沿岸掃除隊

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SOLAS条約

熱烈な波止釣りファンの皆さんなら、このSOLAS条約の発効を知って、がっくり来た人も多いのではないでしょうか。あるいは「なに〜それ〜」という方もいるかも知れません。地域、港湾によって、法の適用あるいは運用に差異があるからです。今日は、これから海釣りをする人ならば避けて通れないSOLAS条約を、かいつまんで説明しましょう。

SOLAS条約とは?

話しは90年以上前にさかのぼります。明治45年4月14日夜半、当時世界最大級の英国籍旅客船タイタニック号が、北大西洋のニューファウンドランド沖を米国への処女航海中、流氷と衝突し浸水により沈没、犠牲者約1500人という海難史上に残る悲劇をおこしました。ここらは映画「タイタニック」でご存じの方も多いと思います。このように多くの犠牲者を出した原因は、船体の構造上の問題以外に、タイタニック号が発した発火信号を他船が理解できなかったことや、当時は無線設備に対する強制がなく、タイタニック号からの遭難信号(世界初のSOS発信でした)が受け取れなかった、あるいは乗員数に見合わない少なすぎた救命艇などが、その原因として上げられています。

この海難事故を契機として、国際条約を取り決める気運が高まり、当時のドイツ皇帝の提唱により、大正3年「海上における人命の安全のための国際会議」が欧米主要海運国13カ国の出席のもとに開催され「1914年の海上における人命の安全のための国際条約」として採択されました。これがいわゆる「SOLAS(ソーラス)条約=海上人命安全条約」です。この条約は、その後も時代に即して改正が図られ、2004年現在146カ国が批准しています。

今回の改正(2004年7月1日発効)は、2001年のアメリカ同時多発テロを契機に、国際テロの阻止を目的として、船舶および港湾施設の設備や保安体制などの強化義務が盛り込まれたものです。世界的に脅威を与えているテロ活動を阻止するために、保安対策を強化するように改正されたのですね。改正の主な趣旨は…

(1)船舶自動識別装置(AIS)の早期導入

(2)船舶識別番号の表示

(3)履歴記録の備え付け

(4)保安計画の策定等

2004年7月1日までに、国際航海に従事する旅客船及び総トン数500トン以上の貨物船並びにこれらの船舶が使用する港湾施設を対象に以下を措置すること。

  1. 船舶内の立入制限区域の設定、船内巡回の実施、部外者の出入りのチェック等を内容とする船舶保安計画の策定及び船舶保安計画に責任を有する保安職員を船舶及び会社のそれぞれに配置すること。
  2. 港湾施設内の立入制限区域の設定、港湾施設への出入りのチェック等を内容とする港湾施設保安計画の策定及び港湾施設保安計画に責任を有する保安職員を配置すること。

(5)警報装置の導入

(6)寄港国による監督措置

※釣り人に関連ある部分は第4項かと思われますので、この項のみ補足説明をつけました。※資料:国土交通省

さてその影響は…

洋上航海できる目安として500トン以上の船舶が対象ですから、漁船のみが停泊するような小さな漁港は、この条約の対象になっていません。ですから、田舎のひなびた波止へ釣りに行く人ならば、関係ないのですが、大都会に住む波止釣りファンはもろに影響を受けます。

というのは、お役所仕事で何事も手が打つのが遅いはずの行政が、ことこの「改正SOLAS条約」につては、対応が早かったからです。500トン以上の船舶が入港できる都会の波止は、さっさと立ち入り禁止フェンスなどの設置が図られており、各地で(2005年上旬ぐらいまで)保安対策関連の工事が推進されています。地理的にも宗教的にも、イスラム過激派とはあまり縁のなさそうな日本国ですが、昨今の近隣国からの密入国、密輸入などへの対応などもあって、便乗的に早い対応が望まれたのかも知れません。

改正SOLAS条約の対象港は全国111港湾にのぼります。当然のことながら、具体的な法の運用は港湾単位で異なるようです。各港の状況(平成16年10月現在)については、以下を参照して下さい。

港湾局管理課港湾保安対策室資料

当初、法令が整備された段階では「いままで通り黙認でしょう♪」と甘い推測が大勢を占めていましたが、実際は厳しく運用されており、すでに逮捕者(釣り人ではありません)が出ています。

これは、この保安対策事業が、いままでのように荷役の邪魔、ゴミ放置、違法駐車などという迷惑レベルではなく、国際的な保安対策という国家事業の性格をもつものだからです。港湾保安対策強化事業費として、半端ではない予算が計上されており、従来よりも強固なフェンス、監視システム、照明設備などの設置、警備員の配置が進んでいます。今後、より締め付けが厳しくなることはあっても、緩くなることは考えられません。

また、お目こぼしも期待できません。不法浸入者があった場合、お上への通告が義務つけられており、これを怠ると関係者への罰金刑があるという厳しさです。たかが釣りなのに…という泣き言は通用しそうにもないのです。

釣りはできなくなるの?

少なくとも立ち入り禁止エリアでは無理です。ボートの進入も禁止されていますので、ボートフィッシングの方も気をつけて下さい。フェンスに穴を開けて入るとか、脚立をかけて入るなどというのは論外で、摘発された場合、いままでのような甘い処置では済まないと思います。ではどうすればいいのでしょうか。ずばり、そんな所でやらなければいいのです。従来からもそういった場所は、そのほとんどが本来立ち入り禁止で、単にお目こぼしをしてもらっていたのに過ぎないのです。

筆者は波止釣りを愛する者ではありますが、忌憚なくいわせていただくと、総体波止釣り愛好家は、他のジャンルの釣り人よりモラルがかなり低いように見受けられます。手軽で金が掛からないというのが、波止釣りの魅力ではありますが、それだけに環境意識、社会モラルの低い人が多いようです。もちろんそれぞれに例外はあります。

「近くだから便利、禁止されてもなんとか行くぞ」などというのは、単なる釣り人のエゴでしかありません。海は広大ですし、日本という国の海岸線の長さは、私たちが思っているより長大です。その気になればいくらでも安全で気持ちよく、しかも釣果の期待できる釣り場はあります。ファミリーならば、休日は混み合いますが、海釣り公園はお勧めです。また本格的な釣りをめざす人ならば、遠征もよし、あるいは目先を変えて、船・筏・磯・渓流など、いくらでも楽しい釣りがあります。

不幸にも、自分のホームグラウンドで釣りが思うようにできなくなった方は、これを機会に、ぜひ新しい釣りをめざして下さい。

2004.10.23