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竿は釣具業界を悪くする?

体を壊して手術して以来、釣りから遠ざかっているので、コラムもネタ不足となり、楽しみ?にしてもらっている読者の皆さんには申し訳ないと思う。そこで、今日はちょっと釣りから離れて、道具好きの皆さんにも共感してもらえるようなコラムを書いてみたい。

釣りの道具といえば、まず竿、そして次にリールと来ると思う。サイトを開設して気づいたのだが、まぁ竿好きな人、竿へのこだわりの多い人が多いのにはびっくりしてしまう。曰く…

「 980円で買ったバーゲン竿ですが、いろんな思い出があり、とても愛着があります。修理して使えないでしょうか?」とか
「 死んだ父親が大事にしていた竿です、磨いてやろうと思います」
「貯金をはたいて買いました。今晩一緒に風呂に入ります」
「折れました、自分の骨が折れるより辛かったです…」

う〜ん、リールだとこうはならない。竿と一緒に風呂に入る話は何度も聞いたが、リールと一緒に入るというのは、まだない。大体、竿は武士の刀と同じという例え話をする釣り人も多い。釣りに一番大事なのは糸、次に鈎というのが僕の自説で、力の伝達を考えれば、誰にでも分かる簡単な理屈だと思うのだけれど。早い話が糸と鈎があれば釣りは出来る。それほど重要なのだ。竿やリールは所詮、釣りを便利にする小道具、脇役でしかない。しかし、たいていの釣り人は、貯金をはたいて竿を買っても、糸などたいていバーゲン品、下手をすると1年巻き替えしないという釣り人も珍しくない。

本当に不思議な現象だが、これも日本人の合理精神の欠如から始まる情緒偏向の気質かも知れない。かくいう筆者も、ファンダメンタルは桜に日の丸だから大きな事は云えない。いずれにせよ日本人は竿が大好きだ。リールは予算不足で落としても、竿は歯を食いしばっていいものを欲しがる。読者のみなさんで「僕はそうでもないなぁ〜釣り具は適当、安けりゃいいけど…」という人がいたら、この記事は読まない方がいい。所詮、釣り人など頭のおかしい人種で、こだわりすぎて最後には何にこだわっているのか、周りにも本人にも分からなくなるという困った人種なのだ(爆)

脱線してしまったが、要するに釣り人は竿が好きで好きで仕方がない。この偏重主義は困ったことに、いい周辺機材の開発や市場育成をスポイルしてしまっている。ちょっと皆さんにも考えて欲しい。例えばパソコンを例に取ると、パソコン本体だけでなく、星の数ほどのソフトや周辺機器があり、それぞれが絡み合って市場を形成している。そのどれもが厳しい競争から生み出されてきたコストバリューの高いものばかりだ。これはカメラの世界でも同じである。趣味の世界からプロの世界まで、それぞれの使い手のこだわりとニーズに応えて、多種多様なグッズ、ギアが生まれてきている。

が、釣りの世界は何とも嘆かわしい。最後は糸と鈎でも間に合う世界なのだからか、およそ竿とリール以外はダメだ。まともなものがない。江戸時代の職人の世界の方がよほどマシで、これぞ趣味の逸品というものがいまに遺されている。昨今は最先端技術を取り込んだカーボン竿や、コンピュータで設計され、NC工作機で製作されたリールが当たり前だけれど、ちょっと周りを見回して欲しい。筆者が釣りを始めた頃から、殆ど進歩していないチープなグッズ、用品であふれかえっている。水汲みバケツ、バッカン、玉網、道具入れ、エトセトラエトセトラ。こんなアンバランスさは釣り具だけではないだろうか。ハイテク商品と100円グッズが玉石混合、それを誰も不思議に思わないのが、いまの釣具店の陳列だ。少なくとも筆者が若い頃の釣具屋はもう少しバランスがとれていたように思う。

よい商品はよい客を育てる。よい客もよい商品を育てる。竿、リールはまさにその好例だ。もっとも音声が出てくる胴付きリールまで行くと、余計なお世話だけれど(笑)百円グッズも裸足で逃げ出すチープなグッズ、ファッション性のかけらもなく、釣り場以外ではおよそ着られない恥ずかしいウェア、勝手が悪く不便を強いられる用品に誰も文句は云わないのに、竿となると目の色が変わる。

「う〜ん、この穂先の感度がええわ、なんともいえん♪」
「細ラインはこの調子でないと〜いまから使うのが楽しみ♪」
「竿は○○やな、腰の強さがちゃうわ!」

別に竿を替えて釣果が上がるものでないことは、当の本人がよく知っている。ゴルフクラブのドライバーを替えてもスコアが伸びないのと同じ理屈である。しかし竿は釣り人の魂ぐらいに思いこんでいるから、毎年毎年超高額品が売れ続けるのである。残念ながら周辺機材には目もくれないから、数社を除く大多数の釣り具製造業はいつまで経っても育たない。

例えば、投げ釣りの三脚を見て欲しい。竿やリールのハイテク化、高級化とは裏腹に情けないぐらいチープ、時代遅れである。これはメーカーの功罪だけでなく、釣り人の美学、こだわりのなさにも原因があると思う。一度カメラ屋に行ってカメラ用三脚を見て欲しい。素晴らしい組み立て精度、運んで負担にならない軽さ、使い勝手のよさを持っている。デジタルカメラだけでなく周辺機材も進歩しているのだ。同じ三脚でも月とスッポンだ。価格にそんな大きな差はない。釣りの三脚はその品質を考えると、ぼったくりである。飛距離を云々する釣り人ならば、ぜひ三脚もいい物を選択して買って欲しい。いい物が売れれば、あるいは文句を云えば、メーカーももっといいものを出すはず(…と思うが、社名が浮かぶと、あかんなぁ〜と思ってしまう管理人だった)。

釣り具を作っているのはメーカーだけではない。巷にもクラフトシップあふれる専門工房はたくさんある。伝統の細工物、石鯛用のピトンや落とし込みリール、その他、素晴らしいものが結構ある。竿だけに心を奪われず、ぜひそういった名品もどんどん使って欲しい。性能、仕上げはもちろん期待を裏切らないはずだし、何より持つことに喜びを覚えるはずだ。来年にはバーゲンで売りさばかれる高級竿と比較したら決して高価ではない。スペックだけでは図れない匠の技を感じて欲しい。こういった逸品を使うと、日本人のもの作りの確かさを味わうことが出来るはず。現在流通しているアジア諸国生産の釣り具とは、やはり一味も二味も違うのだ。

竿にこだわるほど、釣り具業界は悪くなると云った意味がおわかりでしょうか(爆) 釣り具業界、特に零細釣り具メーカーを育てるのは、皆さんの購買意欲だけです。竿だけにこだわらず、どんどんいいもの、いいグッズを見つけ使って下さい。釣りが楽しくなるはず。管理人からもお願いします。