磯にも出かけていないが、想い出に残るウキや、これからも使っていこうと思っているウキを紹介しよう。

心に残るウキたち

山元ウキ
知る人ぞ知るグレ釣りチャンピオン山元名人のウキである。名人中の名人だが、作るウキも一流である。笑魚が一番よく使い込んだウキでもある。それだけによく流失したから、相当買い足したはずだ。いまでこそハードコートと呼ばれる塗装が主流になってきているが、これを始めて使ったときは感動した。磯で使うと、どんなウキでも傷だらけになるが、このウキだけはなんと傷つかないのである。

「塗装とちゃうな〜超硬質の樹脂みたいやな」と思っていたら、たまたま会ってお話を伺う機会があり、この塗装の秘密を聞いたところ、エンジンウレタンなどの樹脂系塗料ではなく、なんと接着剤を塗料に使うらしい。恐らくエポキシなのだろう。「塗るんが難しくてよぉ失敗するの。ほなけん売り物にならん分は、自分で使うんよ」と笑っておられた。とても柔和な目が印象的な方で、別れ際にもらったSサイズのG2ウキは、いまでもちゃりこが持っている。

おすすめポイント
  • 強靱そのものの仕上げ、絶対に後悔しないはずだ。
  • 個性的なツートンカラー、釣り場で目立つぞ。
  • L・M・Sと3サイズあるが、サイズ差にめりはりがあり、非常に使いやすい。足元から沖の潮目まで攻略できる。
  • マイナス浮力もお勧め。水中ウキに使うならこのぐらいのサイズが必要だ。
ここに難ありか?
  • 手作りのため、余浮力やフォルムにややばらつきがある。釣りにはまったく問題はないが、微妙な形状や浮力差にこだわるマニアならどうか。
総 評 最新コンセプトのウキから見たら、やや流行遅れの感がないでもないけど、ウキそのものにこだわらへんのなら絶対にお勧め。いわゆる実釣仕様や!

松田ウキ
グレ釣り界の鬼才といっていいだろう。この人の凄さは、潮任せのグレより、読みがものをいうチヌトーナメントで圧倒的だ。だからウキも凄い。流体フォルム主流のグレウキの中では、珍しいソロバン型だ。クラシックかつ時代遅れなフォルムとも云えるが、実は現代でも他を一歩リードする合理性の固まりでもある。いくつか買って使ってみて「ふむ!」と納得できた数少ないウキの一つだ。

いまは松三郎といって、リーズナブルな商品が出ているが、昔は名人製作の松山、お弟子さん製作の松次郎しかなかった。松山は割り込みが入っていて簡単に脱着できるので垂涎の一品だったが、いかんせん高価すぎ(手間が掛かるからだろう)、とうとう貧乏笑魚のレギュラーウキにはならなかった(泣) 書くと長くなるので省略するが、本体への凝ったオモリ仕込み方法や、浮力表示に落としオモリという面白い発想がある。仕掛け操作が上手く、潮が読める人ならば、このウキの素晴らしさがよく分かると思う。ずばり上級者向けである。

おすすめポイント
  • 流すと、仕掛け角度がとてもよく分かる面白いウキ。
  • 水面に張り付くような独特の流れ方をする。
  • 木目が美しく、素材を厳選しているのがよくわかる(松次郎)。
ここに難ありか?
  • 重量が少ないため、軽い仕掛けを遠投できる上級テクニックが要求される。
  • 塗り分け部はエッジが立っているため、ここの塗装が禿げやすい。
総 評 安価な松三郎でも良さは分かると思うけど、松田ウキの神髄を味わうなら松次郎やろね(かなり高いけど)。初心者にはこのウキはわからんやろな。

大知ウキ
広島の兄弟釣り師だ。釣りの実力は伯仲するが、ウキは弟さんが作っている。このウキの良さは糸滑りにつきる。なんと糸を通す孔がガラス管なのである。勤務先が硝子企業ということから出たアイデアらしいが、実用化したのが素晴らしい。当然スルスル釣り専用と考えられるが、スルスル釣りは思うより実際は難しい釣りだ。極小オモリだと道糸が潮の抵抗に負けて、仕掛けが落ちていかない。波気がなくても、せいぜい4ヒロだろう。だから天候や潮に影響される釣りだ。しかし、このウキなら多少波気があっても、細い道糸さえ使えば、G2で充分仕掛けが底まで届く。

試しに若狭のグレ釣りで使ってみたら、釣れる釣れる。喰わないときのスルスル釣りというイメージが払拭された。浅ダナでも効果抜群、ウキが沈むよりも早く、アタリがびーんと穂先に出るから面白い。ウキの抵抗がなくなるので、食い込みがよくなるのだ。このウキには相当釣らせてもらった。一度釣り大会で名人をお見受けしたときに声を掛け、このウキを誉めたところ、大変喜んでくれて「ウキ止めは、絶対結ばんといて下さい」と何回も念を押していたのが、とっても印象的だった。 この人も感じのいいナイスミドルだった。

おすすめポイント
  • 軽い仕掛けでも、充分タナまで落とせる滑りの良さ。
  • S・M・Lと3サイズあるが、Sサイズでもよく飛ぶ。
ここに難ありか?
  • 見やすいウキの部類にはいるが、緑がかった黄色はもうひとつかも。
  • ガラス管なのでツマヨージはダメ。固定したいときはウキ止め糸が必要。
  • 最近のウキとしては、塗装そう強力な方ではないかな。
総 評 太い糸には効果が少ないな。1.5〜1.8号という細い糸を常用する人なら、このウキの恩恵を受けられるはずや。チヌよりグレ向きかな。

宮川ウキ
大阪を代表する全国区トーナメンターで、昨今の2段ウキブームの仕掛け人でもある。飛ばしウキとカヤウキの組み合わせというのは、決してこの人が本家ではないが、この組み合わせで、並み居る強豪をバッタバッタとなぎ倒したものだから、本来ローカル釣法だった2段ウキが磯釣りのポピュラー釣法になってしまった。 僕自身も、九州スタイルの2連ウキから始まり、一時宮川スタイルの2段ウキに凝ったことがある。

宮川ウキは昔から一部の専門店では売られていたが、 コンセプトはともかく仕上がりとしては、他の名人ウキよりちょっと落ちる出来で、僕も手には取ってみるものの購入には至らなかった。しかしあのGREXがOEM販売するようになって、事情は変わった。やはり一流メーカーが作ると違う。名人が培ってきたノウハウを、見た目ですぐ分かるように作り上げるプロダクトパワーがある。凪用のソフトと荒天用のハードの二つがあるが、個人的にはごろりとしたハードが好きだ。ちなみにこのウキにはJapanというロゴが刻まれている。ウキ製品ですらアジア諸国製にとって変わられつつある現状に、メイドインジャパンの意地を矜持しているのか。こんなメーカーが一つぐらいあってもいい。

おすすめポイント
  • ずばりハードLとビックがお勧め。とんでもなく飛ぶ。未開拓の沖のポイントが攻められるはずだ。
  • ロボットで作っているのだろう〜二つ並べても形状が完全に一致している。ウキを紛失しても、買い換えが安心できる。
  • 上下SICリングだから糸滑りがよい。塗装も強くタフだ。
ここに難ありか?
  • GREXのウキ全般に云えることだが、やや余浮力が少なく、沖へ流すと水没するケースが多い。設計の重量基準が僕の常用オモリとは違うか、あるいは他のメーカーよりシビアな管理をしているのか。決して欠点ではないが、もう少し余裕が欲しい。
総 評 凝ってくると、感度がどうのこうのとなるけれど、このウキにはそんな細かいことより、潮読みやポイント選択という基本を教えてくれる何かがあるなぁ。

闘魂ウキ
阿波のトーナメンター薄墨賢二さんが作っているウキである。失礼だが釣り師としての腕よりも、このウキの方が全国には名が知られているのではないか。個人が作って販売しているウキとしては最高峰のレベルに達しているだろう。なによりビジュアルで見た目が楽しい。店頭で見てこれほど目を引くウキはないだろう。一つ一つ丁寧にセンスよいカラーでコーディネイトされたウキはお洒落だ。

派手だから外見に目が奪われがちだが、性能もよい。最近では数少なくなった長楕円のスリムな形状は、円すいウキとしては素晴らしい感度をもつ。いわゆるよくアタリの出るウキと云ってよい。特に重心位置が低いとも思えないが、他のウキより強い復元力を示すところを見ると、使われている桐材がとても比重の軽い良質のものに違いない。何気なく使われている色の塗り分けにも、実は秘密があるのだが、長くなるから省略。ネーミングも面白い。思わず「ダー」と云ってしまいそう(笑)

おすすめポイント
  • 個性的でビジュアルな名人ウキを欲しい人には、有望な選択肢だろう。
  • 遠投性を求められる現代では、少なくなりつつあるスリムな形状だが、それだけに感度はピカイチだ。サイズは負荷に応じて変わるタイプ。飛距離もまずまず出る。
ここに難ありか?
  • 少し割高だが、凝った仕上がりの手間を考えればこんなものか。
総 評 ウキは道具であると同時に、ホビーグッズでもあるということを再認識させるウキやな。見た目だけでなく性能もええ〜。コレクションしとうなるウキや。

お世話になったどんぐりウキへのレクイエム

細かく書くときりがないので、心に残るウキ達をざっと紹介したい。

敬竿ウキ
九州のチヌ釣り名人若松敬竿さんのウキ。指先ほどの小さな円錐ウキで、2連(連玉)にして使う。仕掛け角度の重要性、先ウキの変化を読んで釣る面白さを教えられた。

江頭ウキ
スルスル釣りで有名な名人ウキ。スルスル専用バージョンを始めて使ったときは、その飛距離に驚いた。 以後、スルスル釣りより遠投沖釣りに目覚めたくらい(笑)

釣研ナナメウキ
とっても理にかなったウキ。その発想が面白い。これはミニから大まで買い込み、色々改造をして遊んだことがある。ミニとSSは最高のアタリウキになる。いまでもたまに使う。

藤原ウキ
紀州の藤原名人のウキ。あまり出回っていないが、とても丁寧な作り込みで好感が持てる。名人の人柄がよく出たウキだと思う。手に取ることがあれば、一度使ってみて欲しい。

三原ウキ
名人のお店でよく買い物をした関係で、少しの間使った。復元力が強いのが印象的。昨今では珍しくなりつつある個性的なフォルムだから、いまだに人気があるウキの一つ。

谷内ウキ
阿波の名人ウキの一つ。あまりメジャーではないが、バランスのよい形状、正確な余浮力、タフな塗装と三拍子揃っている。値段がリーズナブルなので若い人にお勧め。

森ウキ
ちゃりこ愛用の名人ウキ。ちょっと小粒だが自重のあるごろんとした潮のり優先のグレウキだ。なぜかちゃりこは、これの4Bがお気に入りで、どこへ行ってもどんなタナでもこれ一本、けったいなやっちゃ〜 右の写真が問題の?森ウキ、ハハハ。

買ったウキ、使ったウキはこれ以外にもまだまだあるが、人生で出会った人達と同じで、時間が経つと印象が薄れていく。やはり惚れ込んだウキ、個性の強いウキが記憶に残る。ワンパターンな釣りで押し通す棒ウキと違って、磯で使う円すいウキは日に何度となく交換して使うから、最低でも十数個は同じブランドで買い込まなくてはいけない。予備も含めると結構な出費になる。それだけにいいウキ、好みのウキに巡り会うと、本当に嬉しいものだ。

ウキが釣らせてくれる訳ではないが…
ウキ釣り師なら、何気なく覗いた釣具店で、おっと思わせるフォルムのウキに出会ったときほど、心ときめく瞬間はないのではないだろうか。このちょっと小さなときめきは、将来なるべきはずの恋人と出会ったような感情だ。個性的で美しいウキに目が奪われるのは当然だが、面白いもので遍歴を重ねると、不思議に目が利くようになる。使ったことがなくても何となく「あぁ、俺にはあわんな〜」などと分かるのだ。

ウキの好みの変遷は、そのまま釣り師の技の変遷でもある。女性に例えると怒られるかも知れないが、一見平凡に見えても、質実剛健で無理を聞いてくれる奥さんのようなウキが、いつしか好みになっていくものだ。海は始終変化する、10分として同じ状態はない。刻々と変わる状況に対応するためには、突出した特長のあるウキより、総合的に平均点の高いウキの方が使いよい。と分かっていても、浮気がしたくなるなぁ、B級釣り師は…