沿岸掃除隊

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都市河川と鯉

今日配信されてきた釣りのメルマガに目を通していると、興味深い記事がありました。筆者はフライで鯉を釣るというユニークなアングラー藤田克昌さんです。淡水マニアならば、実地と検証を重ねたその独創的な釣り理論を、耳にした方も多いかと思われます。その藤田さんが、今日的な鯉の生態を通じて、現代の都市河川のあり方に一石を投じられています。海も汚染による富養化現象で生態が変わりつつあることは、長く釣りをしてきた方なら体感されているはず。川と海の違いはありこそすれ、根底にある愁うべき問題は共通です。是非、記事を紹介したいとお願いしたところ、快諾していただきました。以下原文のまま。

今回のテーマは[都市河川と鯉]です。先日、市民団体の主催で「どうする?放流魚と多摩川らしさ」と言うテーマでシンポジュームが開かれました。テーマは[1〜3月に行われたニジマス試験放流と鯉の数について]

ニジマスの放流に関しては色々な意見があり、問題は次回以降に持ち越されました(次回が開催されればの話ですが)。同時にテーマになっていた[鯉の数]については時間が無くほとんど話になりませんでした。

[都会のコイはフライで釣れ]と言っている立場上、非常に興味があったのですが、肩すかしを食らった感じでした。話題にすらならなかったのですが、一応私の考えを発表しました。反応は「貴重なご意見をありがとうございました」でした(笑)

その一部を紹介します。

本当に鯉が異常に多いのか?
市民の声で[鯉が多い]と言うのですが、本当にそうですか?鯉は産卵で浅瀬に集まります。当然各支流にも入り込みます。そして産卵後には元の流れに戻るのですが、支流に入り込んだ鯉は近所の市民から餌を貰います。大量のパンなどの餌が橋の上から投げ込まれる環境から、元の厳しい流れに戻る鯉はいません!当然鯉の数は増えます。しかも一箇所に集まり、翌年も同じように鯉が下流から集まってくる。この環境を見て「鯉が異常に多い!」と言われてもそれは餌を与えている人がいるからです。餌がなければ鯉は元の流れに引き返しますよ。自然の鯉はペットじゃない!

自然の川ではこれほど多くない?
[自然の川]ってどんな川のことでしょうか?水が綺麗で釣った魚が食べられる川のことなら、確かに鯉の数は少ないですよ。だって鯉は昔から貴重な食料なんだから。ところが最近の都市河川では、釣り上げた鯉を持ち帰る人はいません。天敵の猛禽類もほとんどいない環境では鯉の数は減りません。しかも鯉の餌は水質の悪化で大量発生しているユスリカと家庭排水から流れ込む有機物。溢れる餌でどんどん大型化していくのです。鯉が多いのは都市河川の自然の姿なんです。鯉くらいしか安定して棲息できないのですよ。都市河川と田舎の川を混同しないでください。

大量の放流が行われている
確かに漁協では毎年、鯉を含む多くの魚種を放流しています。それは川がまだ綺麗な時代から現在まで続いています。しかも以前に行っていた稚魚放流を止め成魚放流に変わってきました。川鵜の食害で稚魚が育たないからだそうです。大量に放流され、減ることの少なくなった鯉がたくさん育っている。その通りだと思います。放流は漁業権を持つ漁協の義務なんですが、市民による無作為の放流も後を絶たないそうで、漁協ではその数を把握できないそうです。鯉の放流量が適正かどうかは検討の余地はあると思います。

鯉は小魚を食べる?
「鯉を飼育している水槽にメダカを入れたら10分で食べられてしまった」と言う人がいました。だから鯉の数を減らさないと他の小魚が食べられてしまう、と言うのです。逃げ場のない水槽でメダカが食べられるのは当然です。それを広い川と一緒にしないで欲しい。メダカだって逃げ場があればむざむざ食べられたりしないですし、住んでいる場所が違います。自然では[棲み分け]があります。また、鯉は小魚の卵も食べる。と言うのです。鯉の餌場と小魚の産卵場所は違います。逆に鯉の産卵場は小魚の餌場なんです。食物連鎖と魚の生態をよく考えて間違った認識で判断して欲しくない。

鯉の数を減らしたら・・
鯉の間引いて数を減らしたらどうなると思います?都市河川の鯉が何を食べているかと言う学術的な調査は全くありませんが、川底に頭を突っ込んで食べているのは明らかにユスリカの幼虫[アカムシ]です。それしかいないのですから、都市河川には。しかもユスリカは一年中発生しています。鯉の数が急に減ったら食物連鎖が崩れます。その結果、今まで鯉に食べられていたユスリカが大量発生する可能性があります。また、川底に堆積したり流れている家庭排水からの有機物も鯉の餌です。これらを処理する鯉が少なくなったらどうなりますか?

現在の都市河川を昔の姿に戻したいのなら、鯉の数がどうのこうのと言う前にもっと考えなくてはいけない事がたくさんあります。

  1. 大量の取水により極端に少なくなった水量
  2. その為の流れの変化(多様性)の喪失
  3. 降雨時の異常増水と河川の排水路化
  4. 市街地の雨水対策
  5. 各支流の2面護岸による排水路化
  6. 堰堤による砂利の流下防止
  7. 見た目では透明度が良くなっているけれど問題の多い水質

多くの問題を含んでいる都市河川を昔の様な川に復活させるには、現代の社会構造まで変えないといけないことになりそうです。鯉の数についてとやかく言う前に都市河川のこれからの在り方を、いろんなジャンルの人達で検討しないといけないと思います。鯉には何の責任もないのですよ。(原文ここまで)

筆者の感想・・・・
関西にもm級の大鯉を追いかける釣り人達が結構いるのですが、以前彼ら達を取材した写真を見て驚きました。なんとボウフラ以外生物が棲めそうにもないあのドブ川道頓堀に、でかい鯉がうじゃうじゃいるそうです。現にその日の取材でも、優に70cm以上ある鯉を釣り上げた釣り人がいました。「どういうことなんじゃ〜」と思っていましたが、その大きな原因は都市化にあったのですね。淡水浄化に鯉がいいというような報道もありますが、果たして喜んでいい現象なのでしょうか。海でも汚染に強いチヌやスズキが増え、綺麗な水質を好むキスやカレイがどんどん減っています。やはり悲しむべき現象です。釣りに限らず、すべてにおいて歯止めをかけなければいけない時代が、もう身近に来ています。

04.25.2002/笑魚

藤田 克昌さんのホームページ