釣りのタックル研究室

タックル研究室

糸の号数を科学する

釣り道具は近年素晴らしく進歩しました。中でも最もめざましいのが、高分子化学が生み出す賜物である釣り糸ではないでしょうか。昔は1号という糸など本当に小魚しか釣れなかったものですし、そういう糸でチヌを仕留めようと思えば、極軟調の竿を用意しなければいけなかったものです。さて、普段から私たちは「○○狙いならハリス2号…」などといっていますが、実際は曖昧な経験則で話しています。本当のところ号数と強度はどのような相関関係なのでしょうか。今日はちょっとそこらを調べてみました。

糸の号数って?

糸はご存じのように号数で表示されています。しかし実際の太さと号数との相関関係は何を規定に決められているのでしょうか。ちょっとメーカーのラインスペックを参照に検証してみました。

道 糸 号数 1.8号 2号 2.5号 3号 3.5号 4号
東レ
銀鱗SS
※ナイロン
直径 0.225 0.235 0.265 0.285 0.310 0.330
断面積 0.0397 0.0434 0.0552 0.0638 0.0755 0.0855
対2号比 0.917 1.000 1.272 1.471 1.740 1.972
2号=2 1.833 2.000 2.543 2.942 3.480 3.944

上記は東レの最強力ナイロン道糸銀鱗SSの公開データです。私は昔から東レが好きでこの糸も使ったことがあります。視認性は落ちますが、水切れがよく確かにメーカーが云うように10%強い糸です。さて表を見ると、号数と直径にはなんの関連もないことがわかります。しかし、次の2号を1と想定した断面積比にご注意下さい。もっとわかりやすく2号の値を2とすると、ほぼ断面積が糸の号数と同じ比率になっていますね。どうやら糸の号数は断面積に比例しているようです。

ではなぜ断面積に比例しているのでしょうか?一般に線材の強度は断面積に比例すると云われています。その理屈が釣り糸にも当てはまるものならば、糸の号数というのは、強度から割り出されたものと云うことになります。うむ〜賢いではありませんか。もう少し検証してみましょう。

道 糸 号数 1.5号 1.7号 2号 2.5号 3号 3.5号
シマノ
DURA
HISPEED
LIMITED
※フロロ
ナイロン
直径 0.205 0.218 0.235 0.260 0.285 0.310
断面積 0.0330 0.0373 0.0434 0.0531 0.0638 0.0755
対2号比 0.761 0.861 1.000 1.224 1.471 1.740
2号=2 1.522 1.721 2.000 2.448 2.942 3.480
test/kg 3.2 3.7 4.5 5.5 6.5 7
2号=2 1.422 1.644 2.000 2.444 2.888 3.111

このデータは、シマノから出ている複合素材フロロナイロンの道糸です。これも使ったことがあります。とても強い糸ですが、よく滑るのでしっかり結節できる結びでないといけません。また呼称よりだいぶん太いようです。恐らくインナーガイドに対応させるための、コーティング仕上げの厚みがかなりあるのでしょう。ですから表はコーティング分を除いた太さのようです。さて、この表を見ると太さそのものは、東レもシマノもほぼ差がありません。つまり生産者による糸の太さの差はなく、一応業界規格に準拠しているのがわかります※。

このラインにはテスト強度が表示されています。前記の仮説が正しければ、糸の強度も断面積に比例しているはずですが…。黄色い欄と青い欄を比べて見て下さい。断面積値よりも下回りますが、ほぼ同じような傾向が確かめられます。つまり、糸の号数は強度とほぼ比例しているのです。さぁ〜糸の選択が楽になりましたね。糸の号数は単に太さ表示だけではなく、強度表示としても根拠があったのです。つまり3号の糸は1.5号の倍の強度と考えて間違いないようです。

せこい?はなし
昔フロロカーボンが初めて世に出たときのことです。根ズレ強度はフロロの方が強いのですが、直線強度はナイロンの方が大分強いのです。そこでこのメーカーは直線強度の弱さを補うために少し太くして発売したのです。しかし、めざとい釣り人はいち早くそのことに気付き、物議をかもしたことがあります。面白いですね。

ならばPEラインは?

ナイロンはよくわかりました。しかし船釣りではご存じハイテクラインPEが使われています。またルアーや最近のインナーガイドロッドの普及で、PEラインを使う人が増えています。強いといわれるPEライン、全く性格の違うモノフィラメントと撚り糸を比べるのは難がありますが、一度比較検証してみましょう。

道 糸 号数 1.5号 1.7号 2号 2.5号 3号 3.5号
シマノ
DURA
HISPEED
LIMITED
※フロロ
ナイロン
直径 0.205 0.218 0.235 0.260 0.285 0.310
断面積 0.0330 0.0373 0.0434 0.0531 0.0638 0.0755
対2号比 0.761 0.861 1.000 1.224 1.471 1.740
2号=2 1.522 1.721 2.000 2.448 2.942 3.480
test/kg 3.2 3.7 4.5 5.5 6.5 7
2号=2 1.422 1.644 2.000 2.444 2.888 3.111
ダイワ
イソセンサー
※PEライン
号数 1号 - 1.5号 2号 2.5号 3号
直径 0.180 - 0.225 0.265 0.290 0.315
断面積 0.0254 - 1.000 0.0398 0.0552 0.0660
対1.5号比 0.640 - 1.000 1.387 1.661 1.960
対1.5号 0.960 - 1.500 2.081 2.492 2.94
test/kg 5.5 - 7.5 9.0 11.5 15.0
対ナイロン比 1.72 - 1.667 1.636 1.770 2.143

太さの基準が違うために比較しづらいのですが、一応似通った直径のモノ同志を比較してみました。PEラインの黄色い欄をご覧下さい。ナイロン以上に強度が断面積に比例しているのが持て取れます。ふむ〜確かに号数は強度をほぼ正確に比例表示したものである、と言い換えて間違いないようです。

さてこうしてチェックすると面白いことがわかります。通常PEラインの強度はナイロンの2倍以上とされていますが、それはあくまでも同じ号数呼称で比較した場合であって、ちゃんと太さを揃えると倍ほど強くはないようです。この表からわかる限りのことですが、ここでPEラインを使う上での注意点をちょっとまとめてみましょう。

  1. PEラインの直線強度は確かに魅力だが、結節強度が40%と著しく落ちる点、根ズレ強度に劣る点を考えると、仕掛け全体の強度が飛躍的に高まると考えるのは危険。障害物の多い釣り場ではむしろ下がる可能性がある。
  2. 風、波に弱い・あわせ切れしやすい・糸絡み・高価・ほどけるという欠点をも考慮すると、波止釣り・磯釣りでレギュラーの座を占めるものではない。
  3. やはり類い希な感度の良さを活かして、投げ釣り・船釣りが一番の適正な使い方といえる。もちろん大物釣りにも有効。
  4. 表から分った限りでは、一般的なスピニングリールでPEラインの糸巻き量を決める場合は、0.5号サイズを落とせばナイロン表示の同じ糸巻き量になる。つまりナイロン3号150m巻き表示のリールならば、PE2.5号が150m巻ける。

予めPEラインを巻くことを予想している船釣り、投げ釣りリールではPEラインの巻き量はちゃんと表示されています。

肝心のハリスは?

ハリスについては私が調べたメーカーに限り、テスト強度は公表されていないようです。道糸はともかく、ハリスの強度が数字で出たら売上に絶対影響しますよね。海釣り道場の読者なら、もぅ〜うるさいですから大変です(笑)おそらくメーカー同志の紳士協定で、公開していないのではないでしょうか。まぁこの点に関しては、大目に見て上げましょう。ということでハリスも一応、断面積に準じて考えるとよいと思います。われわれ小物釣り師が、ふだん常用する号数の断面積数字で、チェックしてみましょう。

ハリス 号数 0.8号 1号 1.2号 1.5号 1.7号 2号
某社製 直径 0.148 0.165 0.185 0.205 0.218 0.235
断面積 0.0172 0.0214 0.269 0.0330 0.0373 0.0434
対1号比 0.805 1.000 1.257 1.544 1.746 2.028

当たり前ですが、太さは道糸・ハリスとも同じです。実際はコーティングされていますので、微妙に太さが各社違うはずです。さてこうやってみると中途半端な1.2号や1.7号も存在価値があるのが分ります。1.2号で(対1号比)推定25%以上、1.7号で(対1.5号比)推定13%強度が上がるようです。ただ効果が著しい1.2号と比較すると1.7号は半端です。この号数になると大物狙いになりますが、安心を買うのなら表から見る限り、2号を選択した方が間違いないでしょうね。

逆にチヌ釣りでは細ハリスの下限とされている0.8号は、関西のチヌ釣り師の標準的サイズであると思われる1.5号の強度の約半分と云うことになります。弱いな〜と思う反面、意外と強いものですね。タックルバランスを整え、結節力強化につとめれば、いい加減な1.5号仕掛けと、そう遜色のない仕掛け作りが可能かも知れません。要は直線強度ではなく、結節強度がものを云うのですから…。

材質の特性も考えよう

最近は複合素材のラインも出ていますから、ずらっと並んだ陳列棚の前で、皆さん財布と相談しながら色々考えておられるはずです。ここでは現在主流であるナイロンとフロロカーボンの特性について解説します。参考までにナイロンとフロロカーボンの特性を列記します。

特性 ナイロン フロロカーボン
透明性 透明性大 やや透明性に欠けるが水中で見えにくい
沈降性 シンキング、フロートの両タイプ可能 比重が高く、沈降速度が速い
硬さ しなやかでリールによく馴染む 適度な剛性があり、早い潮流に巻き込まれにくい
吸水性 吸水してさらにしなやかになり、クセが取れやすい 殆どゼロ、水中でも強力が変わらない
耐磨耗性 コスレに弱くキズができると切れやすい コスレに強くキズが入っても切れにくい
伸び 伸縮性に優れ、衝撃に強い ナイロンよりも伸びは少ないが、適度な伸びはある
資料)東レフィッシング

こうして見ると分るように、ナイロンの特性は道糸に向いていますし、フロロカーボンの特性はハリスに向いています。しかし最近は技術の進歩でフロロカーボンでも、ナイロンに近いしなやかさを持つものが現れてきています。またナイロンも、より各分野に適合した特性を持つものが開発されています。フカセ釣りに向いた中空ライン、ナイロンでも瀬ズレに強いコーティングを施したもの、あるいは欲張って複合構造にしたものなど百花繚乱です。まだまだこれから進歩すると思いますから、目が離せませんね。

強度と使い心地のバランス

糸は直線ではとても強いものです。試しに2号ハリスを手でもって引っ張ってみて下さい。まず切れないはず、下手をすると怪我をするはずです。しかし現場ではあっさりプッツンと云うことがよくあります。太い細いを云う前に、なぜこうなるかを考えなくてはいけません。

  1. 障害物に接触させるな
    磯では海底の根、波止ではテトラ、筏ではロープがその原因になります。いずれも貝や牡蠣が付着していますから、するどい刃物のようです。いくら強力な糸でも一発でサヨナラですね。糸や仕掛け作り以前に、やり取りの技、一瞬の情勢判断が求められます。また知らず知らずの内に傷が付いていることがあります。小さな傷でも糸が伸びているときは、裂けるように破断するのです。

  2. 吸水すると強度は落ちる
    ナイロンは数時間も塩水に浸かると、20%程度強度が落ちるという報告があります。吸水すると劣化し強度が落ちるのです。太いはずの道糸が高切れする一因です。ならば吸水しないフロロカーボンが間違いないかというと、これもものによっては強度が落ちるという報告があります。ここらは自分の経験で判断して行くしかないようです。長時間細ハリスで釣るときは、たまに結び替えて下さい。ラインは白濁してきますので、その対策にもなります。

  3. 結ぶと強度は落ちる
    皆さんハリスの細い太いはいいますが、私は○○結びで結んでいるが…という人を見かけたことがありません。そんなに自分の技術に自信を持ってはいけません(笑)この点は英語の好きなルアーマンの方が研究好きのようですよ。あるメーカーのテストによると、ユニノットいわゆる電車結びは60%以下のライン強度しか確保できないそうです。私自身のテストでも、数ある結びの中で最弱という判断でした。これでは細ハリス云々以前の問題になります。強い結びとそれを結ぶ技術は、釣果向上に欠かせないもののようですね。

  4. ラインは劣化する
    糸は塩気、紫外線、高温に弱いものです。車の中に竿ごと放り投げている人をみますが、そういう人に喰わせ仕掛けを語る資格はありません。毎回巻き替えろとはいいませんが、やはりたまには塩気をぬるま湯で取る、高温の時期はトランクに入れっぱなしにしない、直射日光は釣り場以外では決して当てない、この程度の配慮は最低必要です。

  5. パーマネントは釣果を落とす
    糸撚れは穂先絡みの原因になったり、飛距離が落ちたり、ろくなことがありません。にもかかわらず、信じられないほどよれた糸を使っている人がいます。まず平均以下の釣果しか手にしていないはずです。まぁ道具に無神経だから、釣りにも無神経ということは云えるでしょうが、撚れた糸は釣れないのです。食いがずずずと落ちます。なぜか〜撚れた糸は海中で馴染みません、当然タナまで落ちていかないこともありますし、速い上層流に仕掛けを取られることもあります。喰ってもたるんでいますから、アタリが素早く出ません。付け餌を離すことも多いでしょう。名人がハリスをしょちゅうしごいたり、傷んでいない糸でも替えるのはこういうことも大きい原因なのです。思い当たる人は、心を入れ替えましょう(笑)

  6. 自分の釣りにジャストマッチした専用ラインを使え
    以前はいまほど糸が多様化していなかったので、私も状況に応じてウキ釣りに、筏用の糸やルアーラインを巻いたことがあります。自分がその時求める性能の糸が、市販されていなかったからです。しかし現在では、およそ選択に困るほど色々なラインが販売されています。厳しい経済状況の中でメーカーも必死です。ここは彼らを信じましょう。あえてへそ曲がりな使い方をする時代ではありません。お洒落にコーディネイトする時代です。

  7. 色々使ってみよう
    高い糸でもピンとこないときもありますし、2流ブランドの安い糸でもしっくりくるものがあります。スカの糸に当ると、釣りづらくて嫌になります。ここら辺を1回使ってすぐつかめるようになるには、やはり相当色々な糸を使って、自分の好みというものを確立しておかなければいけません。また強度だけで糸を判断しないことです。特に道糸には様々な要求をこなす役割がありますからね。ちなみに私はT社、M社が好きです。釣り方で使い分ける必要がありますが、小遣いのあるときはこの2社のプロパーを購入しています。小遣いの少ないときは新商品ウォッティングを兼ねて、使ったことがなくしかも新しい特価の糸を購入しています。いい糸に巡り会うことができるかも知れないですし、なんとなくわくわくします。浮気と一緒ですね(笑)

最後に…

私が思うに釣り道具の中で一番大事なアイテムは、ラインです。ラインを知ることは釣りを知ること、潮を読むこと、魚と対話することにつながります。釣りの技とは言い換えれば、いかにラインを操るかと云うことです。いつでもラインのことを思い浮かべて釣りの準備、実行、片づけを心がけて下さい。その習慣が、必ずやあなたをライバル達とは一味違う釣り人に育ててくれるはずです(^^)b