釣りのタックル研究室

タックル研究室

ナイフは男の道具

私の小さい頃は、男の子なら誰しもが肥後守(折り畳みの工作ナイフ)を持って、木を削ったりして遊んだものです。切れなくなれば砥石を引っぱり出し、大人のやり方を真似て、ちょこちょこと研いだものでした。いつしか時代は過ぎ去って、包丁は錆びないステンレス、肥後守は使い捨てのカッターナイフに置き換わり、刃物を大事に使うという習慣はなくなりました。

物騒な事件が起こりますから、ナイフなどは子供には持たせてくれません。どうも刃物=危ない=武器という短絡的発想になるようです。本当はナイフより、どこの家にでもある出刃包丁の方が、よほど凶器なのですが… いずれにせよ、釣りには魚を「締める・さばく・調理する」ということが付き物ですから、ナイフという道具は必需品です。ここでは、普段刃物をさわったことがない人のために、ちょっとしたナイフ選びのコツを書いてみます。 ※写真/ラス・コマー作トラウト&バード

ナイフのあれこれ速習

大きく分けて二つある

ナイフには武器として使える大型のものから、爪をほじくるような小さなナイフまで多種多様なものがあります。構造的に大きく分けると、折り畳めて携帯に安全便利なフォールディングナイフと、刀身がむき出しで柄に固定されているシースナイフの2種類があります。シースナイフはそのままだと具合が悪いので、シースと呼ばれる革製の鞘に入れて携行します。アウトドアでよく使われるものは…

アーミーナイフ

小型のツールナイフです。軍事目的で開発されたナイフでナイフ・缶切り・ドライバーなど身の回りに必要な道具が1本のナイフに装備されています。赤いハンドルに白い十字で有名なスイスアーミーナイフを見たことがある方も多いでしょう。

サバイバルナイフ

文明から隔絶された場合でも、生きていくための道具として開発されたナイフです。映画「ランボー」などでもお馴染みで、仰々しいスタイルが特長です。

ダイバーズナイフ

潜水をするとき使うナイフで、当たり前ですが錆に強い素材で作られています。水中でロープ、海草が絡んだときの脱出などに使うため、ダイバーには携帯が義務付けられているそうです。

ツールナイフ

ユーティリティなアウトドアナイフです。色々な機能が付いていますから、昔は七徳ナイフなどといっていました。ウインガーやビクトリノックスなどのマルチタイプのナイフがおすすめ。最近はペンチがついたものに人気があります。

刃の材質

大きく分けると錆びないステンレスと、切れ味の炭素鋼の二つに分けられます。炭素鋼にも幾種類かありますが、錆びにくい440Cと呼ばれるものと、カスタムナイフに多用されるATS34と呼ばれる良質な鋼が有名です。

ハンドルの材質

柄のことです。樹脂、木、角など色々なものがあります。趣味のカスタムナイフでは実用性よりも、見た目の美しさから惜しみなく高級素材が使われています。

各部の名前

ざっと覚えて置いた方がいい名称は、右の図の通りです。刃がついている鋭い部分はカッティングエッジといい、反対の峰の部分はスエッジといいます。突くことを重要視したナイフには、このスエッジを鋭利にしたものもあり、魚を締めるのには重宝です。シース(鞘)にはたいていベルト通しがついていて、腰ベルトに通せるようになっています。ちなみに写真のナイフのハンドル材はマイカルタといって樹脂の一種です。とても美しく耐久性もあるため、カスタムナイフにはよく使われる素材です。 釣りに向いたナイフは…

料理をするか/しないか?

魚を締めるのが主な用途でしたら、さばくことより突くことがほとんどになります。長い刃渡りは必要ありませんが、刀身を突き立ててもびくともしない頑丈さが大事です。またさばくことが主体なら、ある程度大きい刀身でブレードの幅が必要です。骨も切らなくてはいけませんし、刺身を作ることもあります。小型の出刃包丁スタイルが一番ですね。

釣る魚のサイズは?

渓流釣りでは、腹をさばいて捕食している餌を調べるような用途にも、ナイフを使いますから、小さなメスのようなポケットナイフが主流です。趣味の渓流用ナイフには、いいものがありますね。反対に大きい魚でしたら鱗も固く、簡単に締めたりさばいたりできるものではありません。やはり頑丈さが最優先です。

どこで使うの?

磯釣りでは、ナイフを腰にぶら下げて使うのが普通です。足場が悪く移動しにくいことが大きな理由です。そのためフォールディングナイフよりシースナイフの方が人気があります。しかし波止でシースナイフをぶら下げていたら、ちょっと場違いで恥ずかしいと思います。安全なクーラーボックスのトレーにでも、フォールディングナイフを偲ばせておく方が無難でしょうね。

用途は釣りだけ?

キャンプでもしない限り、釣り用のナイフの用途は限定されます。ですからアーミーナイフのような多機能なものは必要ありませんし、サバイバルナイフのような大げさなものも必要ありません。目的をはっきり絞って購入しましょう。

銃刀法について

アウトドアとか仕事など、正当な業務上の理由なしで、6cm以上の刃渡りのナイフの携帯は違法とされています。幸いわれわれには釣りという目的がありますから、法には触れないのですが、頭に入れておく必要はあります。くれぐれも保管と使用には注意しましょう。

釣り道具として選ぶコツ

釣りメーカーのものなら問題はないが…

基本的に釣り具メーカーから発売されているものなら、まず間違いないでしょうが、カッターナイフの親戚のようなものはお勧めできません。刃のついたオモチャです。魚の鱗というのは思ったより固く、切れ味が悪いとかなり手こずります。思わず手を滑らしたりすると危険です。もちろん切れ味が悪いと、現地でお刺身などというのは不可能です。刃物を購入するときはあまりに安いものはやめましょう。

刃渡りの長さは?

ブレードの長さを刃渡りといいます。5cm程度の短いものでも締めるだけなら用を足しますが、エラを切り落としたり腹を取ったりと、多目的に使うならある程度の長さは必要。とりあえず8〜10cmぐらいが扱いやすいでしょう。ハンドル(柄)の長さはちゃんと握れるだけの長さと太さが必要です。でないと充分な力を込めることができませんよ。

刃の材質は?

海ならば塩で錆びやすいということでステンレスを選びたくなりますが、ステンレスより鋼の方が、数段切れ味は上です。また刃を研ぐのも柔らかい分楽です。ステンレスは普通の砥石では研げません。まめに手入れをするのならば、炭素鋼を選んで下さい。ある程度の高級品でしたら材質が明記されています。錆がいやならばクロームの含有量が多い440Cがいいでしょう。

フォールディングかシースか?

上にも書いたように用途で変わります。本格的にナイフを使いこなしたいならシースナイフの方がおすすめ。可動部分がないだけシンプルでメンテが楽です。また魚を締めるときは片手で押さえておく必要があります。ですからフォールディングナイフを選ぶのならば、片手で簡単に刃を出せる構造のものがいいでしょう。映画「クリフハンガー」をご覧になった方はお分かりですね。

釣り具メーカー以外ならば?

メーカーが既製品として作っているものをファクトリーナイフ、ナイフ作家や工房が手作りで作っているものをカスタムナイフといいます。品質的にファクトリーナイフがカスタムナイフより劣ると云うことはありません。高級なカスタムナイフは実用性より、むしろ工芸品でコレクションアイテムです。釣り具メーカーが販売しているナイフは、ファクトリーナイフから釣りに向いたものをピックアップしたものと考えてください。

使いやすいアイテムは?

一般的にはトラウト&バードと呼ばれる細身のものが使いやすいと思います(下写真)。多少刃の厚みがあるので丈夫ですし、急所をグサリと締めやすい形状です。フィッシャーマンとかフィッシングナイフと呼ばれるものは、身をそぎ切りできるようブレードの薄いものが多く、鱒などの調理にはいいでしょうが、鱗の固い磯魚を締める用途には、ちょっと使いにくいかな。もっとも用途名称と形状イメージが必ずしも一致しない時も多いので、手にとって判断して下さい。

安全対策

ブレードと刃の間にヒルティ(ガード)と呼ばれる突起物がついているナイフがあります。人差し指を事故から保護するものです。調理をしたりするのには邪魔なものなのですが、あれば結構安心感があります。また、大きい魚を締めるときは刃を上下に持ち替えて使うことがよくあります(この方が目の後ろを締めやすい)。ですから、ハンドルを上下逆に持ち替えてもしっくり握れるか、実際に確認して下さい。

一本目なら…

魚の骨は硬くハードに使うと結構刃が欠けます。ポイント(刃先)は特によくこぼれますから、研ぎ直して刃をつけ直すこともよくあります。ですからコレクションするのでなければ、高額なものは必要ありません。ナイフは道具ですから、見てくれより実用性が一番です。切れ味は研ぎ方次第でかなり変わります。いずれにせよ、ちょっと大きめで頑丈そうなものを選んで下さい。

研ぎについて

よほどのカスタムナイフでない限り、通常売られている状態ではそのナイフが本来持っている切れ味はありません。つまりブレードにサンダーで刃をつけ、バフで磨いて出荷しているだけなのです。ですから二千円のナイフが一万円のナイフよりよく切れると云うことが多々あります。砥石で研ぎ上げてこそ潜在性能が出ますが、両刃で固いナイフの研ぎ方はハウツーが必要です。興味があれば専門サイトでお調べ下さい。丁寧にシャープニング(研ぎ)について解説されています。