沿岸掃除隊

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キャッチアンドリリースを考える

昨年(2002年)滋賀県が琵琶湖レジャー利用適正化条例を施行し、マスコミに大きく取り上げられたことは、まだ記憶に新しいですね。この条例の是非については、さんざん論議されましたが、いまだ結論は出ていませんし、そう簡単に決着がつく問題とも思われません。しかし、釣り人としてこの問題を避けて通るわけにはいきません。不肖笑魚もこの問題には関心がありますので、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

そもそもキャッチ&リリースって何だろう

訳せば「捕獲したら放流」ということですね。そもそも英語で書かれていることからして、外国の文化、習慣です。意訳すれば「遊漁は自然保護・資源保全の精神にのっとり、釣った魚は即放流すべし」ということでしょう。私が釣りを覚えた頃には、まだ「キャッチ&リリース」という言葉はなかったように思いますので、この言葉はバス釣りを中心とするルアーフィッシングの隆盛と共に、輸入されたのでしょう。私自身キャッチ&リリースを肯定もしませんが、否定もしません。自分の都合次第です(汗) 日本人はジャコまで食べる魚大好き民族ですから「キャッチ&リリース」といわれると、辛いものがあります。

話題はそれますが、欧米人は本来四つ足を食べる狩猟民族ですから、狩猟を続けようとすれば自然保護・資源保全は必然になります。ところが日本人は農耕民族です。農耕民族は自然を征服してこそ、生きるすべになります。かくも簡単に分けられるものではありませんが、DNAレベルで自然に対する接し方が違うのではないでしょうか。欧米人にはその食生活に加え、資源保護という建前からも「キャッチ&リリース」という文化を、体質的に受け入れやすかったと思います。ところが大方の日本人は、釣った獲物をトロフィーにして飾ることよりも、胃袋に入れたがります。「やはり釣りたてが一番!」当サイトの掲示板を見ても明らかですね(笑) バスという魚が、もし寿司屋の上ネタになるような美味な魚だったら、いま頃琵琶湖のバスは間違いなく取り尽くされていたはずです(爆)

所詮、自分の都合にほかならない

タレントのS氏が「私は条例に従えない!断固反対」と徹底抗戦の構えで訴訟沙汰にまでなりました。「キャッチ&リリースは世界の流れ!放流してこそ自然は守れる」というような趣旨でした。気持ちは分からないでもありませんが、そのS氏が自ら司会を務める海の釣り番組では、リリースなどしていませんし、30cmに満たないグレでもきっちりキープしています。内水面と海とは違うという言い訳があるのでしょうが、そんなことはありません。昔は豊かだった海が乱獲で、どこでも釣れない海になっています。メバルやグレは磯魚ですので、釣り荒れると再生産が間に合わなくなるのです。

釣り人は都合よくこういう事実に目をつむりがちです。あるいは見えない振りをするというのか。ルアーは放流、餌釣りはキープというのも変な常識です。魚から見たら違いはありませんし、魚を傷つけるという点だけで見たら、ルアーに罪があるでしょう。また食えない魚不味い魚はリリースするというのは、海でも同じことで、ボラをキープする人は少ないと思います。資源保護が目的のリリースではありません。バス釣りの人にバスをキープしろといったら、後の処理に困るでしょう。最近の女性は魚が捌けませんからね。キャッチ&リリースが、日本のバス釣りに定着していった要因は、こういった食文化の変化も要因の一つにあるのではないでしょうか。 

バスばかり槍玉に挙がるが…

NHKがバスの生態を科学的に取材した特集番組を見て、あっというまにバス以外の魚が駆逐される理由がよく分かりました。バスという魚は日本というフィールドでは、まさに天敵がいないのですね。生態系は確かに破壊されるようです。バスアングラーは水際の乱開発が在来種の衰退を生んでいる、バスとの因果関係が分かったわけではないなどと云っていますが、田舎の溜め池にバスを放した途端、バスだらけになるというのは皆さん承知の事実です。乱開発がいいわけではありませが、問題をすり替えたちょっと苦しい言い訳に聞こえるのは否めません。

食糧事情がよくなかった昔、内水面(川や湖)で食料になる魚を増やすことは、大事な国策でした。例えば、ヘラブナは元々自然界にいなかった魚を、人間が食べられるサイズになるようフナを改良して作った魚です。そういう魚や、世界中からマス科の魚などを輸入して、日本の内水面に放流していったのです。バスもその一つで、75年も昔に輸入されたと聞きます。あのブルーギルも「美味しい♪」と昭和天皇が仰ったのをきっかけに、琵琶湖に放流されたという挿話があります。

バスは頑丈で水質の悪化に耐え、淡水魚としては比較的美味かつ大型に育ち、しかも繁殖力に優れるいう、食用魚としての資格を十二分に兼ね備えたスーパー魚です。そういった点に注目され、今では世界中の内水面に放流されています。この魚を日本に紹介した赤星鉄馬氏の思惑通り?バスは大繁殖しました。台湾では養殖も盛んで、悪魚扱いされている日本とはずいぶん違うようです。しかしながら、日本の食糧事情は75年前とは大きく変わりました。内水面の魚は一部の職漁師を除いて、食べる対象からゲームの対象になりました。しかし、ここでもバスはスターになりました。バスは釣っても面白い魚だったのです。食べないからリリースします。日本流キャッチ&リリースの誕生です。※ところでヘラブナが増えても誰も文句を云わないなぁ。自然種じゃないのにね。また琵琶湖産の鮎をネイティブでないあちこちの川に放流している現実もある(^m^)

頭が下がる…

トラウトのサイトを拝見すると、大型のサクラマスやサツキマスを優しく抱えて放流している写真を見ます。私自身は田舎から時折送ってくるサツキマスを毎年楽しみにしている環境破壊側の人間ですから、少し恥ずかしくなります。もちろん良型を釣り上げることができれば「ふふふ♪」とばかり、その日のうちに喰ってしまうでしょう。罪深い釣り人の業です(汗)

このような人達の姿を見ると、環境保全がどうたらというより、自然への深い慈しみ、生き物への愛を感じます。彼らならば必要以上に魚を捕ったり、楽しみだけで生き物を殺し続けることはないでしょう。キャッチ&リリースというのは、自然を守ろう、生き物を愛そうというのが根本の理念だというのが、よくわかります。これだけを考えているのならば、全ての釣り人は平和です。しかしながら…

バス問題は頭が痛い

琵琶湖の再放流禁止に代表されるバス問題はとてもイレギュラーです。

  1. 本来バスを輸入したのは当時の食糧事情が要因であった。
  2. 魚屋が喜ぶ魚ではないから、漁業的な価値は低い。
  3. 魚を食べない人達が増えているので、当然キープしない=リリースとなる。
  4. ますます悪循環でバスが増え、在来種が減る。

つまりサクラマスをリリースするシチュエーションと、バスをリリースするシチュエーションには大きな違いがあるということです。これを混同すると訳が分からなくなります。

  1. バスの場合、リリースをするほど、在来種への脅威につながるのは事実。
  2. しかし罪のないバスを殺すのもいやだし、持って帰っても食べない。第一カーゴまで持っていくのが面倒じゃ!どうしろ〜というのじゃい!

条例施行後も、琵琶湖での釣り人のリリースには殆ど変化がないようです。つまり釣っても依然として放していると云うことです。罰則のない条例など、殆ど意味はありませんし、そもそも海水魚のようにキープが前提という習慣が、バスアングラーにはありません。釣り人には立ち入り禁止の柵を越え、金網を破ってでも釣りをしたいという人間が多いのですから、あのような条例に拘束力としての意味はありません。各方面からの突き上げに「行政として何かせんと不味いな〜」という程度の下達と解釈しておきましょう。つまり効果がないと云うことを、始めから分かっていて施行した条例といわざるを得ません。

答えは出ませんが…

お魚大好き人間の日本人にとって、放流問題は難しい問題です。「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるように、大方の釣り人は、食べられないような小さな魚や必要以上釣った魚はリリースしていると思います。この問題は行き着く所個人のモラルにかかっています。節度ある態度で海や川に接するというのが一番でしょう。私はバス釣りをやりませんので、バス放流に対する良否のコメントは避けたいと思います。しかし一社会人として考えた場合、琵琶湖特有のモロコやハス、鮎が減っていくというのは、とても悲しい現実です。バスはもちろん、水辺環境の復元、水質復元など、課題は山積みでしょう。関係各位のさらなる努力をお願いいたします。

私の子供時分、空き地といえば外来種のセイタカアワダチソウが必ず茂っていたものです。しかし昨今ではずいぶん減ってきています。大いなる自然のバランスが働き、環境と折り合いをつけたのでしょう。ブラックバスもそうなりますように。

琵琶湖の美しい写真は「フリー写真素材かもめ工房」さんより