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マックな日々「黎明編」

TEAM1000の常連さんが綴った「PCな日々」というコラムを楽しく拝見した。不肖の息子ならぬ愛機が繰り返す入退院に、愛想を尽かすというよくあるお話だが、読んでいて自分自身のパソコンライフを、つい懐かしく思い出したりした。※写真はMacintoshQuadra800/一世を風靡したMotorolaの32bitチップ68040を搭載した上級モデルに貼り付けられていたエンブレム。管理人も2台購入して酷使した(^◇^;)

ご存じかもしれないけど、PCという言葉は本来IBMの商品名であって、パソコン一般を差す言葉ではない。だから、僕のパソコンライフで重きを占めてきたMacintoshはあくまでもPersonal computerであって、PCとは呼ばない。

Macintoshというのは米国アップル社のブランドだ。アップルといえば、ビルゲイツなど足元にも及ばないカリスマ、スティーブ・ジョブスが興した会社で、彼は草創期にあまりにワンマンを通したものだから、赤字になった途端に株主から総スカンで会社から放り出されたりした。現在はCEOにカムバックして、iMacの大ヒットを飛ばしたことは、皆さんもよくご存じのはず。彼は超一流のコンセプトメーカーだ。素人にパソコンを身近にさせたマックのGUIとマウスは有名だが、そのほかにも、ソニーのフロッピーを世界で始めて採用したり、ハードディスクやCDROMをパソコンに初搭載、標準でSCCI&ネットワークを装備、お手軽USBの採用、その他数えれば切りなし…何でもかんでもやることが世界初でないと気に入らないらしい。

インターネットの標準言語HTMLも、元々はアップル社にいた技術者が開発したものだし、ジョブスが放り出された原因は、手の平コンピュータの開発でとてつもない損失を出したからだ。この遺産は現在、皆さんも知っているトップブランドパームトップなどに生かされている。当時はあまりにもハードの性能が低く、先進のコンセプトを実用化しきれなかったのだ。我々が普段恩恵を被っているパソコンの技術、あるいはコンセプトは、その90%がアップル社すなわち、スティーブ・ジョブスが実用化・普及化したと云ってもいいかもしれない。SONYのようにありたいというのが彼の口癖だという。確かにアップルはパソコン界のSONYだ。そうそう、Macintosh初期のノートブックパソコンPowerBookがソニーのOEMって知ってた?面白いね。

この人は、アップルから離れていた時代にNEXTという会社を起こすのだが、大体先見の明がありすぎてよくこける。斬新なOSを装備したUNIXベースのマシンを世に問うたのだけど、インターネット時代には早すぎた。いまなら売れるやろね。ご多分に漏れずNEXT社は経営困難に陥いるのだけど、なんと今度は映画プロデューサーにアニメ映画を作ろうともちかけ、資金を引き出すことに成功、まんまと自社で制作を請負い、起死回生大ヒットで大儲けするのよ。これが世界初の3Dアニメ「トイ・ストーリー」 一体、こういう天才の頭の中には、何が詰まっているのやろね。

そもそも、その卓越した性能でパソコン界のポルシェと呼ばれたMacintoshが、なぜ我が貧乏事務所に導入されたか?一言でいえば「ギザギザが出ない文字がプリントできる」という情報に飛びついたからだ。その昔パソコンの出力といえば、がちゃがちゃとタイプのようにインパクトするドットプリンターが当たり前で、ギザギザの出ない文字を出力すると云うことは夢のまた夢だったのである。しかしMacintoshなら滑らかな文字を印字することが可能であり、しかも米国では製版フィルムが出力でき、すでに新聞などは電子化に移行しているという。「おぉ〜!凄いやんか」 

当時デザイン事務所で印刷物の原稿を作る時は、写植屋さんという所で印刷用の高解像度文字を写真に焼いてもらい、それを台紙に切り張りして原稿を作っていたのである。絵を描いたり線を引いたりするのも、全て手作業〜年期の必要な職人仕事だった。それをすべてMacintoshなら機械が肩代わりしてくれるという!僕の事務所は元々店舗デザイン系で、グラフィック屋ではなかったが、時節柄プレゼンテーションの仕事が多いので、半分グラフィック屋に近くなっていた。渡りに船だ。

一昔前のある年の春うらら日。貧乏事務所の一室で事情通のデザイナーと話をした。彼はすでに一財産Macintoshに投入している。

「夢やんか!その機械はどういうの?」
「Macintosh〜」
「はぁ?イタリアの家具?」
「あのなぁ〜Appleは知っとるやろ」
「知っとるわ」
「Macintoshはカナダ産のリンゴ。美味しいらしい…」
「はっ???・・・・」

などという不毛な会話を繰り返しつつ、情報を収集すると、どうやら日本語バージョンのMacintoshが発売されたという。一番大事な書体も、モリサワ(写植メーカー大手)から発売されたところで、商業印刷に耐える実用品質だという。このフォントは専用プリンターに搭載されるらしい。日本人にもMacintoshのリッチな世界が手に入るのだ。

「なんというてもポストスクリプトや!これがものをいう」
「何それ〜?」
「ギザギザを出さへん技術や」
「ほぉ〜そのぽすとなんたらすとりっぷというのは、なんぼするの」
「これはプログラムのことやから、機械とちゃう」
「ようわからんなぁ、要はプリンターはいくらなのよ?」
「A4モノクロ2書体搭載150万円、値引きなし!」
「ぎゃああああああああ〜〜〜!!!」

いくらぎざぎざが出ないとはいえ、モノクロで明朝とゴシックたったの2書体。色や書体を駆使するデザイン事務所では話にならない。おまけにA4!デザインでは少なくともA3が必要。一体何に使うのよ…

「いくらなんでも2書体では…」
「簡単にオプションで追加できるよ、何書体いるのよ?」
「 そやね…見出しがいるなぁ、ゴナ系は絶対欲しいし、最低8書体かな」
「1書体10万円やから〜80万円やね」
「ぎょっ!ぎょっ!ぎょえ〜〜〜〜!」

こいつ、わしをなめとるのとちゃうか〜シャブ売る暴力団でも、もうちょっと相手の財布の中身を考えよるわ!

「本体はいくらするのよ(-_-;)」
「何台いるの?」
「最低2台」
「それやったら、とりあえず入門機にしとき〜ハイエンドは無理や」
「 そない高いの?」
「 高い!けど入門機は安い〜2台で100万あったら買えるやろ♪」
「お〜まいがぁ!!ふぁっくゆー!!」

善意の相談相手が、悪徳商社の営業マンの顔に見えてきた。

「専用テレビもいるのとちゃう?」
「あぁ〜モニターのことね」
(ふん!偉そうに…)
「本体に付いてるわね?」
「別売!別売!」
「やっぱり…」
「DTPやったら大画面かつツインモニターでないといかん!」
「なんやわからんけど〜言葉の響きがフルチューンみたいで、恰好ええなぁ♪」
「いわゆるスタジオ仕様や!」
「おぉ!それでいこ!なんぼや!」
「21インチが70万、それにビデオカードがいるなぁ、フルカラーは50万かかるで〜。サブモニターのビデオボードは内蔵でいけるやろ。小さいサブモニターは安い〜13インチやったらカラーで8万ぐらいや。トータルで130万あったら足りる。あっ、2台か、ほな260万や」
「は、は、はひふへほぉ〜〜〜〜〜(驚愕で声が裏返る)」

一部上場会社だけやで、こんなやくざな買い物できるんは・・・・・・。パソコン界のポルシェちゅうのは、値段のことやったんかいな(-_-;)

「ひょっとしたら、ソフトもいるわね〜(おそるおそる言葉をだす)」
「DTP3種の神器がいるな。Photoshop、Illustrator、PageMakerや。英語版やけど、PageMakerはこないだ日本語版も出たらしい。画像ソフトは英語版でも充分使えるで♪ 他に欲しいもんはある?」
「えぇと・・・表計算ソフトとワープロ、プロジェクト管理のソフトも欲しいな。なんぼぐらいかかるんやろ(先に予算を聞いておかねば…)」
「ふむ〜PhotoshopとIllustratorが各15万、PageMakerが18万、Excelが8万ちょっと、MacWriteは5万ちょっとや。MacProjectは15万ぐらいしたんとちゃうか?」
「ということは… 70万ちょっとか(だんだん数字に麻痺してきている)」
「マックはコピー天国やから、一本ずつ買うだけでええわ」
「それって〜ひょとしたら慰めのつもり?」

これで全部か、凄い買いもんやなぁ〜元はとれんな(-_-;)
※注)当時ソフトはいまより大分高かった。平均3倍くらいか

「もう〜これで全部やね?」
「OSは付属やし…、あぁそうそうメモリーがいるわ。1Mしか積んでないから、画像処理するんやったら16M追加した方がいいなぁ。2台分で4Mを8枚買うとき!」
「メモリー?(記憶?愛のメモリー?)」
「RAMのことよ。パソコンの部品よ」
「ラム?(アグネス・ラム?子羊肉?)」
「RandomAccessMemoryの略ね」
「・・・・(ランダムに記憶にアクセスする?アクセスってなんやったかな?成功するゆうことやったかな?ランダムに記憶に成功する?時々思い出すということか?ええ加減な部品やなぁ?もうええわ〜〜)、なんぼかいな?」
「4Mで5万、8枚で40万やな」
「ああああのあなあのなぁぁ〜なんで部品が本体並みに高いんや!そらそらそら〜サギとちゃうか!IBM買うたときはそんなもん、いらんかったでぇ!」
「あのねぇ〜マックはメモリー積んでなんぼなんよ♪そこらが分かってきたら一人前よ」
「あぁ〜〜わしにはわからん世界や・・・・」

帰りしのだめ押し
「そや!マック離れて置くんやったら、長いケーブルいるで〜たのんどきや!」
「どうせ一本10万円いうんやろ!」
「そんなにするかいな〜1万円ぐらいや」
「げっ!電線が1本1万円!さなだびっち!(ここで中指を立てる仕草)」

百聞は一見に如かずと、ちゃりことマックを扱う代理店を覗いてみた。林檎のマークが誇らしげだ。ちゃりこが画面を覗いて黄色い声を上げた。
「トースターが飛んでる!」

接客に出てきた営業マンの感じがよかったので、本格的な商談交渉に入ることにした。入社した仕立ての営業マンだが、客あしらいが上手い。やがて、すったもんだのあげく(=値切り倒し拝み倒し)憧れのMacintoshが、貧乏事務所にやってきたのは、それから1ヶ月ちょっと経った頃だった。しかし夢の機械は、すぐさま悪魔の機械に変身したのだ!Windows98のトラブルで泣いている初心者など、まだまだじゃ。真の悪夢というのは3日に2回徹夜する状況が、何ヶ月も続くことを云う…。

「なんでや〜〜わしもういや!」
「こういうことは機械に強いちゃりこ君、君がやりたまえ!」
「・・・・・・・(ここで中指を立てられる)」

「あの〜Hさん」
そんなある日、代理店の営業マンがやって来た。
「ふわぁ〜わしゃ忙しいのよ」
「あの〜やっぱり入門機は年賀状やワープロならいいですけど…本格的なDTPで使うのなら、能力不足でトラブルが出るそうです」
「あのな!君!これでいけるゆうたやんか!」
「大丈夫や思たんですけど・・・。うちは先週、この機種はビジネスでは使わないように顧客にDMを送りました」
「君なぁ〜よくもぬけしゃぁしゃぁと、そういうことを売りつけた相手にゆうか!大体君は素人とちゃうやろ〜前の会社でもコンピュータさわっとったんやろ」
「いえ、Y百貨店に勤めていました」
「げろ!電気売り場かいな?」
「お茶売り場です」
「くっ・・・・・(客あしらいはたしかに上手いわ・・・)」

ということで、あっというまに次期FX機種選定に入らなければいけなくなった〜5年リースの五分の一も終わっていないのに…。こうなったらやけくそじゃ!このようなつまらぬ理由で、減価償却まだまだという入門マックは、メモリーフル装備のハイエンドマック2台とバトンタッチし、それに加え、重量300kg以上燦然と輝くポストスクリプト対応A3フルカラー出力機(価格は中型ベンツ)が新たに主役として、鎮座することになったのである。

そして、この日からダンディでマックな中年は、「元は絶対に取る!」と暗くも熱い想いを心に秘めた戦うマックユーザーに変身したのだ。もちろん戦う相手は世間の敵ではなく、云って聞かせても道理が通じないマックと、重さだけは業界ナンバーワンという弩級出力機である。いよいよ紙面も尽きたようなので、本日はこれにて〜次号へ続く。