笑魚のB級コラム

B級コラム

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忘れ物のおはなし

釣り人が身振り手振り面白可笑しく語る釣りの話しといえば、大漁の話(90%はホラ)と坊主の話(100%真実)に大別されるが、口に出したくない(=思い出したくない)話もある。本当に面白いのはこの手の話だから、そこらへんの想い出を語ってみよう。色々あるけれど、今日は忘れ物のおはなし。読者も同じような経験がたくさんあるはずだ(爆)

五防の夜風は寒かった…

神戸港には新旧色々の防波堤があるが、釣り人に人気の高いのは通称和田防と、長さを誇る七防である。ここらへんはよく通ったが、ある年の初冬、目先を変えて五防に渡船で渡った。

狙いは落ちの大スズキである。北風が吹き出し水温が低下する時期になると、ハネのアタリは遠のくのだが、代わりに落ちに入る前のスズキが一時期面白くなる。おおむね良型である。そこで色々検討の結果、確率が高いだろうと予測される五防を選んだ。五防は神戸港としては小さく短い防波堤で、かなり地方寄りであるところから、そう釣り人に人気のある釣り場ではない。要は穴狙いである。

半夜釣りなので夕方の渡船で渡った。あまり人気のない釣り場なので降りた釣り人は3人、筆者とベテランっぽい波止釣り師、閑を持て余していそうな爺さん釣り師の面々だ。いずれにも面識はない。筆者はポイントの善し悪しより、混んだ釣り場はまず敬遠するようにしている。魚が釣れる釣れないより、まずはゆっくりのんびり釣りを楽しみたいからだ。特にウキ釣りは、仕掛けを流す範囲が広範囲になるので、隣の釣り人との悶着が絶えない。相手もベテラン、それも釣りがよくわかっている釣り師なら暗黙の了解が働いて、双方うまく仕掛けを流せるが、素人相手ならどうしようもない。ゆえに空いた釣り場が一番だ。

当日の仕掛けは得意!坊主知らずの「エビまき釣り」だ。さて日暮れと共にやや風が強くなってきた。神戸名物「六甲下ろし」が身に沁みる。適当な場所に釣り座を占め、背中に風を受けるようにして、仕掛けを流す。まずめの絶好時だがアタリは出ない。水温が下がっているのだろう、タナを少し深めにする。やがて日が暮れて当たりが暗くなってきた。

「よ〜し、日本海軍得意の夜戦じゃ!」

夜釣りを始めるべく、昼夜兼用小型フカセウキ、愛用の「列島フカセ4B」にケミホタルをつけようと、ポケットを探ると・・・

「げろ!ない!ない!わすれたぁ〜〜」

悲惨である。ケミホタルをつけていない夜釣りのウキ釣りなど、肉の入っていないすき焼き、化粧を忘れたニューハーフより劣る。沖の一文字だから、釣具屋に走るわけにも行かない。パニックが襲う。「中年釣り師仕掛けを忘れて、絶望のあまり入水自殺!」明日の神戸新聞の見出しが浮かぶ…。くそ!とばかり周囲をみたら、20mほど離れたところで、一緒に上がった釣り師が夜釣りの準備をしている。手元を見ると電気ウキ仕掛けらしい。ケミホタルは持っとらんやろな…。

「あの〜すんませんけど、ケミホタルを持ってはらへん?」
「ケミホタル?あったんとちゃうかな?サイズは?」
「はぁ〜25やと助かるんですが?」
親切な釣り師は、道具入れをかき回していたが、
「1袋だけやったらあるけど」
「あぁ助かった、分けて下され♪」

ラッキー、やはり普段の行いがよいので天の助けがあった。これで釣りが続けられる。料金を支払おうとしたが、お金を受け取らない。

「困ったときはお互い様やからね♪」
神様、この人の人生に幸がありますように〜。

るんるん、釣り座に戻って、仕掛けを再チェック。夜釣りなのでハリスを太めに変えようと、何気なくケミホタルの袋をケーソンの露面に置いたとき、風速15m一陣の六甲下ろしが!

「ぎゃ!おぉ〜まいがぁ〜」

あわれ、もらいもののケミホタルは意地悪な北風に飛ばされ、大阪湾の藻くずとなったのである。ううう、落ち目に祟り目、マーフィの法則とはまさにこのこと。もうええ、ウキ釣りだけが釣りやない。際でミャク釣りでもすることにしよう。磯竿やから持て余すが、これも仕方がない。もらったケミホタルを使わない姿を見せるのはさすがに恥ずかしいので、場所を遠く移動する。トホホ。

じじい!そばに来るな!

とぼとぼと歩いて、ケーソンの端近くに釣り座を取った。落とし込みを長らくやっていたぐらいだから、際釣り(ヘチ釣り)は決して嫌いではない。しかし長く重い磯竿ではなんとも面白くない。穂先でアタリをとるといっても夜釣りだから、穂先にケミホタルをつけないと前当りは取れない。仕方ないので重たい中通しオモリを付けて手でアタリをとる。びびび〜んと穂先に来るアタリが楽しいのだけれどなぁ。

エビまき釣りの予定だから、マキエをパラパラと手でまきながらの釣りである。磯竿だからどうもピンとこない。腰を落ち着けているから、際釣りというよりは、ズボ釣りスタイルである。その日は活性が低く、ガシラを2〜3匹釣った後はアタリが途絶えてしまった。

「アァ〜忘れ物だけは、いつも気をつけとるのになぁ…」

ため息をつきながら、エビをまいていると、潮下から黒い人影が。仕掛けを上げ下げしながら近寄ってくる。一緒に上がった爺さん釣り師だ。そのまま通り過ぎていくかと思えば、潮下数mの位置に腰を落ち着けたらしい。さすが歴戦の波止釣り師、こちらのマキエを当てにした作戦だ。くそったれ〜、今日は思い切り機嫌が悪いぞ。

そのまま10分ほど経った頃、いきなり爺さんの足元でジャブジャブと水音が。目を暗闇に凝らしてみると、でかいスズキやんか。推定70cmぐらいだ。タモがいるやろな〜爺さん持ってきてないな〜貸したろかな〜声かけてきたら、貸さなしゃぁないなぁ〜しかし、あのスズキはわしのコマセで寄せたスズキやで〜しゃくやなぁ〜

と思って見ていたら
「ぷつん!」
はいさようなら、ふふふ。人の不幸を喜ぶ未熟なわたし(^m^)
いずれにせよ時合いや。気合い入れていこうと、タナを上げて潮上にエビを撒く。

と、思いきや爺さんがすりすり寄ってくる。どうやら味をしめたらしい。了見の狭いことはお互い云わない、というのを信条にしているが、やはり不愉快である。そのうち、すりすりが加速、とうとう1m足らず体温が臭ってくる至近距離で、竿を出し始めた。

「人のコマセで釣るな!ばかたれ!」

年甲斐もなく、爺さんを怒鳴りつけてしまった。ごめんなさい。ストレスが溜まっていたのね。小物でも忘れると釣りにならない、しいては喧嘩沙汰?にもなるという教訓でした、お粗末。